30年待たされた異世界転移

明之 想

文字の大きさ
646 / 1,640
第7章 南部編

籠城 1


<イリアル視点>



「「「おお!」」」

「「「凄え!」」」

 周りから上がる歓声。
 よくあることだが、まあ。
 悪くねえな。

「イリアル殿は凄いですな。ここまでの魔法の使い手は宮廷にもそうはおりませんから」

「たまたま上手くいっただけですよ」

「御謙遜を」

「うむ、謙遜も過ぎると嫌味になる」

「トゥオヴィ様……」

 いやいや、あまり煽らないでくれ。
 また仕事が増えちまうじゃねえか。

 まっ、ちょっと調子に乗り過ぎた俺も悪いんだけどな。

「この魔法に、ワディン側も慌てていますぞ」

「……」

 トゥレイズ攻城戦が始まって3日。
 予想通りトゥレイズ城塞の守りは固く、まだ城内に侵入することができていない。

 こっちは魔法と破城具を使って城門と城壁の破壊を試してんだが、魔法で強化されたそれは簡単に破壊することができねえんだよな。

 ってことで、今も開戦当初から状況はほとんど変わらないまま。
 魔法と弓矢が戦場を乱れ飛んでいるだけ。

 そんな中、選抜された王軍魔法兵が城壁の上にいる敵さんの狙い撃ちを始めたってわけだ。

 敵の攻撃圏から離れての魔法狙撃。
 これがなかなか効果的なんだよ。

 もちろん敵も狙撃を仕掛けてくる。
 けど、質も量もこっちが上だからな。

「200歩の距離から、このように正確な魔法射撃ができるのですから。慌てるのも当然ですなぁ」

 弓の平均射程距離は100歩から150歩ほど。
 で、魔法の射程距離は50歩から100歩程度。

 ただし、魔法は使い手の腕によって全くの別物になっちまう。
 俺みたいに200歩以上の射程距離を誇る使い手もいる。
 まあ、数は少ねえけど。

 ああ、強弓、長弓の使い手なら、200歩の距離でも矢を届かせることができるか。
 といっても、ギリギリ届くだけで、命中率は低いし威力もそれなり。警戒さえ怠らなければ新兵でも対処可能ってもんだ。

 敵さんもそれを承知して、矢の無駄使いはしてこねえ。


「素晴らしいことですよ」

「うむ、イリアルの攻撃魔法の距離と精度は普通じゃないからな」

 だから、トゥオヴィ。
 煽るのはやめてくれって。

 こっちは、あまり目立ちたくねえんだ。
 下手をうって例のバケモンと遭遇した日にゃあ、エライことになっちまう。

 っとに、あいつとは戦いたくねえぞ。
 観察だけで十分だ。

 今は直接観察なんてできねえけどな。


「イリアルに任せておけば問題はないはずだ」

「そうですなぁ」

「……」

「では、そろそろ移動しましょうか。次は東の城壁に」

 ほら、こうなるだろ。




********************

<ディアナ視点>



「撃てぇ!」

「「「「ファイヤーボール!」」」」
「「「「ファイヤーアロー!」」」」
「「「「ストーンボール!」」」」
「「「「ウインドアロー!」」」」

 号令一下。
 魔法が城壁の上から放たれる。

「次は弓隊だ。ってぇ!!」

 今度は無数の矢が王軍に降りかかる。

「弓隊後退、次っ!」

 こうして城壁に近づいて来る王軍に飛び道具で攻撃を仕掛け続けている。
 が、開戦当初ほどの成果をあげることができなくなってきた。

 当然だな。
 3日も戦闘が続けば、敵も有効な対策を立ててくるというもの。

 そうは言っても、まだまだ戦局はこちらに傾いたまま。
 まったく悪い状況ではない。
 狙い通り、戦況は膠着状態に陥っているのだから。

感想 11

あなたにおすすめの小説

ひだまりのFランク冒険者

みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。 そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。 そんな中 冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。 その名は、リルド。 彼は、特に何もない感じに毎日 「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。 この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。 その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。 競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。 俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。 その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。 意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。 相変わらずの豪華客船の中だった。 しかし、そこは地球では無かった。 魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。 船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。 ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ…… 果たして、地球と東の運命はどうなるの?

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

[完]異世界銭湯

三園 七詩
ファンタジー
下町で昔ながらの薪で沸かす銭湯を経営する一家が住んでいた。 しかし近くにスーパー銭湯が出来てから客足が激減…このままでは店を畳むしかない、そう思っていた。 暗い気持ちで目覚め、いつもの習慣のように準備をしようと外に出ると…そこは見慣れた下町ではなく見たことも無い場所に銭湯は建っていた…

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)