30年待たされた異世界転移

明之 想

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第10章 位相編

信じられない


「顔を隠して、名前も名乗らず、僕を追いかけてくる相手を信じろって? そんなこと無理に決まってる」

「……」

「それに、僕の走りについて来れるなんて普通じゃないだろ」

 確かに普通じゃないが、それはそっちも同じ。
 というか、あそこまで速度を上げて大丈夫なのか?
 15歳時の露見判定は今の俺より厳しいはずじゃ?
 それとも、この世界では露見制限はないと?

「はぁ~」

「……」

「今日はもういいか」

 有馬少年が溜息とともにこちらに背を向け。
 公園から足を踏み出そうとしている。
 先程とは違いゆっくりとした足取りだが、全身からは拒絶の意志が溢れ出ているかのようだ。

 それでも……。
 このまま帰すわけにはいかないんだよ。

「待ってくれ」

 一歩近づき右腕を掴もうとした俺に対して、腕を振るようにして避けた有馬少年。
 体を横に回転させ、そして。

「!?」

 殴りかかってきた!

「おい」

「……」

 さらにもう一発。
 無表情で拳を打ちつけてくる。

 もちろん驚きはしたものの、そんな拳を受けることはない。
 拳を避け、数歩距離を取り離脱。

「これも避けるのか?」

 少年が信じられないといった表情で一言呟き。
 再び飛びかかってきた。

「っ!」

 こいつ、血の気が多すぎる。

「何をする?」

 ほんとに俺なのか?
 15歳の俺、実質25年前の俺はこんな感じだったのか?
 はっきりとは思い出せないが、さすがにこれ程短絡的で暴力的だったとは思えない。

 この有馬少年は位相世界の俺だから、完全に同一人格ではないのだろう。
 とはいえ、これはちょっと。

「よすんだ!」

 制止の言葉を無視して、連続で攻撃を仕掛けてくる有馬少年。

「……」

 無言で拳と脚を振るってくる。

「おい!」

「……」

「有馬君」

 言葉を投げかけても返ってくるのは拳と脚だけ。
 攻撃の手を緩める素振りなんて欠片もない。

「……」

 本当に信じられない。
 15歳の有馬功己がここまで野蛮だったなんて。

「……」

 しかし、この攻撃。
 15歳とは思えぬ鋭さだな。
 
 もちろん、今の俺にとっては何でもないが。




「くっ!」

 一呼吸終えるまで続いた連撃もようやく終了。

「はあ、はあ、はあ……」

 有馬少年は距離を取って息を整えている。

「はあ、はあ……。僕の攻撃が、はあ、はあ……すべて……」

 それはまあ、15歳の自分に負けるわけもない。

「くそっ!」

 それより。

「どうして殴りかかってくる?」

「……」

「こっちは君に害意などない。何度も言っているように、話がしたいだけなんだ」

「本当に、話だけ?」

 おっ、聞く気になったか?

「いや、顔を隠した相手の言葉なんて……」

 どうやら、違うようだ。

「拳で聞いてやる!」

「……」



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