30年待たされた異世界転移

明之 想

文字の大きさ
1,001 / 1,640
第10章 位相編

猶予

「ちょっと、武上君、勝手に決めないで!」

「約束なんだ、仕方ねえだろ」

「そんな約束、誰も許可してないでしょ」

「約束は約束だ。それに、カード持ってる奴を無視なんてできねえだろうがよ」

「確かに」

「里村君!」

「うーん、別にいいんじゃないかなぁ。ちょっと怪しいけど、大きな問題はなさそうだし。あっ、大志君は怒られるかもだけど」

「……」
「……」

「大志君、楓季ちゃん、それに有馬さんと……その可愛い妹さんかな? 今から鷹郷さんに会いに行こうよ?」

「わたし、妹じゃないです!」

 俺の傍らでずっと口を閉ざしていた幸奈が、大声で強く否定を。

「へえ~。なら、有馬さんの何なの?」

「……子供の頃からの知り合い、のような」

「幼馴染?」

「……はい」

「それだけ?」

「……」

「そっかぁ、幼馴染かぁ」

 里村少年が、にやにや顔でこちらに視線を送ってくる。

「幼馴染っていいですよねぇ、有馬さん」

「……」

 違う。
 俺の知る里村はこんなやつじゃない。
 やっぱり、位相世界の別人だ。

「くだらねえ話してねえで、さっさと行くぞ」

 里村の話を断ち切ったのは武上少年。
 もう出口に向かって歩き出している。

「ちょっと、大志君!」

 と、そこに。

 プルルルル……。

 電子音が響いてきた。
 電話の着信音か?

「えっ?」

「楓季ちゃん?」

「……鷹郷さんからだわ」

 古野白さんが手に持っているのは携帯電話じゃない。
 ポケベル?
 5年後に俺が借りることになる、あのポケベルだ。

「いいタイミングだぜ」

「……ちょっと待っててくれる。電話してくるから」

「おう、早くしろよ」

 武上少年の返事を聞く前に既に駆け出していた古野白さんが扉から姿を消してしまった。残された俺たち4人は……。

「あ~、模擬戦でもして待ってるか?」

「……」

 武上なら、そう言うと思ったよ。

「大志君、もういいでしょ。何度やっても勝てないって」

「勝てる! 何度かやれば絶対勝てる!」

「無理、無理。モニターで見れば、動きの違いは明らかだったから」

「はあ? オレの惜敗だったんだろ?」

「……」

「それにな、モニターじゃ分かんねえ事もあんだぞ」

「モニターで分かんなきゃ、何で分かるのさ?」

「感覚だ」

「もう~、そんな非科学的な根性論は研究所には不要だって」

「非科学的でも何でもいい。感覚が勝てるつってんだからよぉ」

「……」

「里村の言った惜敗は正解ってこった」

 ほんと、武上は変わらないな。
 里村とは大違いだ。

「はあ~、大志君には勝てないよ」

「今さら何言ってやがる」

 しかし、その別人の里村のおかげで、ここが単なる過去じゃないと気づけた。
 位相世界だと認識できた。
 
 そう、位相世界だ。

「……」

 元の世界とこの世界の関係がどうなっているのか?
 想像もつかない。
 当然、時間関係など分かるわけもない。

 ただ、分からないなりに考えるなら、俺に与えられた猶予は……。

 やはり24時間。
 吾妻が回復するまでの24時間と考えた方がいいだろう。

 24時間という短時間で、元の世界に戻る。
 時間的な余裕はほとんどない。

 ただし利点もある。
 過去世界じゃないここでは、タイムパラドックスを心配する必要がないという利点が。つまり、過去改変など気にせず、ある程度自由に行動できる。
 露見も……おそらくは問題ないはず。


「しっかし、異能なんていう超常の力を扱ってんのに、科学、科学ってよぉ。うるせえやつらばかりだぜ」

「仕方ないよ。そういう時代なんだからさ」

「はっ、科学じゃ測れねえものが異能にはあるってんだ」

「まあねぇ……あっ、楓季ちゃんだ」

 訓練室の扉が開け放たれ、古野白さんが入ってきた。

 ん?
 顔色が良くないぞ。

「鷹郷さんから緊急招集よ。すぐに出るから、急いで準備して!」



感想 11

あなたにおすすめの小説

ひだまりのFランク冒険者

みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。 そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。 そんな中 冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。 その名は、リルド。 彼は、特に何もない感じに毎日 「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。 この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。 その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。 競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。 俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。 その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。 意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。 相変わらずの豪華客船の中だった。 しかし、そこは地球では無かった。 魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。 船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。 ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ…… 果たして、地球と東の運命はどうなるの?

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

社畜おっさんは巻き込まれて異世界!? とにかく生きねばなりません!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はユアサ マモル 14連勤を終えて家に帰ろうと思ったら少女とぶつかってしまった とても人柄のいい奥さんに謝っていると一瞬で周りの景色が変わり 奥さんも少女もいなくなっていた 若者の間で、はやっている話を聞いていた私はすぐに気持ちを切り替えて生きていくことにしました いや~自炊をしていてよかったです