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第24話 処分先
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『本当だ』
「六百五十円ノ値段シカツカナカッタノニ?」
少なくとも俺が最後に見た値段はそれだった。
しかしこれに博は笑って、
『そりゃあ、あまりにも怪しすぎたからだよ。あんな性能の魔剣が始値五百円なんてありえねぇだろって目の肥えてるやつらは思ったのさ』
「ン? ッテイウコトハ、欲シカッタケド入札シナカッタ奴ガイタミタイニ聞コエルケド?」
『みたいじゃなくて、実際にいたんだよ」
「マジカ」
『マジだ』
「デモドウヤッテアレノ正確ナ性能ヲ見抜イタンダ? 一応概要ニハ魔剣ッテ書イテオイタケド、博ノ話ヲ聞クニソレヲ素直ニ信ジル奴ナンテイナインダロ?」
『まぁな。だが、その答えはゲード、お前にとっちゃ簡単だろ?」
「エ?」
『とぼけてるのか? 鑑定系スキルだよ。お前だって多分持ってるだろ。向こうにいた時は一度も明言したことなかったが」
そう言われて、あぁ、と思う。
つまりは俺の《真実の目》だ。
あれは人のステータスとか物の詳細とか、価格とか、意識することによって鑑定することができるものだ。
ただ、あれは女神に与えられたものだから、多分、あっちの世界でも持っている者は少数だったか、もしくは俺一人だった可能性もある。
そのため博が言っている《鑑定系スキル》とは違う。
けれど、向こうの世界には《真実の目》より劣るが、鑑定系スキルと呼ばれるものがいくつも存在した。
一番分かりやすいのがただの《鑑定》だな。
これはありとあらゆるものをスキルレベルに応じて鑑定が可能な、いわば万能の鑑定スキルであるが、その代わりに非常にスキルレベルが上がりにくく、相当の経験を積んだとしても、《鑑定5》が限界だと言われるものだ。
《鑑定5》であっても、かなりのものを鑑定できるから十分ではあるのだが、そこまで上げるのは難しいため、大抵のものが途中で挫折して大して伸びずに終わる。
これはおそらく、女神が言ってたステータス/スキル制の弊害という奴だな。
経験を分散し過ぎてレベルが上がりにくい、というまさにそのパターン。
だからこそ、特定した鑑定……例えば《剣鑑定》とか《盾鑑定》とか、物品ごとに分けられた鑑定系スキルが向こうの世界ではメジャーだった。
そういったスキルを持っている者がこちらの世界にもいる、ということだろう。
そしてそれを使えば、写真越しであっても、魔剣かどうかとか、魔力がどれくらい宿っている品なのかとかをある程度鑑定できるのだろう。
俺の《真実の目》はどうかといえば、写真越しでも電波越ししでも問題なく鑑定できる。
テレビを見ていて、アイドルなんかを見て、カッコ書きで書いてある年齢と実年齢に五歳以上開きがあったりするのが分かったりしてあんまり嬉しくはなかったが。
スリーサイズも嘘ばっかりだし、さらに深いことまで箇条書きで表示されたりもする。
正直言ってただのプライバシーの侵害だった。
だからこそ、俺はこっちの世界であんまり《真実の目》は使わないようにしている。
なんかズルをしている感じが酷いし、まぁ……それ以上にそういうアイドルの秘密を知ってしまって忌避感がひどくなってしまった。
別に夢見てたわけでもないんだけど、実際に知ってしまうとアレだというね……。
「鑑定系スキルカ。ヨク俺ガ持ッテルッテ気ヅイタナ?」
俺が博にそう尋ねると、やっぱり今のも多少のカマかけのつもりはあったようで、
『やっぱり持ってるのか。ちなみに何鑑定だ?』
そう言ってくる。
しかしあまり詳しく話すと女神の話にまで最終的に行き着くので、これについてはこれ以上は秘密にしておくことにし、適当にはぐらかす。
「秘密ダ。外務省ノ奴ニアンマリ情報与エルト顎デ使ワレル事ニナリソウダシナ」
『おまっ。俺だって義理やら友情やらくらいはあるんだからな? でもまぁ……そうだな。そこは黙っておいた方がいい。俺も結局は小役人だからな。上司に聞かれたら黙れねぇ。というか黙っててもバレるからよ』
「《偽証看破》トカ持ッテル奴ガイルノカ?」
『そういうこった。お前もよく知ってる奴だが……』
「誰ダ?」
もちろん向こうの知り合いだろう。
気になる。
しかし博は、
『今は秘密にしておくぜ』
「意趣返シカ?」
『サプライズにとっておくんだよ。それにそんなことよりお前の釘バットだろ』
「アァ、ソウダッタ。デ、誰ガ買ッテクレルンダ?」
『少なくとも三つの探索者ギルドから声がかかってるぜ。そもそもうちがあの魔剣に気づいたのも、そのギルドからの問い合わせがあったからだからな』
「エ、ナンテ?」
『どこのギルドも「こちら側の鑑定士が鑑定したところ、異様に高性能の魔剣……釘バット?が出品されているのだがそちらは関与しているのか?」という感じだったな。困惑してたぜ。さらに「無関係だというのなら入札しようと思うのだが構わないだろうか」とも』
「デ、六百五十円デ入札シテクレタ訳カ?」
『そんなわきゃねぇだろ。六百五十円の奴は何にも知らないただの駆け出し探索者だよ。ついこないだ初心者講習受けたばっかりのやつだな。ログを見る限り、とにかく安い武器を探して行き着いたみたいだぜ」
「……売ッテヤリタカッタ」
超強力な武器を突然手に入れて無双させてやれたのに、と残念に思ったが、博は言う。
『実際に売ってたら、手に入れてしばらくはいいだろうが、最終的には迷宮の中で事故に見せかけてどっかの探索者に奪われてたと思うぜ』
「コワイ」
『そういうもんだろ、探索者ってのは』
向こうではそうだったが、こっちでもそうなのは意外だ。
日本人は優しいのではなかったか……まぁ、絶対にバレないとなれば日本人でも獣性は出てきてしまうか。
大半の探索者はもっとまともだと思うが一部そんなのもいるってだけだろう。
『ま、ともあれ今言った、連絡してきたギルドへの販売の仲介はしてやれるってわけだ。六百五十円どころか六百五十万くらい出してくれる可能性もあるぜ?」
「ヨロシクオネガイシマス」
『返答が早過ぎるだろ。そんな困窮してるのか……?』
「金ハイクラアッテモ損ハシナイダロ?」
売るのはちょっとお金が欲しいというのもそれなりにあるのだ。
でなければ収納に最悪突っ込んでもいいのだから。
釘バットなんかで容量埋めたくはないからやはり売りたい。
『まぁ、な。じゃあそういうことで話進めておくぜ。準備が整ったらこっちからまた連絡するから。じゃあな』
「アァ、マタ」
「六百五十円ノ値段シカツカナカッタノニ?」
少なくとも俺が最後に見た値段はそれだった。
しかしこれに博は笑って、
『そりゃあ、あまりにも怪しすぎたからだよ。あんな性能の魔剣が始値五百円なんてありえねぇだろって目の肥えてるやつらは思ったのさ』
「ン? ッテイウコトハ、欲シカッタケド入札シナカッタ奴ガイタミタイニ聞コエルケド?」
『みたいじゃなくて、実際にいたんだよ」
「マジカ」
『マジだ』
「デモドウヤッテアレノ正確ナ性能ヲ見抜イタンダ? 一応概要ニハ魔剣ッテ書イテオイタケド、博ノ話ヲ聞クニソレヲ素直ニ信ジル奴ナンテイナインダロ?」
『まぁな。だが、その答えはゲード、お前にとっちゃ簡単だろ?」
「エ?」
『とぼけてるのか? 鑑定系スキルだよ。お前だって多分持ってるだろ。向こうにいた時は一度も明言したことなかったが」
そう言われて、あぁ、と思う。
つまりは俺の《真実の目》だ。
あれは人のステータスとか物の詳細とか、価格とか、意識することによって鑑定することができるものだ。
ただ、あれは女神に与えられたものだから、多分、あっちの世界でも持っている者は少数だったか、もしくは俺一人だった可能性もある。
そのため博が言っている《鑑定系スキル》とは違う。
けれど、向こうの世界には《真実の目》より劣るが、鑑定系スキルと呼ばれるものがいくつも存在した。
一番分かりやすいのがただの《鑑定》だな。
これはありとあらゆるものをスキルレベルに応じて鑑定が可能な、いわば万能の鑑定スキルであるが、その代わりに非常にスキルレベルが上がりにくく、相当の経験を積んだとしても、《鑑定5》が限界だと言われるものだ。
《鑑定5》であっても、かなりのものを鑑定できるから十分ではあるのだが、そこまで上げるのは難しいため、大抵のものが途中で挫折して大して伸びずに終わる。
これはおそらく、女神が言ってたステータス/スキル制の弊害という奴だな。
経験を分散し過ぎてレベルが上がりにくい、というまさにそのパターン。
だからこそ、特定した鑑定……例えば《剣鑑定》とか《盾鑑定》とか、物品ごとに分けられた鑑定系スキルが向こうの世界ではメジャーだった。
そういったスキルを持っている者がこちらの世界にもいる、ということだろう。
そしてそれを使えば、写真越しであっても、魔剣かどうかとか、魔力がどれくらい宿っている品なのかとかをある程度鑑定できるのだろう。
俺の《真実の目》はどうかといえば、写真越しでも電波越ししでも問題なく鑑定できる。
テレビを見ていて、アイドルなんかを見て、カッコ書きで書いてある年齢と実年齢に五歳以上開きがあったりするのが分かったりしてあんまり嬉しくはなかったが。
スリーサイズも嘘ばっかりだし、さらに深いことまで箇条書きで表示されたりもする。
正直言ってただのプライバシーの侵害だった。
だからこそ、俺はこっちの世界であんまり《真実の目》は使わないようにしている。
なんかズルをしている感じが酷いし、まぁ……それ以上にそういうアイドルの秘密を知ってしまって忌避感がひどくなってしまった。
別に夢見てたわけでもないんだけど、実際に知ってしまうとアレだというね……。
「鑑定系スキルカ。ヨク俺ガ持ッテルッテ気ヅイタナ?」
俺が博にそう尋ねると、やっぱり今のも多少のカマかけのつもりはあったようで、
『やっぱり持ってるのか。ちなみに何鑑定だ?』
そう言ってくる。
しかしあまり詳しく話すと女神の話にまで最終的に行き着くので、これについてはこれ以上は秘密にしておくことにし、適当にはぐらかす。
「秘密ダ。外務省ノ奴ニアンマリ情報与エルト顎デ使ワレル事ニナリソウダシナ」
『おまっ。俺だって義理やら友情やらくらいはあるんだからな? でもまぁ……そうだな。そこは黙っておいた方がいい。俺も結局は小役人だからな。上司に聞かれたら黙れねぇ。というか黙っててもバレるからよ』
「《偽証看破》トカ持ッテル奴ガイルノカ?」
『そういうこった。お前もよく知ってる奴だが……』
「誰ダ?」
もちろん向こうの知り合いだろう。
気になる。
しかし博は、
『今は秘密にしておくぜ』
「意趣返シカ?」
『サプライズにとっておくんだよ。それにそんなことよりお前の釘バットだろ』
「アァ、ソウダッタ。デ、誰ガ買ッテクレルンダ?」
『少なくとも三つの探索者ギルドから声がかかってるぜ。そもそもうちがあの魔剣に気づいたのも、そのギルドからの問い合わせがあったからだからな』
「エ、ナンテ?」
『どこのギルドも「こちら側の鑑定士が鑑定したところ、異様に高性能の魔剣……釘バット?が出品されているのだがそちらは関与しているのか?」という感じだったな。困惑してたぜ。さらに「無関係だというのなら入札しようと思うのだが構わないだろうか」とも』
「デ、六百五十円デ入札シテクレタ訳カ?」
『そんなわきゃねぇだろ。六百五十円の奴は何にも知らないただの駆け出し探索者だよ。ついこないだ初心者講習受けたばっかりのやつだな。ログを見る限り、とにかく安い武器を探して行き着いたみたいだぜ」
「……売ッテヤリタカッタ」
超強力な武器を突然手に入れて無双させてやれたのに、と残念に思ったが、博は言う。
『実際に売ってたら、手に入れてしばらくはいいだろうが、最終的には迷宮の中で事故に見せかけてどっかの探索者に奪われてたと思うぜ』
「コワイ」
『そういうもんだろ、探索者ってのは』
向こうではそうだったが、こっちでもそうなのは意外だ。
日本人は優しいのではなかったか……まぁ、絶対にバレないとなれば日本人でも獣性は出てきてしまうか。
大半の探索者はもっとまともだと思うが一部そんなのもいるってだけだろう。
『ま、ともあれ今言った、連絡してきたギルドへの販売の仲介はしてやれるってわけだ。六百五十円どころか六百五十万くらい出してくれる可能性もあるぜ?」
「ヨロシクオネガイシマス」
『返答が早過ぎるだろ。そんな困窮してるのか……?』
「金ハイクラアッテモ損ハシナイダロ?」
売るのはちょっとお金が欲しいというのもそれなりにあるのだ。
でなければ収納に最悪突っ込んでもいいのだから。
釘バットなんかで容量埋めたくはないからやはり売りたい。
『まぁ、な。じゃあそういうことで話進めておくぜ。準備が整ったらこっちからまた連絡するから。じゃあな』
「アァ、マタ」
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