30年待たされた異世界転移

明之 想

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第12章 激闘編

転移


 この状況で考えがたいことだが、 ひょっとして剣姫は宝具での転移を避けたいのか?

「イリサヴィア様?」

「……うむ」

 返ってきたのは首肯。
 僅かな間はあったものの、しっかり頷いてくれた。
 ということは?

「同行してもよろしいのですね?」

「……問題ない」

 肯定の言葉も、また合間。
 やはり何らかの懸念があるのだろう。
 そこに一抹の不安を感じてしまう。
 ただ、だからといって、シャリエルンのありがたい申し出を断るほどじゃない。
 なら。

「宝具での転移、お願いします」

「承知した」




*************************

<エリシティア視点>



「……うぅ」

 頬を撫でる風に誘われるように、重い瞼が上がっていく。
 その僅かな隙間から光が入り込んで……しみるな。

「……っ!?」

 意識を失っていたのか?
 異界の大地震に飲まれて?

 徐々に覚醒を始めた頭に最前の状況が浮かび上がってくる。
 そうだ!

「ギリオン??」

 ギリオンはどこだ?
 あの時、私は彼に護られていたはず。
 腕の中にいたは……。

 瞬間、表現しがたい感情に身体が固まってしまう。
 横になったまま、起き上がることもできない。

 そんな私の頬をまた薫風が優しく……薫風?
 赤の世界に薫風??

「……っ!?」

 ない!
 赤が見えない!

 赤濁の空も、赤茶けた大地も、生ぬるく不快な空気もここには……。

 いったい、なぜ?
 何が起こって?

 即座に半身を起こし周りを見渡すと……。
 信じがたい光景が目に入ってきた。

「新緑、深緑?」

 木だ。
 青々とした葉がこれでもかと生い茂っている。

 ということは、あの異界を脱出できたのか?
 だが、どうやって?

 分からない。
 状況が理解できない。

 それでも、清浄な空気が身体を満たしてくれる。癒してくれる。
 心が澄んでいく。

「……」

 ここは赤の世界じゃない、明らかに異なる地だ。
 地震の影響なのか?
 他に原因があるのか?
 今は判断できないものの、異界を脱したという事実だけは間違いないだろう。

 ただ、この地がどこなのかが分からない。
 国境の平原でないことは確かだが……。

「おっ、姫さん、目が覚めたか?」

「……」

 ギリオンだ。
 ギリオンが近づいて来る。

 途端、なぜか思考が鈍り始めて……。

「怪我はねえよな?」

「……」

「姫さん?」

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