30年待たされた異世界転移

明之 想

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第11章 陰謀編

脱出


 ここが外に最も近い地点。
 外界への道を遮る壁。
 脱出の鍵は、きっとここにある。
 あるはずだ。

「……」

 今も感じる複数の気配。
 目の前の壁の向こうに、数メートル先に、はっきりと感知できる。

 ん?
 これは?

 上だ。
 天井上にも気配が感じられるぞ。
 だったら、壁の向こうは?

「……」

 消えてない。
 つまり、天井上の気配はこれまでの感知とは別もの?

「……そういうことか」

 おそらく、この上は迷路じゃない。
 人が暮らしている空間なんだ。

 なら、天井を斬り裂けば、どうなる?
 抜け出せるんじゃないのか?

 ここが誰によって、どうやって造られたものかは分からない。
 いまだ謎ばかりで、何ひとつ解けていない。
 が、そんなこと必要ないんだ。
 俺がすべきは、存在するはずの脱出口を見つけ外に出るだけ。
 それが、どんな方法であろうと。

「……」

 狭い通路を彷徨い続け、壁の破壊を繰り返しても外に出ることができなかったこの迷路空間。相当な仕掛けが施されていることに疑いはない。
 
 ただ、それでも、天井は?
 上への突破なんて、普通は想定していないのでは?

 ならばもう、試すしかないだろ。
 とはいえ、天井までは約5メートル。
 かなりの高さだ。
 身体強化すれば跳んで斬れない高さじゃないが、簡単でもない。

 となると、魔法だろうな。
 地下の石牢と違い、ここでは魔法を発動できる。
 土魔法で土台、いや、階段を作れば、天井を切り裂くのも容易なはず。
 テポレン山で崖下のセレス様を崖の上まで救い上げた、あの要領だ。

 よし、さっそく始めるぞ。

 土魔法で土砂を放出し、階段の形に成形。
 完成したら、ほど良い距離から剣を一閃。

 ガッ!

 力加減を調整し、二閃、三閃。
 
 ガッ!
 ガンッ!

 さあ、これでどうだ。

 ドガン!

 天井に刻まれた4つの亀裂。
 それが軋みを立て始め。

 ドッガーーン!!

 崩壊した。

「……」

 埃が舞う頭上に現れた天井穴。
 通過するのに十分な大きさがある。
 問題は、その先の空間だが……。

 迷路の薄暗さとは異なる明かりが漏れ出している。
 温かみのある色合いも目に入ってくる。 
 とても、迷路とは思えない。

 ってことは、成功したんだよな?

 期待に膨らむ胸を抑えながら階段を蹴り、一気に跳躍。
 穴を通って、上階へ。

「……」

 そこに広がっていたのは、変わり映えしない通路ではなく立派な室内空間。
 人のぬくもりが感じられる空間だ。

 間違いない。
 ここは迷路じゃない。
 脱出に成功したんだ。

「えっ!?」

「なっ!?」

 脱出できたということは、そこに感知済みの気配が存在するのも必然。

「穴から人が?」

「そんな?」

 談話室のような広い室内には、婦人の姿が2つ。
 その2人が混乱した表情で、こちらを眺めている。

「誰、あなた?」

「どうして……?」

 2人の様子を見るに、事情も何も知らないようだ。
 なら、穏便に進めるとしよう。

「すみません。天井が……床が抜けたようです」

「床が抜けた?」

「ええ。下で作業していたら突然」

「……」

「……」

「その件につき説明したいのですが、ご当主様はどちらに?」

「レンヌの当主様は、こちらにはいらっしゃいません」

 レンヌ。
 やはりオルセーの家門、レンヌ家の屋敷だったか。




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