30年待たされた異世界転移

明之 想

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第9章 推理編

和見屋敷 1

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 幸奈や武志、古野白さんだけじゃない。
 誰の気配も感じられないんだ。
 和見家の両親も壬生家の手の者も、人の気配なんてひとつも。

 古野白さんの話を聞き和見家に駆けつけるまでに要した時間は大したものじゃない。この短い時間で関係者すべてが消えてしまったというのか?

「……」

 武志は幸奈を守るために壬生家の異能者と戦っていた。
 古野白さんたちも到着済のはず。

 それなのに、消えて……?

 いや、もう一度。
 もう一度確認だ。

 精度を上げた感知を発動、展開。

 1階……。
 2階……。
 屋敷周辺……。

 いない。
 やはり何の気配も感じられない。

「……」

 連れ去られたと?
 幸奈と武志が壬生家によって?
 だとしたら、古野白さんたちは?

 そうだ。
 電話だ。
 それで現状を把握できるかもしれない。

 電話は?
 公衆電話はこの近くに……?

 いや、必要ないな。

 今は緊急時。
 和見家の電話を使わせてもらうぞ。

 開け放たれた門扉をくぐり、玄関から邸宅内へ侵入。
 すると。

「!?」

 これは?
 玄関に入った途端、肌に感じる違和感。
 軽く痺れるようなこの奇妙な感覚は何だ?

 気のせいじゃないぞ。
 微かだが、確かに感じる。

「……」

 何が原因なのか?
 まったく分からない。

 ただ、今はそれより電話を。

 邸宅内で見つけ出した電話に手を伸ばし、すぐに古野白さんに発信。
 するも……繋がらない。
 何度かけても、古野白さんの電話に繋がることなく切れてしまう。

 どうしてなんだ?
 この状況で古野白さんが電源を切ってるなんてことあり得るのか?

「……」

 可能性としては、戦闘の妨げになるから?
 それとも、和見の屋敷を離れ電波の届かない場所にいる?

 いや、待てよ。

 電波を遮る空間を壬生家が作り出している可能性もあるぞ。
 研究所が異能無効化の道具を開発しているんだ。
 決して不可能なことじゃない。

 もし、電波も気配も遮断することができるなら。
 皆がここにいる可能性も?

「……」

 あれこれ考えるより確認が先。
 この邸宅内を探ればいい。

 まずは、1階の各部屋からだ。

 広い和見家の屋敷の中を、リビング、応接室、和室と急ぎながらも慎重に足を進める。感知も発動し、目と耳と感知で探索を続けていく……。

「……」

「……」

 見当たらない。
 誰の姿も。

 ただ、あの奇妙な感覚だけが肌を刺激してくる。
 まだまだ微かなものではあるが、さっきよりはっきりと感じられる。

 剥き出しの肌を撫でられるような、ザラッとした質感。
 気持ちが悪い。

「……」

 避けることのできない不快感が抑えていた焦燥を掻き立て、心臓が騒ぎだす。
 過去の惨劇が頭に浮かんでくる。今回の件とは関係ないのに……。

 それでも、探索を続けるべく2階へ。

「……」

 当然のことながら、人の気配は微塵も感じられない。

 1階とは異なり、多くの部屋が並んでいる2階廊下。
 この中のどこかに、気配を遮断された空間があるのか?
 異能者たちが潜んでいるのか?

「……」

 いつ戦闘が始まるか分からない。
 常にその可能性を頭に入れて用心深く探索を……。




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