86 / 112
第二章 淫紋をぼくめつしたい
キスしてほしい③
しおりを挟む
「なあなあ。わからんとこ、聞けた?」
隣を歩きながら、シゲルがじっと見つめてくる。昼の光を吸い込んで、はちみつみたいな瞳に見惚れながら、俺は頷いた。
「おう。お前のわからん所も仕入れてきたから、あとで教えたろ」
「ほんまー!? ありがとう、晴海っ」
シゲルはニコーっと微笑んで、俺の手をギュッと握る。
いちいち、可愛い奴や。この笑顔が見とうて、ついつい何でもしたりたなんねんな。
竹っちらは、「お前、今井が詐欺師だったら破産してるよな」ってからかいよるけど、それで本望なくらいには可愛いんやもん。
まあ、シゲルはホンマにええ子やし、ありえん仮定やけど。
「晴海はえらいなあ。いっつもちゃんと、わかるまでやるもん」
「ははは。ただのガリ勉やて」
と、謙遜してみたものの、好きな子に褒められて悪い気はせん。無駄に鞄を抱え直しとったら、シゲルがぐいぐいと腕を引っ張ってくる。
「そうと決まったら、早よ行こうや。ご飯食べて、テス勉しよっ」
「ああ、そうやな!」
先を行くシゲルの髪が、陽に透けてふわふわ揺れとる。――いい日やなあ、とか老人みたいなことを思ったりして。
もちろん。
そういう日でも、シゲルの抱える問題が無くなったわけやないと――忘れるわけではないんやけど。
引っ張られるようにやって来た被服室で、俺はシゲルと差し向いに座った。
「ゲーム」の一件で、付き合うふりをしてからと言うもの、俺とシゲルの二人っきりで昼メシを食う習慣になっとる。あいつら、俺がシゲルをずっと好きなん知っとるから、快く送り出してくれんのよな。友達甲斐に感謝やで。
「じゃーん! 今日は頑張ってんで~」
「おおっ!? こ、これは――」
眩しい笑顔で、シゲルが弁当箱の蓋を開いた。
キツネ色の衣も麗しいレンコンの天ぷらが、でっかい弁当箱の半分にぎゅぎゅっと詰め込まれとる。
ふわん、と揚げ物の香ばしい匂いが鼻をくすぐり、俺は目を瞠った。
「すげえ! てかお前これ……はさみ揚げちゃうん! こんなん作れんの?!」
カシャカシャ、とスマホで連写していると、シゲルがにこにこと箸を渡してくれる。
「へへ……初めて作ってんけどさ。味見したから、ちゃんとウマいで」
「やっば。プロやん」
「も~、ええから。早よ食べてみてや」
シゲルは、ちょっと照れくさそうに睨んでくる。抱きしめたなったけど、これ以上ごちゃごちゃしたら怒られそうやから、大人しく手を合わせる。
「いただきます」
シゲルの熱い視線を感じながら、でっかいまん丸の天ぷらに勢いよくかぶりつく。
ふんわりした衣を齧ると、ほくほくのレンコンの甘味が口いっぱいに広がった。具のつくねもジューシーで、ぴりっとした生姜の味が何とも言えず――
「うまっ!」
「わあ、よっしゃ!」
うますぎて、ガツガツ食うてまう。
レンコンのはさみ揚げは好きやけど、これは間違いなく人生イチのはさみ揚げや。しょうゆ味でメシもどんどん進み――あっという間に、全部食うてまう。
「ああ……もう終わった」
空っぽの弁当箱が、切ない。
シゲルは、俺の勢いに目を丸くして、真っ赤な頬をゆるませた。
「……そんな美味しかった?」
「シゲル……俺の嫁になってくれ!」
「何じゃそれっ。アホやな~!」
あはは、と明るく笑いながら、ばしばし肩を叩かれる。冗談めかせて本気なんは、気づかれてへんらしい。
と、シゲルは自分のはさみ揚げ(ラス1)を箸で摘まんで、ひょいと俺の口元に近づけた。
「ん?」
「おれの半分あげる! かじってええよ」
にこにこの笑顔で言われて、カーッと頬に熱が上る。
「はい、アーン」は、片思いの男には刺激が強いって! 内心おろおろしとったら、シゲルが「はーやーく!」て口にレンコンを押し付けてくる。
――ああ、この無邪気な瞳にあらがえる男が居るか?!
観念して齧ると、シゲルは嬉しそうにきゅっと目を細める。かわいい……。
もごもごと噛んどったら、シゲルが残りを食べ始めたんで、俺は机に沈み込む羽目になった。
隣を歩きながら、シゲルがじっと見つめてくる。昼の光を吸い込んで、はちみつみたいな瞳に見惚れながら、俺は頷いた。
「おう。お前のわからん所も仕入れてきたから、あとで教えたろ」
「ほんまー!? ありがとう、晴海っ」
シゲルはニコーっと微笑んで、俺の手をギュッと握る。
いちいち、可愛い奴や。この笑顔が見とうて、ついつい何でもしたりたなんねんな。
竹っちらは、「お前、今井が詐欺師だったら破産してるよな」ってからかいよるけど、それで本望なくらいには可愛いんやもん。
まあ、シゲルはホンマにええ子やし、ありえん仮定やけど。
「晴海はえらいなあ。いっつもちゃんと、わかるまでやるもん」
「ははは。ただのガリ勉やて」
と、謙遜してみたものの、好きな子に褒められて悪い気はせん。無駄に鞄を抱え直しとったら、シゲルがぐいぐいと腕を引っ張ってくる。
「そうと決まったら、早よ行こうや。ご飯食べて、テス勉しよっ」
「ああ、そうやな!」
先を行くシゲルの髪が、陽に透けてふわふわ揺れとる。――いい日やなあ、とか老人みたいなことを思ったりして。
もちろん。
そういう日でも、シゲルの抱える問題が無くなったわけやないと――忘れるわけではないんやけど。
引っ張られるようにやって来た被服室で、俺はシゲルと差し向いに座った。
「ゲーム」の一件で、付き合うふりをしてからと言うもの、俺とシゲルの二人っきりで昼メシを食う習慣になっとる。あいつら、俺がシゲルをずっと好きなん知っとるから、快く送り出してくれんのよな。友達甲斐に感謝やで。
「じゃーん! 今日は頑張ってんで~」
「おおっ!? こ、これは――」
眩しい笑顔で、シゲルが弁当箱の蓋を開いた。
キツネ色の衣も麗しいレンコンの天ぷらが、でっかい弁当箱の半分にぎゅぎゅっと詰め込まれとる。
ふわん、と揚げ物の香ばしい匂いが鼻をくすぐり、俺は目を瞠った。
「すげえ! てかお前これ……はさみ揚げちゃうん! こんなん作れんの?!」
カシャカシャ、とスマホで連写していると、シゲルがにこにこと箸を渡してくれる。
「へへ……初めて作ってんけどさ。味見したから、ちゃんとウマいで」
「やっば。プロやん」
「も~、ええから。早よ食べてみてや」
シゲルは、ちょっと照れくさそうに睨んでくる。抱きしめたなったけど、これ以上ごちゃごちゃしたら怒られそうやから、大人しく手を合わせる。
「いただきます」
シゲルの熱い視線を感じながら、でっかいまん丸の天ぷらに勢いよくかぶりつく。
ふんわりした衣を齧ると、ほくほくのレンコンの甘味が口いっぱいに広がった。具のつくねもジューシーで、ぴりっとした生姜の味が何とも言えず――
「うまっ!」
「わあ、よっしゃ!」
うますぎて、ガツガツ食うてまう。
レンコンのはさみ揚げは好きやけど、これは間違いなく人生イチのはさみ揚げや。しょうゆ味でメシもどんどん進み――あっという間に、全部食うてまう。
「ああ……もう終わった」
空っぽの弁当箱が、切ない。
シゲルは、俺の勢いに目を丸くして、真っ赤な頬をゆるませた。
「……そんな美味しかった?」
「シゲル……俺の嫁になってくれ!」
「何じゃそれっ。アホやな~!」
あはは、と明るく笑いながら、ばしばし肩を叩かれる。冗談めかせて本気なんは、気づかれてへんらしい。
と、シゲルは自分のはさみ揚げ(ラス1)を箸で摘まんで、ひょいと俺の口元に近づけた。
「ん?」
「おれの半分あげる! かじってええよ」
にこにこの笑顔で言われて、カーッと頬に熱が上る。
「はい、アーン」は、片思いの男には刺激が強いって! 内心おろおろしとったら、シゲルが「はーやーく!」て口にレンコンを押し付けてくる。
――ああ、この無邪気な瞳にあらがえる男が居るか?!
観念して齧ると、シゲルは嬉しそうにきゅっと目を細める。かわいい……。
もごもごと噛んどったら、シゲルが残りを食べ始めたんで、俺は机に沈み込む羽目になった。
11
あなたにおすすめの小説
義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました!
えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。
※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです!
※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
転生したが陰から推し同士の絡みを「バレず」に見たい
むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。
ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。
しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。
今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった!
目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!?
俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!?
「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる