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第10章 位相編
猶予
「ちょっと、武上君、勝手に決めないで!」
「約束なんだ、仕方ねえだろ」
「そんな約束、誰も許可してないでしょ」
「約束は約束だ。それに、カード持ってる奴を無視なんてできねえだろうがよ」
「確かに」
「里村君!」
「うーん、別にいいんじゃないかなぁ。ちょっと怪しいけど、大きな問題はなさそうだし。あっ、大志君は怒られるかもだけど」
「……」
「……」
「大志君、楓季ちゃん、それに有馬さんと……その可愛い妹さんかな? 今から鷹郷さんに会いに行こうよ?」
「わたし、妹じゃないです!」
俺の傍らでずっと口を閉ざしていた幸奈が、大声で強く否定を。
「へえ~。なら、有馬さんの何なの?」
「……子供の頃からの知り合い、のような」
「幼馴染?」
「……はい」
「それだけ?」
「……」
「そっかぁ、幼馴染かぁ」
里村少年が、にやにや顔でこちらに視線を送ってくる。
「幼馴染っていいですよねぇ、有馬さん」
「……」
違う。
俺の知る里村はこんなやつじゃない。
やっぱり、位相世界の別人だ。
「くだらねえ話してねえで、さっさと行くぞ」
里村の話を断ち切ったのは武上少年。
もう出口に向かって歩き出している。
「ちょっと、大志君!」
と、そこに。
プルルルル……。
電子音が響いてきた。
電話の着信音か?
「えっ?」
「楓季ちゃん?」
「……鷹郷さんからだわ」
古野白さんが手に持っているのは携帯電話じゃない。
ポケベル?
5年後に俺が借りることになる、あのポケベルだ。
「いいタイミングだぜ」
「……ちょっと待っててくれる。電話してくるから」
「おう、早くしろよ」
武上少年の返事を聞く前に既に駆け出していた古野白さんが扉から姿を消してしまった。残された俺たち4人は……。
「あ~、模擬戦でもして待ってるか?」
「……」
武上なら、そう言うと思ったよ。
「大志君、もういいでしょ。何度やっても勝てないって」
「勝てる! 何度かやれば絶対勝てる!」
「無理、無理。モニターで見れば、動きの違いは明らかだったから」
「はあ? オレの惜敗だったんだろ?」
「……」
「それにな、モニターじゃ分かんねえ事もあんだぞ」
「モニターで分かんなきゃ、何で分かるのさ?」
「感覚だ」
「もう~、そんな非科学的な根性論は研究所には不要だって」
「非科学的でも何でもいい。感覚が勝てるつってんだからよぉ」
「……」
「里村の言った惜敗は正解ってこった」
ほんと、武上は変わらないな。
里村とは大違いだ。
「はあ~、大志君には勝てないよ」
「今さら何言ってやがる」
しかし、その別人の里村のおかげで、ここが単なる過去じゃないと気づけた。
位相世界だと認識できた。
そう、位相世界だ。
「……」
元の世界とこの世界の関係がどうなっているのか?
想像もつかない。
当然、時間関係など分かるわけもない。
ただ、分からないなりに考えるなら、俺に与えられた猶予は……。
やはり24時間。
吾妻が回復するまでの24時間と考えた方がいいだろう。
24時間という短時間で、元の世界に戻る。
時間的な余裕はほとんどない。
ただし利点もある。
過去世界じゃないここでは、タイムパラドックスを心配する必要がないという利点が。つまり、過去改変など気にせず、ある程度自由に行動できる。
露見も……おそらくは問題ないはず。
「しっかし、異能なんていう超常の力を扱ってんのに、科学、科学ってよぉ。うるせえやつらばかりだぜ」
「仕方ないよ。そういう時代なんだからさ」
「はっ、科学じゃ測れねえものが異能にはあるってんだ」
「まあねぇ……あっ、楓季ちゃんだ」
訓練室の扉が開け放たれ、古野白さんが入ってきた。
ん?
顔色が良くないぞ。
「鷹郷さんから緊急招集よ。すぐに出るから、急いで準備して!」
「約束なんだ、仕方ねえだろ」
「そんな約束、誰も許可してないでしょ」
「約束は約束だ。それに、カード持ってる奴を無視なんてできねえだろうがよ」
「確かに」
「里村君!」
「うーん、別にいいんじゃないかなぁ。ちょっと怪しいけど、大きな問題はなさそうだし。あっ、大志君は怒られるかもだけど」
「……」
「……」
「大志君、楓季ちゃん、それに有馬さんと……その可愛い妹さんかな? 今から鷹郷さんに会いに行こうよ?」
「わたし、妹じゃないです!」
俺の傍らでずっと口を閉ざしていた幸奈が、大声で強く否定を。
「へえ~。なら、有馬さんの何なの?」
「……子供の頃からの知り合い、のような」
「幼馴染?」
「……はい」
「それだけ?」
「……」
「そっかぁ、幼馴染かぁ」
里村少年が、にやにや顔でこちらに視線を送ってくる。
「幼馴染っていいですよねぇ、有馬さん」
「……」
違う。
俺の知る里村はこんなやつじゃない。
やっぱり、位相世界の別人だ。
「くだらねえ話してねえで、さっさと行くぞ」
里村の話を断ち切ったのは武上少年。
もう出口に向かって歩き出している。
「ちょっと、大志君!」
と、そこに。
プルルルル……。
電子音が響いてきた。
電話の着信音か?
「えっ?」
「楓季ちゃん?」
「……鷹郷さんからだわ」
古野白さんが手に持っているのは携帯電話じゃない。
ポケベル?
5年後に俺が借りることになる、あのポケベルだ。
「いいタイミングだぜ」
「……ちょっと待っててくれる。電話してくるから」
「おう、早くしろよ」
武上少年の返事を聞く前に既に駆け出していた古野白さんが扉から姿を消してしまった。残された俺たち4人は……。
「あ~、模擬戦でもして待ってるか?」
「……」
武上なら、そう言うと思ったよ。
「大志君、もういいでしょ。何度やっても勝てないって」
「勝てる! 何度かやれば絶対勝てる!」
「無理、無理。モニターで見れば、動きの違いは明らかだったから」
「はあ? オレの惜敗だったんだろ?」
「……」
「それにな、モニターじゃ分かんねえ事もあんだぞ」
「モニターで分かんなきゃ、何で分かるのさ?」
「感覚だ」
「もう~、そんな非科学的な根性論は研究所には不要だって」
「非科学的でも何でもいい。感覚が勝てるつってんだからよぉ」
「……」
「里村の言った惜敗は正解ってこった」
ほんと、武上は変わらないな。
里村とは大違いだ。
「はあ~、大志君には勝てないよ」
「今さら何言ってやがる」
しかし、その別人の里村のおかげで、ここが単なる過去じゃないと気づけた。
位相世界だと認識できた。
そう、位相世界だ。
「……」
元の世界とこの世界の関係がどうなっているのか?
想像もつかない。
当然、時間関係など分かるわけもない。
ただ、分からないなりに考えるなら、俺に与えられた猶予は……。
やはり24時間。
吾妻が回復するまでの24時間と考えた方がいいだろう。
24時間という短時間で、元の世界に戻る。
時間的な余裕はほとんどない。
ただし利点もある。
過去世界じゃないここでは、タイムパラドックスを心配する必要がないという利点が。つまり、過去改変など気にせず、ある程度自由に行動できる。
露見も……おそらくは問題ないはず。
「しっかし、異能なんていう超常の力を扱ってんのに、科学、科学ってよぉ。うるせえやつらばかりだぜ」
「仕方ないよ。そういう時代なんだからさ」
「はっ、科学じゃ測れねえものが異能にはあるってんだ」
「まあねぇ……あっ、楓季ちゃんだ」
訓練室の扉が開け放たれ、古野白さんが入ってきた。
ん?
顔色が良くないぞ。
「鷹郷さんから緊急招集よ。すぐに出るから、急いで準備して!」
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