30年待たされた異世界転移

明之 想

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第12章 激闘編

亀裂


「エリシティア様に遭っていないだと?」

 そう、遭ってはいない。
 が、今はそんな話をしている場合じゃないだろ。

 ミシッ、ミシッ。

 白金髪シャリエルンの背後から微かな音が聞こえる。
 音の奥には尋常じゃない気配、空間の歪み。
 空が裂けようとしているんだ。

「真なのか?」

「……」

 この歪み、この気配。
 覚えがある。

 ただ、あいつは異界で始末したはず。
 なのに?

 ミシッ、ミシッ!

「……ん?」

 歪みの中心に亀裂が走る。

「何だ?」

 亀裂が拡散していく。

「何の音だ?」

 ミシッ、ミシッ、ギシッ!

 裂け目から異物が見え始めた。
 青い鱗!

「この気配は?」

 ギシッ!

 ギギギギ!

 亀裂をこじ開けるように現れたのは、鱗に覆われた前脚。
 アレと同じ竜種にしか見えない。
 が、以前とは登場の仕方が違うような。
 なら、別個体の可能性も?

「グルゥ……」

「なっ? ドラゴン!?」

 鑑定だ。
 両脚が現れた今なら、もう調べることもできる。

「アリマ!」

 亀裂からかなり離れた左方で声を上げたのは剣姫。
 赤髪剣士は……地に伏している。

「えっ? 団長!?」

 剣姫の近くにいるのは赤髪の援護に向かっていた金髪魔法使い。
 予想外の事態に身動ぎもできていない。

「空間からドラゴンが?」

 驚愕の表情を浮かべる白金髪シャリエルンの脚も止まったまま。

「……」

 シャリエルン、金髪魔法使い、剣姫、俺、今この平原に立っているのは4人だけ。
 それぞれの思いは違うものの、皆が怪物の登場に釘付けになっている。

「グルゥ……」

 そんな中、前脚に続き現れようとしているのは凶悪な蒼鱗に覆われた胴体。
 さらに、長い首へと……。

「アレなのか? アリマ?」

 いち早く平静を取り戻した剣姫が亀裂を迂回して俺の傍らに。

「エビルズピークで倒した邪竜?」

「……今調べてます」

 少し待ってほしい。
 もうすぐ鑑定が終わるから。

「うむ」

「……」

「……」

「……」

 終わった。

「分かったか?」

 もう間違いない。

「……エビルズマリスです」

 エビルズピークで倒した兇神エビルズマリス。
 別竜種でも分身でもなく、あいつ自身だ。

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