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第6話 真実の目
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生まれてから一週間が経った。
ここで驚くべきは、すでに俺が普通に歩いて活動出来ていることだろう。
加えて、生まれた直後はそれこそ人間の赤ん坊と全く同じサイズ感だったはずなのに、今では身長が一メートル程度に達している。
流石に成人のゴブリンと比べれば二十センチほど小さいわけだが、それでも驚異的な成長速度だった。
母ゴブリンのくれた乳には何か妙な成分が含まれているのではないかと疑いたくなるくらいである。
そうそう、当たり前すぎて言及していなかったが、俺はもちろん、ゴブリンになっていた。
生活用水を汲みにいく湖の湖面でしっかりと確認したから間違いない。
というか、生まれた直後にゴブリンに《俺の息子》と言われているのだ。
俺がどこかからの拾われっ子でもない限り、当然ゴブリンであるに決まっている。
その割には悲壮感があまりないのは、女神にしっかりと生まれは選べないと説明されているからというのと、意外なほどにゴブリンが文明的な生活をしているからだ。
とは言っても、それこそ中世の人間のようにレンガやら石やらで丈夫な家を作っているとかいうわけではないが。
俺たち家族を含む、ゴブリン一族が住んでいるのは、岩山の一部を削り取られたかのような格好の洞窟だ。
長い年月で風化したのか、それとも誰かが人工的に掘ったものなのかは分からないが、この辺りの岩山にはいくつも洞窟が密集していて、それらを家として使っているのだった。
外に出ればそのまま森が続いているため、山の登り下りをする必要はない。
森には一族のみんなで狩りに行くので非常に便利であった。
獲物は大半がウサギやネズミといった小動物だが、たまに大物を狩ることもあるようだ。
猪や鹿などが取れれば万々歳で、さらに魔物なんかを狩ることもあるらしい。
ようだ、とか、らしい、とは俺が生まれて一週間でそういう大物を狩ったことがないからだ。
食卓にはウサギやネズミの肉や、小さな木の実などしか上がったことはない。
それも当然で、ゴブリンは悲しくなるくらいに弱いからだ。
猪に挑んだら死の危険すらある。
鹿でも突き刺されて死ぬ可能性は低くない。
魔物など論外というか、出会ったらほぼおしまいと言っていい。
ゴブリンも魔物だろ、もっと戦えと突っ込みたくなるが、幸いと言っていいのか、この世界のゴブリンはそこまで暴勇を発揮する愚か者ではないらしい。
少なくとも、俺の属するこの一族は、だが。
父や母に聞くところによれば、俺たちのような一族は少数派で、多くのゴブリンは想像通りの好戦的な奴らだという。
人間に挑むことも少なくなく、だからゴブリンは人間から討伐対象にされているようだ。
そもそも、魔物というのは知性のある者は大抵が《魔王軍》に所属しており、《魔王様》の配下であり、俺たちの一族もその例外ではないらしい。
ただ、あまりにも弱いために軍に招集されることは滅多になく、あっても一族の雄のうちから、若者を数人というくらいのようだった。
これを聞いた俺は、魔王軍とかあるのか、とか、自動的にそれに所属してる状態にあるのか、とか驚いたものだが、まぁ、女神の話を思い出すに、人と魔物は対立しているという話だったし、さもありなんという感じではあった。
ただ、まさか魔物側としてその争いに参戦する羽目になるとは思ってもみなかったが……。
いや、まだ参戦はしていないのか。招集されていないしな、俺。
流石に生後一週間の子供を招集するほど魔王軍も人材不足ではあるまい。
そもそも、ゴブリンは本当に弱いから……。
なぜその弱さが分かるのか、と言うと、俺にはそれを確認できるスキルがあるからだ。
その名も《真実の目》と言い、非常に便利なのでありがたく使っている。
ただ、このスキル、実のところ女神のところで確認したタブレット型端末のスキルリストには載っていなかったため、とっていなかった。
それなのに、生まれて直後、あれはなんだろう、これはなんだろう、と色々と観察していると、目の前に説明文が現れたりするもので、驚いてその説明文それ自体についていったいこれは何だ、と考えたら、「真実の目:この世に存在する遍く事物の真実を見抜くスキル。アカシックレコードに直接アクセスすることで情報を引き出す。他人のステータスの確認もできる。女神からの贈り物」と目の前に表示された。
はへぇ、なるほどねぇ、真実の目ねぇ……と一瞬呆けて、説明文を最後まで読んだあたりで随分とんでもないものを女神は俺にくれたものだと驚愕した。
ただ、そんな気持ちも俺が自分の置かれた状況をある程度確認できた段階で微妙なものになっていた。
《真実の目》で周囲のゴブリンたち……つまりは父や母、それに一族のみんなを確認してみたのだが、そのステータスたるやとんでもなく低かった。
たとえば、俺の父親のそれなのだが、
名前:ラード・ゴブラン
種族:ゴブリン(通常種)
LV:5
STR(力):G
VIT(生命力):H
MAG(魔力):G
INT(賢さ):H
RES(魔法抵抗):H
AGI(素早さ):F
DEX(器用さ):G
LUK(運):G
称号:なし
技能:《早熟》《棍棒術1》
というものだった。
これがどれだけ酷いかというと、真実の目によれば、能力値の最高値はSであり、そこからABCDと下がっていき、大体十歳程度の人間の子供の能力値の平均がHだというのだから、分かるだろう。
ただ、救いもないではなく、もっと細かく言うのなら、これはあくまで大体の目安であって、不動の値というわけではないらしい。
たとえば力がGの者が、Fの者よりも強い力を発揮する場合もある、ということのようだ。
ただ、それでも酷いものは酷い。
確かにこれでは最弱扱いされるのも仕方がないが……。
俺も自分自身のステータスを見てみたが、似たり寄ったりだった。
しかし、称号の部分に《異界からの招かれ人》《女神の加護》などとの記載があり、さらに技能にはしっかりと俺があのスキルリストから選んだスキルが書いてあったのでマシな方ではある。
でも不安だ。
スキルだけ持っててこの世界で生きていけるのだろうか?
技術がどれだけあろうが、力Cのやつが目の前に現れてぶん殴ってきたらそれで終わりでは……?
俺のこの世界での生活は、かなり厳しいものになりそうだ、とここで悟ったのだった。
ここで驚くべきは、すでに俺が普通に歩いて活動出来ていることだろう。
加えて、生まれた直後はそれこそ人間の赤ん坊と全く同じサイズ感だったはずなのに、今では身長が一メートル程度に達している。
流石に成人のゴブリンと比べれば二十センチほど小さいわけだが、それでも驚異的な成長速度だった。
母ゴブリンのくれた乳には何か妙な成分が含まれているのではないかと疑いたくなるくらいである。
そうそう、当たり前すぎて言及していなかったが、俺はもちろん、ゴブリンになっていた。
生活用水を汲みにいく湖の湖面でしっかりと確認したから間違いない。
というか、生まれた直後にゴブリンに《俺の息子》と言われているのだ。
俺がどこかからの拾われっ子でもない限り、当然ゴブリンであるに決まっている。
その割には悲壮感があまりないのは、女神にしっかりと生まれは選べないと説明されているからというのと、意外なほどにゴブリンが文明的な生活をしているからだ。
とは言っても、それこそ中世の人間のようにレンガやら石やらで丈夫な家を作っているとかいうわけではないが。
俺たち家族を含む、ゴブリン一族が住んでいるのは、岩山の一部を削り取られたかのような格好の洞窟だ。
長い年月で風化したのか、それとも誰かが人工的に掘ったものなのかは分からないが、この辺りの岩山にはいくつも洞窟が密集していて、それらを家として使っているのだった。
外に出ればそのまま森が続いているため、山の登り下りをする必要はない。
森には一族のみんなで狩りに行くので非常に便利であった。
獲物は大半がウサギやネズミといった小動物だが、たまに大物を狩ることもあるようだ。
猪や鹿などが取れれば万々歳で、さらに魔物なんかを狩ることもあるらしい。
ようだ、とか、らしい、とは俺が生まれて一週間でそういう大物を狩ったことがないからだ。
食卓にはウサギやネズミの肉や、小さな木の実などしか上がったことはない。
それも当然で、ゴブリンは悲しくなるくらいに弱いからだ。
猪に挑んだら死の危険すらある。
鹿でも突き刺されて死ぬ可能性は低くない。
魔物など論外というか、出会ったらほぼおしまいと言っていい。
ゴブリンも魔物だろ、もっと戦えと突っ込みたくなるが、幸いと言っていいのか、この世界のゴブリンはそこまで暴勇を発揮する愚か者ではないらしい。
少なくとも、俺の属するこの一族は、だが。
父や母に聞くところによれば、俺たちのような一族は少数派で、多くのゴブリンは想像通りの好戦的な奴らだという。
人間に挑むことも少なくなく、だからゴブリンは人間から討伐対象にされているようだ。
そもそも、魔物というのは知性のある者は大抵が《魔王軍》に所属しており、《魔王様》の配下であり、俺たちの一族もその例外ではないらしい。
ただ、あまりにも弱いために軍に招集されることは滅多になく、あっても一族の雄のうちから、若者を数人というくらいのようだった。
これを聞いた俺は、魔王軍とかあるのか、とか、自動的にそれに所属してる状態にあるのか、とか驚いたものだが、まぁ、女神の話を思い出すに、人と魔物は対立しているという話だったし、さもありなんという感じではあった。
ただ、まさか魔物側としてその争いに参戦する羽目になるとは思ってもみなかったが……。
いや、まだ参戦はしていないのか。招集されていないしな、俺。
流石に生後一週間の子供を招集するほど魔王軍も人材不足ではあるまい。
そもそも、ゴブリンは本当に弱いから……。
なぜその弱さが分かるのか、と言うと、俺にはそれを確認できるスキルがあるからだ。
その名も《真実の目》と言い、非常に便利なのでありがたく使っている。
ただ、このスキル、実のところ女神のところで確認したタブレット型端末のスキルリストには載っていなかったため、とっていなかった。
それなのに、生まれて直後、あれはなんだろう、これはなんだろう、と色々と観察していると、目の前に説明文が現れたりするもので、驚いてその説明文それ自体についていったいこれは何だ、と考えたら、「真実の目:この世に存在する遍く事物の真実を見抜くスキル。アカシックレコードに直接アクセスすることで情報を引き出す。他人のステータスの確認もできる。女神からの贈り物」と目の前に表示された。
はへぇ、なるほどねぇ、真実の目ねぇ……と一瞬呆けて、説明文を最後まで読んだあたりで随分とんでもないものを女神は俺にくれたものだと驚愕した。
ただ、そんな気持ちも俺が自分の置かれた状況をある程度確認できた段階で微妙なものになっていた。
《真実の目》で周囲のゴブリンたち……つまりは父や母、それに一族のみんなを確認してみたのだが、そのステータスたるやとんでもなく低かった。
たとえば、俺の父親のそれなのだが、
名前:ラード・ゴブラン
種族:ゴブリン(通常種)
LV:5
STR(力):G
VIT(生命力):H
MAG(魔力):G
INT(賢さ):H
RES(魔法抵抗):H
AGI(素早さ):F
DEX(器用さ):G
LUK(運):G
称号:なし
技能:《早熟》《棍棒術1》
というものだった。
これがどれだけ酷いかというと、真実の目によれば、能力値の最高値はSであり、そこからABCDと下がっていき、大体十歳程度の人間の子供の能力値の平均がHだというのだから、分かるだろう。
ただ、救いもないではなく、もっと細かく言うのなら、これはあくまで大体の目安であって、不動の値というわけではないらしい。
たとえば力がGの者が、Fの者よりも強い力を発揮する場合もある、ということのようだ。
ただ、それでも酷いものは酷い。
確かにこれでは最弱扱いされるのも仕方がないが……。
俺も自分自身のステータスを見てみたが、似たり寄ったりだった。
しかし、称号の部分に《異界からの招かれ人》《女神の加護》などとの記載があり、さらに技能にはしっかりと俺があのスキルリストから選んだスキルが書いてあったのでマシな方ではある。
でも不安だ。
スキルだけ持っててこの世界で生きていけるのだろうか?
技術がどれだけあろうが、力Cのやつが目の前に現れてぶん殴ってきたらそれで終わりでは……?
俺のこの世界での生活は、かなり厳しいものになりそうだ、とここで悟ったのだった。
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