30年待たされた異世界転移

明之 想

文字の大きさ
702 / 1,640
第8章 南部動乱編

会議は続く

 今後のワディンの方針。
 俺なら、どう考えるか?

「……」

 もちろん、何が最善なのかは分かるわけもない。
 この特殊な状況下において、単純な答えなど存在しないのだから。

 ただ、そうなると。

「先生?」

「……どの選択にも利点と難点がある。何を重視するかで決めるしかないだろう」

「そこが難しいんじゃねえか」

「ああ、厄介なところだな。で、ヴァーンの考えは?」

「俺は……一度オルドウに戻りてえな。何と言っても、オルドウは俺たちの街だからよ」

 シアとアルも頷いている。
 オルドウに思い入れのある3人だ。
 そう考えるのも当然のことかもしれない。

「ディアナ、ユーフィリア、おめえらはどう思う?」

「私はセレスティーヌ様に従うのみ。考えるまでもないな」

「私も」

「まっ、最終的にはそうなるだろうが、今は個人の意見を聞いてんだぜ」

「護衛騎士に個人の意見など必要ない」

「そうかよ」

「ああ、冒険者とは違うのだ」

「けっ」

 内容は違えど、このようなやり取りが室内のいたる所から聞こえてくる。
 休憩中だというのに。

「……」

「……」

 とにかく、今はまだ決め手に欠けている状況。
 すぐに結論が出るようにも見えない。
 とはいえ、いつまでもここで話している時間もないんだ。
 エンノアを出るなら早い方が良いのだから。

 と、そこに。

「皆さん、お話し中に申し訳ないのですが食事の用意ができましたので、こちらにお越しください」

 エンノアの民が俺たちを迎えに来てくれた。

「今後については、食事の後に話しましょう。もちろん、我々エンノアも参加いたします」

「スぺリス殿?」

「どうか、お気になさらず」

「……」

「一度受け入れた以上、我らは皆さんのことを同胞と考えておりますから」





「ということで、我らエンノアは全面的に皆さんを支援いたします。レザンジュ王軍がやって来ようとも問題はありません」

 広間で話しているのはスぺリスさん。
 彼がエンノアの代表として発言を続けている。

「この地下にいれば彼らとて、我らを見つけることは容易ではないはず」

「「「「「「「……」」」」」」」
「「「「「「「……」」」」」」」


 食事の後。
 ワディンの騎士とエンノアの民が一堂に会し、話し合いを始めたところ。
 途中からはエンノアの独壇場となり。

「オルドウや他の都市より、よっぽど安全でしょう」

「「「「「「「……」」」」」」」
「「「「「「「……」」」」」」」

「エンノアに残る以上の考えがあれば話も違ってきますが、現状は他の選択肢はないと愚考します」

 エンノアによる協力とこの地に留まることの利点、去ることの難点を理路整然と主張し続ける彼らに、ワディンは反論することもできないままになっている。

 それならば俺からと、いくつかの発言をし、エンノアを巻き込みたくないという趣旨の主張もしたのだが、彼らはそんなこと全く意にも介さず。

「エンノアはコーキ殿から受けた恩を忘れていません。コーキさんの問題ならば、喜んで巻き込まれますよ」

 こう強く言い切られてしまった。
 さらには、フォルディさんや他の皆も同じようなことを口々に。

 そこまで言われると俺も……。

 いや、本当にありがたいことなんだ。
 ただ、どうしても申し訳ない気持ちが拭い切れないだけで。



「それでは、ワディンの皆様。この地に留まるということでよろしいでしょうか? よろしければ、ここからは対レザンジュについて話を進めていきたいと思いますが?」

「「「「セレスティーヌ様?」」」」

「……」

「「「「セレス様}」」」」

「……隊長、ワディンの皆さん」

「「「「「「「……」」」」」」」
「「「「「「「……」」」」」」」
「「「「「「「……」」」」」」」

「エンノアの方々がここまで言ってくれているのです」


感想 11

あなたにおすすめの小説

ひだまりのFランク冒険者

みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。 そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。 そんな中 冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。 その名は、リルド。 彼は、特に何もない感じに毎日 「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。 この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

[完]異世界銭湯

三園 七詩
ファンタジー
下町で昔ながらの薪で沸かす銭湯を経営する一家が住んでいた。 しかし近くにスーパー銭湯が出来てから客足が激減…このままでは店を畳むしかない、そう思っていた。 暗い気持ちで目覚め、いつもの習慣のように準備をしようと外に出ると…そこは見慣れた下町ではなく見たことも無い場所に銭湯は建っていた…

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達より強いジョブを手に入れて無双する!

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚。 ネット小説やファンタジー小説が好きな少年、洲河 慱(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りに雑談をしていると突然魔法陣が現れて光に包まれて… 幼馴染達と一緒に救世主召喚でテルシア王国に召喚され、幼馴染達は【勇者】【賢者】【剣聖】【聖女】という素晴らしいジョブを手に入れたけど、僕はそれ以上のジョブと多彩なスキルを手に入れた。 王宮からは、過去の勇者パーティと同じジョブを持つ幼馴染達が世界を救うのが掟と言われた。 なら僕は、夢にまで見たこの異世界で好きに生きる事を選び、幼馴染達とは別に行動する事に決めた。 自分のジョブとスキルを駆使して無双する、魔物と魔法が存在する異世界ファンタジー。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つ物なのかな?」で、慱が本来の力を手に入れた場合のもう1つのパラレルストーリー。 11月14日にHOT男性向け1位になりました。 応援、ありがとうございます!