6 / 112
第一章 おけつの危機を回避したい
六話
しおりを挟む
「うーーん……」
寮の部屋で、おれはスマホと睨めっこしとった。
開いとるページには、姉やんお勧めの漫画。頬を赤らめた男たちが、夕焼けに照らされた教室でエッチッチしとる。「お前が好きだ!」「俺は大好きだ!」と叫び、二人が絶頂を迎えた瞬間、おれはスマホを放り投げた。
「出来るか、こんなん!」
何考えてんねん、姉やんは! ばふばふとベッドマットを殴りつける。
脳裏には、被服室での通話が、ぐるぐるとよぎった――
「なっなっなんで、おれと晴海がBLやねん!?」
完全に度肝を抜かれて、おれは叫んだ。はっとしたらしく、晴海も電話を掴み上げる。
「お姉さん、何考えてるんすか?!」
『落ち着いて、ちゃんと理由を話すから。あのね――この世界はBLゲーム。シゲルのキャラは、悪役モブでしょ? 破滅回避するには、このキャラ付けを取っ払うしかない』
「ど、どういうこと?」
おれと晴海は、顔を見合わせる。
『さっき、「主人公の友達」になれば「悪役モブ」じゃなくなるって言ったわよね? つまり、ゲーム内で別のキャラ付けを持てば、「悪役モブ」の運命から解放されるってこと! 愛野くんと仲良くなれないなら、自分でキャラを変えるしかないわ』
「ほなら、なんでBL? なんか、他の個性を押し出してくとか」
そう言うたら、鼻で笑われた。
『あんたね、モブの分際でナマ言ってんじゃないわよ。そんな個性があれば、最初からいい感じの脇役で登場できてるっつーの』
「ひ、ひどい!」
『だから、BLよ! 大したとりえが無くても、いい男と付き合えば「素敵な彼氏持ちの男」になれるっ! 普通、都合よくいい男は転がってないけど、幸いにもあんたには晴海くんがいるんだから!』
姉やんは、熱い熱い、受話器が焼けそうな声で、宣言した。
『いい? あんたの明日からのキャラ付けは――「主人公のクラスにいる、モブカップルの彼女」よ!』
「なんでそ~なるん! しかも、そこまでやっても、まだモブやし!」
ばす! と枕に頭を打ち付けた。
ひどい、姉やん。彼女もおったことないのに、彼女になれやなんて。おれは、おけつを守りたいだけやのに、何で……。
「ううう」と呻いて、枕に突っ伏していると。
「なんや、これ?」
「うわあ!」
おれのスマホを持って、晴海が側に立っとった。首にタオル掛けて、湯上りでほかほかしとる。おれは、慌ててスマホをひったくった。
「どえらい巨根やなあ。お前、巨乳好きはどうしたん?」
「ちゃうもん! これは、姉やんが読んで学べって言うからっ」
「うん、知っとる」
「なんやねん!」
晴海は笑って、おれのベッドに腰掛けた。後頭部をわしわし撫でてくる。
「むくれとらんと、頭乾かせよ。風邪ひくで」
「うう……でも……」
「シゲル。やっと見えた光明やんか」
励ますように言われて、うっと詰る。
「わかっとるけど……! 逆に、晴海は平気なん? おれと付き合ってるフリすんねんで?」
「平気や」
「即答!?」
おれは、ぎょっと目をむいた。ほ、本気で言うてんのか、お前……!
「え、意味わかっとる? 付き合うって言うたら――お前、皆におれとチューとかしてると思われるんやで?」
「ええよ」
「いやいやいや……そ、そうや! おれら同室やから、毎晩パコパコしてると思われるよ? ええんか?!」
「全然かまへん」
ホンマに考えてる?! って聞きたいくらい、晴海は即断即決や。おれはうろたえて、晴海の横顔を見上げた。
「な、なんで? なんで平気なん?」
どう考えても、おれ以上に――晴海にとっては損しかない話やんか。いくらウチの学校でも、変な目で見られるかもしれへんのに。
すると、晴海はきっぱりと言う。
「他ならぬお前のピンチに、俺の評判なんぞ塵芥や」
「……!」
真っ黒い目に漲る気迫に、ドキッとする。
「……お前、そこまでおれを慮ってくれるんか……?」
「水臭い。俺とお前の仲やろ!」
「は、晴海ぃ~!」
おれは感激の涙を溢し、晴海に抱きついた。お互いの背中を、バシバシと叩きあう。
「わかった、頑張る! お前がそこまで言うてくれるんや。おれも腹くくって、お前の彼女になるわ……!」
「そうか! ほな明日からよろしくな!」
「うん!」
思いっきりギューされて、心強さに笑ろてまう。
晴海は首にかけてたタオルで、ぐちゃぐちゃの顔拭いてくれた。優しい。
「晴海がおって、良かった……おけつ真っ暗やのに希望が持てるんは、お前のおかげやで?」
心からの感謝を目に込めて、見つめる。
すると――晴海は穏やかに微笑み、おけつを揉んできた。
「これからは、お前のケツは俺のケツ。二人で守ろうな」
「台無しや、あほ!」
おれは彼女らしく、ほっぺをビンタしといた。
寮の部屋で、おれはスマホと睨めっこしとった。
開いとるページには、姉やんお勧めの漫画。頬を赤らめた男たちが、夕焼けに照らされた教室でエッチッチしとる。「お前が好きだ!」「俺は大好きだ!」と叫び、二人が絶頂を迎えた瞬間、おれはスマホを放り投げた。
「出来るか、こんなん!」
何考えてんねん、姉やんは! ばふばふとベッドマットを殴りつける。
脳裏には、被服室での通話が、ぐるぐるとよぎった――
「なっなっなんで、おれと晴海がBLやねん!?」
完全に度肝を抜かれて、おれは叫んだ。はっとしたらしく、晴海も電話を掴み上げる。
「お姉さん、何考えてるんすか?!」
『落ち着いて、ちゃんと理由を話すから。あのね――この世界はBLゲーム。シゲルのキャラは、悪役モブでしょ? 破滅回避するには、このキャラ付けを取っ払うしかない』
「ど、どういうこと?」
おれと晴海は、顔を見合わせる。
『さっき、「主人公の友達」になれば「悪役モブ」じゃなくなるって言ったわよね? つまり、ゲーム内で別のキャラ付けを持てば、「悪役モブ」の運命から解放されるってこと! 愛野くんと仲良くなれないなら、自分でキャラを変えるしかないわ』
「ほなら、なんでBL? なんか、他の個性を押し出してくとか」
そう言うたら、鼻で笑われた。
『あんたね、モブの分際でナマ言ってんじゃないわよ。そんな個性があれば、最初からいい感じの脇役で登場できてるっつーの』
「ひ、ひどい!」
『だから、BLよ! 大したとりえが無くても、いい男と付き合えば「素敵な彼氏持ちの男」になれるっ! 普通、都合よくいい男は転がってないけど、幸いにもあんたには晴海くんがいるんだから!』
姉やんは、熱い熱い、受話器が焼けそうな声で、宣言した。
『いい? あんたの明日からのキャラ付けは――「主人公のクラスにいる、モブカップルの彼女」よ!』
「なんでそ~なるん! しかも、そこまでやっても、まだモブやし!」
ばす! と枕に頭を打ち付けた。
ひどい、姉やん。彼女もおったことないのに、彼女になれやなんて。おれは、おけつを守りたいだけやのに、何で……。
「ううう」と呻いて、枕に突っ伏していると。
「なんや、これ?」
「うわあ!」
おれのスマホを持って、晴海が側に立っとった。首にタオル掛けて、湯上りでほかほかしとる。おれは、慌ててスマホをひったくった。
「どえらい巨根やなあ。お前、巨乳好きはどうしたん?」
「ちゃうもん! これは、姉やんが読んで学べって言うからっ」
「うん、知っとる」
「なんやねん!」
晴海は笑って、おれのベッドに腰掛けた。後頭部をわしわし撫でてくる。
「むくれとらんと、頭乾かせよ。風邪ひくで」
「うう……でも……」
「シゲル。やっと見えた光明やんか」
励ますように言われて、うっと詰る。
「わかっとるけど……! 逆に、晴海は平気なん? おれと付き合ってるフリすんねんで?」
「平気や」
「即答!?」
おれは、ぎょっと目をむいた。ほ、本気で言うてんのか、お前……!
「え、意味わかっとる? 付き合うって言うたら――お前、皆におれとチューとかしてると思われるんやで?」
「ええよ」
「いやいやいや……そ、そうや! おれら同室やから、毎晩パコパコしてると思われるよ? ええんか?!」
「全然かまへん」
ホンマに考えてる?! って聞きたいくらい、晴海は即断即決や。おれはうろたえて、晴海の横顔を見上げた。
「な、なんで? なんで平気なん?」
どう考えても、おれ以上に――晴海にとっては損しかない話やんか。いくらウチの学校でも、変な目で見られるかもしれへんのに。
すると、晴海はきっぱりと言う。
「他ならぬお前のピンチに、俺の評判なんぞ塵芥や」
「……!」
真っ黒い目に漲る気迫に、ドキッとする。
「……お前、そこまでおれを慮ってくれるんか……?」
「水臭い。俺とお前の仲やろ!」
「は、晴海ぃ~!」
おれは感激の涙を溢し、晴海に抱きついた。お互いの背中を、バシバシと叩きあう。
「わかった、頑張る! お前がそこまで言うてくれるんや。おれも腹くくって、お前の彼女になるわ……!」
「そうか! ほな明日からよろしくな!」
「うん!」
思いっきりギューされて、心強さに笑ろてまう。
晴海は首にかけてたタオルで、ぐちゃぐちゃの顔拭いてくれた。優しい。
「晴海がおって、良かった……おけつ真っ暗やのに希望が持てるんは、お前のおかげやで?」
心からの感謝を目に込めて、見つめる。
すると――晴海は穏やかに微笑み、おけつを揉んできた。
「これからは、お前のケツは俺のケツ。二人で守ろうな」
「台無しや、あほ!」
おれは彼女らしく、ほっぺをビンタしといた。
41
あなたにおすすめの小説
義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました!
えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。
※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです!
※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
転生したが陰から推し同士の絡みを「バレず」に見たい
むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。
ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。
しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。
今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった!
目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!?
俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!?
「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる