30年待たされた異世界転移

明之 想

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第8章 南部動乱編

異形 3

「あっ、また決まりましたよ!」

「……」

「武上君の投擲も凄いです!」

 異形との戦いを見つめるセレス様の頬が紅潮している。

「おふたりとも、素晴らしい戦いぶりですね」

「……ええ」

「古野白さんの炎弾は、あちらのファイヤーボール以上かもしれません」

 異能の操炎と異世界の火魔法。
 威力、速度、精度などに違いがあるので単純な比較はできないが、古野白さんの炎の操作性はかなりのものがある。
 並の火魔法使いじゃ太刀打ちできないはず。
 ただ、威力という点では火魔法が上だろうな。

「でも、やっぱり、連係が一番素晴らしいです」

 まったく、同感だよ。

「ワディンの皆にも学んでもらいたいくらい」

「ワディン騎士の腕もかなりのものですよ」

「それでも、古野白さんと武上君の連係には敵いませんから」

 いや。
 そうでもない。

「騎士たちも決して負けてません。最近の彼らの連係攻撃には目を見張るものがありますので」

「えっ! そうなんですか?」

「はい」

「あれから経験を積んだから? それとも、コーキさんのおかげ?」

「……」

「コーキさんが指導してくださったんですね!」

「まあ、少しですが」

「ありがとうございます!」

「いえ……」

「ほんと、コーキさんのおかげで私も安心できます」

「……」

「幸奈さんも心強いでしょうね」

「……」

「トゥレイズの民も、それにお父様も」

 っ!

「腕を上げたワディン騎士にコーキさんがついているんですから、怖いものなしです」

 それは……。

「皆に会うのが楽しみになってきました」

「……」

 申し訳ない。
 本当に……。



「あっ、誰かきましたよ!」

 セレス様の声に、顔を上げると。

「遅いぜ、鷹郷さん」

「待たせたな」

 現場には鷹郷さんと2人の男性。
 異能を使える部下みたいだ。

「で、状況は……既に虫の息か」

「もういつでも倒せる状態です」

「ああ、よくやった」

「どうします? このまま倒し切りますか?」

「いや、基本パターンで進めよう」

「分かりました」

「では、陥穽からだ。頼むぞ」

「了解」

 鷹郷さんの指示を受けた部下が一歩前に。

「プリズン!」

 異能を発現した。





「セレス様、先程はすみませんでした」

 異形を退治した鷹郷さん、古野白さん、武上の現場処理に立ち合い。
 その後も少なくない時間を共に過ごしたあと、今はセレス様とふたり。
 和見家に向かって歩いている。

「コーキさんが謝る必要なんてないです」

「……」

「私も古野白さんたちが心配でしたから」

 セレス様の思いが何であれ、異形討伐の現場に付き合わせたのは俺だ。
 少しであっても危険にさらしたという事実は変わらない。

「それに……私の方こそ、ごめんなさい」

 うん?

「古野白さんたちの前で、コーキさんと呼んでしまって」

 ああ、その件か。

「いえ、私の対応もまずかったので」

「違います。私の注意不足です。病室で十分話していたのに、つい……」

 確かに、今回のようなケースについては何度も話しあった。
 まさに想定通りの状況だった。
 とはいえ、本番で上手く対応できないなんてよくあること。
 もちろん、俺も同じ。

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