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第12章 激闘編
同行
足裏で崩れかけた石畳を蹴り、古びた街の中を駆ける。
大通りの両側には歴史を感じさせる建物が立ち並び、その石壁には青々とした苔。
「……」
「……」
キュベリッツ建国当時に大都市として栄えた輝きは遥か彼方に過ぎ去り、今はもう時の流れに埋もれてしまったようだ。
そんな街で休憩を取らず走り抜けることを選択した剣姫。
俺の隣で平然と駆け続けている。
「よいのですか? この街を過ぎると今夜は野宿になりますが?」
「今さら野宿を避けることもあるまい」
それは、まあ、剣姫とはエビルズピークの異界で長期間野宿した仲だからな。
とはいえ。
「そこまで急ぐ必要があります?」
宿で休める時は休んだ方がいいと思うぞ。
「……予感がするのだ」
直感か。
「嫌な予感がな」
「……」
現時点での進捗度は概ね予想通り。
時間的にも体力的にも無理する状況じゃない。当然、直感に頼る場面でもない。
ただ、それが剣姫のものとなると……。
無視も軽視もできないだろ。
達人の直感は時に科学や道理を越えてくるのだから。
「では、急ぐしかないですね」
「悪いな」
「いえ」
理由が分かれば、納得できる。
納得いけば、心と足も軽くなる。
結果、速度も上がるというもの。
「「「あれは……」」」
「「「何?」」」
「「「……」」」
一方、俺たちの姿を眺める通りの人々の顔には。
驚きと恐怖の入り混じった色以外は何も浮かんでいない。
「……」
日暮れ前の時間に冒険者2人が街に入って旅装も解かず、とんでもない速度で通りを疾走しているのだから、この様子も理解はできる。が……。
「……よかったのか? アリマ?」
「ええ、イリサヴィアさんの予感は当たりますからね」
「いや、それじゃない」
うん?
予感の話でないなら?
「今回の件だ」
「……」
「本当によかったのか? 石牢から出たばかりで体調も万全ではないのに、このような旅に同行して?」
ああ、なるほど。
まだ気にしてたんだな。
「大丈夫です、問題ありません。それに今さらですよ。白都を出る際に十分検討しましたからね」
「だが……」
「私も今回の件は気になりますし」
「……」
「嫌な予感もするんですよね」
「予感、アリマも予感か?」
今の剣姫ほどの切迫感はない。
確信が持てるほど強くもない。
曖昧でぼんやりとした感覚にすぎないが、ずっと消えてくれないんだ。
「ええ。ですから、もう気を遣わないでください」
「……予感ならば、やむをえん」
「出口が見えてきたぞ」
「思ったより早かったですね」
速度を上げたから、あるいは思いのほか街が小さかったからなんだろう。
「早いのは悪いことではない」
「ええ」
「この調子で急ぐとしよ……」
と口から出かけた言葉が消えていく。
「お待ちください!」
街の出口まであと50歩という道上に、1人の少女が飛び出してきたからだ。
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