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第1章 『俺この異世界ベルハイムで、第二の人生を送る!』-始まりの異世界とジョーカー
13話 それでも俺はお前が欲しい
しおりを挟む俺は潔く頭を下げた。
それは素直に、アルテマに対して申し訳ないと思ったからだ。
アルテマに対して俺の放った言葉たちとは、あまりに軽率で、ただただ愚劣な暴言に過ぎなかった。何より俺はアルテマが最も慕っているだろう主人とやらを侮辱してしまった。その事とはアルテマからすれば自身が貶されるよりもよっぽど耐え難い屈従であったに違いない。
「すまないアルテマ、何も知らないのに勝手なことばかりを言って…」
俺は謝罪する。謝罪して、許しを乞うために…
ただその結果を待たずして、俺はアルテマが次に見せるであろう反応が我がごとのようには予想出来ていた。
『反省の弁を述べる俺を責めたりしないだろう。何故ならお前はそういう男なんだろうから…だろ、アルテマ?』
そんな俺の予想は、やはりといって的中する。
アルテマは俺の反省の意を快くは受け入れてくれたようで、ニッと口角を上げては笑った。笑った直ぐ後、直ぐさま表情キリッと引き締めて、俺同様には頭を下げる。
そうして、「いや、謝るのは僕の方だ。すまない」と、続けて、「友人にに対して剣を抜こうとした愚行を、どうか許してほしい」と、申し訳なさそうには言った。
予想通りの展開、ただ一つを除けば。
「友人?それは俺の事か?」
「他に誰がいる?」
「……いや、だってまだ会ったばかりだし…」
「関係ないよ。それに、友好はこれから深めていけばいいさ」
これから、つまりは先の未来のことを言っているのだろうか?
聞いてて胸がむず痒くなる台詞だった。
友好を深める?馬鹿いうな。
ましてや友達だと?
「…俺もアルテマも、身分も違えば境遇も違う。違い過ぎる。それにな、俺はアルテマに友達と呼んでもらえるほど立派な人間じゃねーよ…」
そうさ、俺に友達なんて必要ないし、そもそも俺なんて誰からも必要されてないし…それは生前の時からずっとそう。
俺に残されている記憶の限りじゃそんな存在は1人もいなかった。
小中高と苛められて、逃げて、家に引きこもって、それで俺の人生は終わって、こうして遂には異世界転生を果たしたわけだ。その間に友人と呼べる程の友好関係は築けなかったし、むしろ築く余裕すらなかった。
「お前は城に仕える将来有望な剣士で、かたや俺は職業所定無職、一文無しの糞野郎だ。そんな俺たちが友達だって?無理だろ、そんなん。全ッ然、対等じゃねーよ…」
もうこれから先一生、友達なんて縁のないものだと思っていた。いたのに、アルテマは俺を友達だと呼んでくれた…
まさかだよ。またなんでそれが今なんだよ?
「もう、遅いんだよ…アルテマ…」
「遅いって、何が…」
「全部だ。もう、全て遅いんだよ」
俺は異世界転生を果たした。デスゲームに参加した。感情を失ったーー
jokerとしての役割を得ちまった…
jokerの役割、それは相手スキルの強奪と破壊。それを繰り返して、俺は生きていく。そうやって強くなって強くなって、俺はデスゲームで勝ち抜かなければならない。
そうしなければ、俺は死ぬ。
逃げ場なんてどこにもない。何故なら果てしなく続くこの異世界こそが戦場なのだから。
誰が敵か、なんて分からない。
分かったところで、穏便に済むはずはない。俺が殺らなくたって、誰かが俺を殺しにくるかもしれない。それがデスゲームに参加させられた俺の運命。
だからだよ、今更友達だなんて…ふざけんなよ。無理だよそんなの。遅い…遅いんだよ…もう、俺はーーー
「俺は…元の俺には戻れないんだよ、アルテマ…」
「たけし!どうしたんだよ急にーー
と、アルテマが言い切るよりも先に、俺はアルテマの言葉を無理矢理には遮断して、ガシッと、強引にアルテマの腕を掴んだ。
「…アルテマ、飯、ありがとうな。美味かったよ…すっげー…本当に本当に美味かったよ。あと、こんな俺なんかを友達って呼んでくれて…嬉しかったよ…」
アルテマは俺の事を友達だと呼んでくれた。
もちろんアルテマの友好関係なんて知らないし、もしかしたらアルテマには何百何千とたくさんの友達がいて、俺はその中のたった1人なのかもしれない。
俺を友達だと呼んでくれたことだって、軽いノリの延長線上ってだけかもしれない。知らねーよそんなもん、どっからが友達でどうやったら友達になれるか、だなんて友達いた歴0年の俺に理解できるわけねーよ…
でもな、俺はそれでも嬉しかったんだよ…感情なんてないはずの俺が、何故かそう思ってしまってんだよ。
「悪いなアルテマ、俺は今からお前に最低最悪の事をする。分かってくれ、なんて都合の良いことは言わねーよ。許してほしいとも思わない。一生恨んでくれていいんだ、復讐したきゃするがいい。それら全部を受け入れてやるから、それでも俺はーーー
『それでも俺はお前が欲しい』
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