30年待たされた異世界転移

明之 想

文字の大きさ
709 / 1,640
第8章 南部動乱編

懸念 2

 いや、王軍の侵入など許せるわけもない。
 何をおいても、それだけは避けなければならない。
 というわけで、遊撃戦の早期敢行が決定したんだ。


「しかし、ほんと不気味だぜ。あいつら、どこまで掴んでると思うよ?」

「こっちの動向を知っているようでもあり、知らないようでもあるな」

「穴掘りなんてぇのは、地下の存在を知らなきゃやんねえぞ」

「……」

「バレてる可能性が高い、そう思った方がいいんじゃねえか?」

 王軍が俺たちの動きを掴んでいる可能性。地下都市を認識している可能性。
 ヴァーンの言う通り、低いとは思えない。
 なのに。

「奇襲については、まったく対策がされていなかった」

 動きを掴んでいるなら、奇襲への対策をするはず。
 少なくとも対策の兆候は見られるだろう。
 そう踏んで警戒していたというのに、蓋を開けてみれば呆気ないものだった。

「ああ、微塵もなかったな。警戒してたこっちが馬鹿みたいだったぜ」

「つまり」

「何らかの情報は入手してるが、動きを完全に掴んでるわけじゃねえ。裏切り者も……いねえかもな」

「……」

 内通者の存在。
 最も恐れていたこの危険が消えた、のか。

「裏切り者がいねえなら、どうして地下を知ってるんだって話になるけどよ」

「エンノアの存在を知っている者が王軍にいる」

 地下都市の存在を知っていて、奇襲作戦を知らない。
 とすると、内通者が存在するのではなく、単にエンノアを知る者がいるだけ。

「おそらくは、そういうことだ」

「まっ、それしかねえわな」

 あくまでも可能性に過ぎないが。
 なぜだか、これが正解だと今は思えてしまう。

「何にしろ、裏切り者がいねえってのはありがてえことだぜ」

 ああ、同感だ。




********************

<和見幸奈視点(姿はセレスティーヌ)>



 3度目の遊撃戦から戻ってきた騎士の皆さん。
 その姿は、表情は……。

 よかったぁ。
 これまで同様、ひとりも欠くことのない無事な帰還に安堵の息が漏れてしまう。

「セレスティーヌ様、大勝利にございます」

 エンノアの家屋のすぐ近くに位置する広場の中央。
 そこに集まったわたしたちとエンノアの皆さんに勝利を伝えてくれるのはルボルグ隊長。

「今回はどのような?」

「まずは王軍の背後に出まして、それから……」

 勝利に沸くワディンの騎士の中、ルボルグ隊長が落ち着いた口調で戦果を報告してくれた。



「この勝利、騎士の皆様とエンノアの皆様、そしてローディン様、トトメリウス様に感謝いたします」

「「「「「「トトメリウス様に感謝を!」」」」」」
「「「「「「感謝を!」」」」」」

 わたしの言葉に、エンノアの皆さんが唱和するように感謝を口にする。

「ありがたきお言葉」

 そう言って深く頭を下げるルボルグ隊長。
 後ろに控えるワディン騎士たちも倣うように頭を下げたままだ。

「頭を上げてください。この勝利は皆さんのお力なのですよ。危険を顧みず、頑張ってくださった皆さんのおかげですから」

「「「「「「はっ」」」」」」
「「「「「「……」」」」」」

「まずは、ゆっくりと身体を休めてくださいね」

「「「「「「ありがとうございます」」」」」」

「……」

感想 11

あなたにおすすめの小説

ひだまりのFランク冒険者

みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。 そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。 そんな中 冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。 その名は、リルド。 彼は、特に何もない感じに毎日 「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。 この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。 その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。 競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。 俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。 その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。 意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。 相変わらずの豪華客船の中だった。 しかし、そこは地球では無かった。 魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。 船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。 ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ…… 果たして、地球と東の運命はどうなるの?

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。