令嬢連続誘拐事件

明之 想

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「ここは、どこ?」

「わたしはどこにいるの?」
 
 幸いなことに、さっきの扉開放で連れ去られる者は出なかった。
 バケモノは4人の誰にも魔手を伸ばさなかった。

 ただ、新たに2人の令嬢がまたこの部屋に……。

「さむい! 暗い!」

「助けて、誰か!」

「おふたりとも、大丈夫ですよ」

 新参の2人に優しく声を掛けたのはメローネ嬢。

「あなた……グリーン家の?」

「ええ、メローネと申します」

「メローネさん?」

 そんな彼女たちのやり取りを遠目で見つめるのはナナ嬢。
 その眼は猜疑心に溢れている。

「……」

 ナナ嬢の顔色を見るに、相当具合が悪いはず。
 それでも、瞳だけは爛々とした光を放ったまま。

 恐ろしい程の念を感じてしまう。


「さあ、おふたりともこちらへ」

「「……」」

「ここで、少し休んでくださいね」

「「……はい」」

 メローネ嬢が2人の令嬢を案内したのは、ナナ嬢から離れた部屋の一角。
 ククミス嬢のすぐ近くだ。

「あっ?」

「あなたは、ククミス様?」

「うむ。今はゆっくりと休むがよい」

「「ありがとうございます」」

 彼女たちもククミス嬢の格は知っているようだ。





 今回の捜査。
 最初はそう悪いものではなかった。
 おとりとして潜入に成功したところまでは……。

 所持品を全て奪われたのは誤算だったけれど、ここに入り込むことができたのは計算通り。上手くいったとさえ思えるほどだった。

 なのに……。

 今や私の中に存在するのは疑心と不安と焦りばかり。
 その上、どうしても拭い去れない恐怖まで……。

 駄目だ。
 これでは失格だ。

 こんな私がエージェントだなんて。
 恥ずかしくて言えたものじゃない。

 分かっている。
 そんなことは理解している。

 けれど……。

 あの異形を思い出すと、本能的な怖気を覚えてしまう。

「……」

 私の体に巻き付いた首の感触。
 肌を抉る鋭い角。
 焼けつくような痛み。

 身体がすくんで動けない……。

「はあぁ」

 この感情。
 まったく、どうにもならない。

 情けない。
 本当に……。

「……」

 それでも、私はおとり捜査官。
 選ばれたエージェント。

 だから、諦めちゃいけない。
 最後まで投げ出しちゃいけない。

 怖気を覚えても、身体が震えても、身がすくんでも。
 この命ある限りは。

「……」

 心と体を鼓舞し、ただただ好機を待つだけ。



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