30年待たされた異世界転移

明之 想

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第12章 激闘編

発動前


「……エリルエイル」

 青髪魔法使いが繰り出したファイヤーボールを消滅させた後。
 足を踏み出そうとしたところに、まさかの詠唱。

 そう、これは魔法じゃない。
 あの宝具の詠唱だ。

「ベアサマ」

 オルセーとの戦いで何度もこの身に浴びた対象の動きを止める宝具マリスダリスの刻宝。そんな秘宝を、魔道具とは比べものにならない国宝級宝具を一冒険者が使おうとしている? それも、パーティーの中でも低級の冒険者が?

「メニケアイニシャ」

 っと、考えている場合じゃないな。
 今の俺ならマリスダリスの刻宝にも対抗できるとはいえ、発動を待つ義理なんてないのだから。

 ダン!

 右足で地を蹴り跳躍。

「なっ! ファイヤーボール!」

 再び青髪魔法使いから放たれた炎を空中で切断し、金髪ひよっ子の前に。

「リゼンタ……」

 詠唱終了寸前だが、問題ない。

「うっ!」

 胸に掌底を叩き込んでやる。
 続けて2撃目を。

「……」

 どうやら必要ないようだ。
 さっきの茶髪剣士とは異なり、一撃で沈んでくれたのだから。
 もちろん、マリスダリスの刻宝も発動していない。

「ラルス?」

 2人の冒険者が倒れたこの場に残るのは青髪魔法使いのみ。

「ラルス! っ!」

 その彼女の顔に浮かぶのは憤怒。
 親の仇を睨むように視線をぶつけてくる。
 これは、ますます対話が難しくなってしまったようだ。
 が、このタイミングで一応。

「話を聞いてもらえませんか?」

「何を今さら!」

「だから話を聞いて」

「黙りなさい!」

「……こちらは仕掛けられた戦いを受けただけですよ」

 結果として2人を倒したとはいえ、命は奪っていないんだ。
 気持ちは分かるけれど、少し冷静になってほしい。

 って、おい。

「ファイヤーアロー!」

 話を聞くどころか、問答無用で炎矢を放ってきた。

 バシュッ!

 まあ、剣を振れば消し去れるんだが。

「アローまで斬れるの? この距離で?」

 そう言いながらも次の発動体勢に入っている。

 駄目だな。
 やっぱり話せる状態じゃない。

「ファイヤ……うっ!」

 発動前の青髪に近づき、また掌底を。

「うぅ!」

 胸に決まるも、昏倒には至っていない。
 打たれる寸前、魔力で防御したようだ。
 茶髪剣士に続いて、さすがだな。

 とはいえ、続けて放てばいいだけ。
 よろめく青髪に右手のひらが接触する、と同時に。

「アイスアロー!」
「アイスアロー!」

 2本の氷矢が飛来してきた。

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