俺は魔法使いの息子らしい。

高穂もか

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第一部 決闘大会編

二百二話

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「立てるか?」
「あ、はい……」
 
 白井さんが、俺の手を引っ張って立たせてくれる。俺は、助かった安堵でボー然としてた。マジで危なかった……

「ここに留まって、あいつらが戻ってきてもいけない。移動しよう」

 白井さんに促され、俺はギクシャクと後をついていった。



 教室のある棟にまで来ると、ほっとして肩の力が抜ける。白井さんは、そんな俺の様子に目元を和らげる。

「大変だったね。大丈夫か?」
「うす。ありがとうございます」

 ぺこりと頭を下げると、白井さんは「よしてくれ」と肩を竦めている。
 いつもの、親切な白井さんだ。

「このまま、風紀室で聴取をしても構わないか?」
「は……」

 頷こうとして、俺は言葉が次げなくなった。

「吉村くん?」

 白井さんが、不思議そうに振り返る。
 ……やっぱり、だめだ。
 なんとなく、このまま風紀室へついてって良いのか――わかんない気がしたんだ。
 だって、俺は、白井さんに聞きてえことがある。
 どうしても、あの写真のことを聞かなくちゃ、スッキリできない。
 でないと、白井さんとどう接したら良いのか、わかんねえから。
 白井さんは、今だって助けてくれて、いい人なのに。
 身構えたりしなきゃなんないのは、嫌だ。


「白井さん」

 だから、今聞くべきだ。
 俺は、ゴクリと唾を飲み込んだ。

「どうして、俺に写真を渡してくれたんですか?」
「え?」

 白井さんは、俺の問いに目を丸くする。

「俺は、事故にあってから記憶がなかったんです。でも、最近ちょっとずつ戻ってきて……」
「!」
「それで……白井さんと、俺は会ったことがあったんすよね? 俺に、イノリの写真を渡してくれたこと、思い出したんです」
「……そうか」
「で、その……白井さんの幼馴染みって……俺を突き落とした奴……なんだって。それで、俺……」

 どうして、何も言わなかったんだろう。
 しかも、親切にしてくれて。
 それが、不思議だった。白井さんの立場だと、俺のことはいやに思うんじゃないかって、思うし。
 俺は、白井さんをじっと見た。白井さんは、しずかに目を伏せる。

「……記憶障害があるのは、聞いていたよ。前に会ったことを言わなかったのは、その方が都合が良かったから」
「つごう?」
「ああ。でも、そううまくはいかないよな」

 白井さんは、苦笑する。穏やかな目だった。

「よければ少し、話を聞いて貰えないか。幼馴染みかわいさに、多くを間違えた俺の――くだらない繰り言を。よりによって、君に話すのもどうかと思わなくもないが……」
「いえ! 聞かせてください」

 俺は、ぐっと拳を握る。白井さんは、安堵したように笑うと、近くのベンチに腰かけた。

「ここなら、人目もあるから」
「はい……ありがとうございます」

 俺も、並んで座った。
 白井さんは、ふうと深く息を吐くと――

「俺、白井早瀬は、これより一時間、虚偽を申さないことを誓います」

 厳かに宣誓をした。目を見開いている俺に、白井さんは苦笑する。
 
「せめてもの、証明になればと思って」
「白井さん……」
「それじゃ――話そう」


 白井さんは、過去を引き付けるような目をして、ゆっくりと話し始めた。
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