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第2章 ラクスマリア城とラクシャータ王女の剣
16話 暴かれた正体
しおりを挟む【固有スキル】心眼によって覗けたアルバート・ジックレイのステータスを見て、俺は確信した。
『やはり、この男は黒だな…』
それは【称号スキル】暗殺者を見れば容易に分かることであるように、アルバートの本当の顔とは暗殺者としての姿なのだろう。
つまり、今回ラクスマリア城での狼藉を働いたのはアルバートと見て間違いはないということだ。
ただ何故、アルバートがそんな事を仕出かしたのかは分からない。分からないが、素直に聞くわけにもいかないし…
どうしたもんかと考えて、俺は決断した。
「…じゃあ、俺は帰ることにします。他の鍛冶屋を回ってみることにしますよ」
とりあえず退散。
退散して、今後の対策を練る必要がある。
犯人としての確固たる証拠はないにしても、アルバートが暗殺者であることは【固有スキル】心眼によって分かっている。つくづく、こんなにも便利なスキルがある事に感謝せざる得ないよ。
対策を練った後にまた来るのもよし、てか一回ラクスマリア城に戻ってグインに相談してみる手もありか?
『それにしても…なんだよこの気持ち…』
どんな屑野郎かと思ってきてみれば、案外まともそうな奴だった。
もちろんそれはアルバートの表面の部分でしかないし、てかそれしか見てないから言えることだろうが…アルバートの鍛えた剣は本物だ。
アルバートの鍛えた剣とは、アルバートの歩んできた軌跡そのもの。アルバートが鍛冶職人として努力してきたからこそこれらの剣はこうして生まれたわけで、今は埃被って残念な剣でしかないけど、それでもここにある事実は変わらない。
本当に感心した。
感心したからこそ、何だか無性にやるせない気持ちで一杯だった。
こんな奴でも、ちゃんとした人生を歩んできた事実に、体の震えが収まらなかった。
『俺と違ってちゃんとしたもん持ってんないのに…』
もったいねぇよ、全く。
俺は足場を確保しながら鍛冶屋の扉へと足を進めた。
アルバートを横切って、「では、また」と静かには囁やいて、扉へと手にかける。
そうして鍛冶屋を後にしようとした…その時。
「く、くくく…あははははははは!!」
それは笑い声。
背後からの大きな笑い声を聞いて、それは当然としてアルバートのものだ。
振り返ると、アルバートはゲラゲラと手でお腹を押さえては、狂ったようには笑う。
「どうか、しましたか?」
何が可笑しい、そんな意味合いを込めて俺は尋ねた。
そんな俺の言葉を受けて、アルバートは笑いを堪えるようには俺の方へと向き直った。
「いやね…あまりにも嘘が下手だなぁと、そう思いまして」
は?嘘だと?
「…嘘、ですか?それは誰のーー」
「貴方ですよ、アルテマさん…いや、ラクシャータ・ラクスマリア王女の懐刀、たけしと言った方がよろしかったかな?」
「は、はぁ?あんた…何でそれを…」
はっ、違う違う!何認めっちゃってんだ俺!?
「な、ななななな何を言ってるのかさっぱりだなぁー」
「くくく…もうそんなお芝居やめたらどうですか?見苦しいですよ、たけし」
アルバートは嘲笑うようには口元を歪めて、また小馬鹿にするような態度では俺の腰に下げられた剣を指した。
「…貴方の腰に下げた銀色の剣[シルバー・ランスロット]はね、実は私がかつて鍛えた珠玉の一振りなんですよ。まぁそれも何年も前になりますがね、いやはや私も鍛冶屋としての性分を未だ捨てきらないわけですよ。だからどこの誰が私の剣を扱っているのか…大体は知っています。ええ知っていますとも…」
俺は徐に腰に下げた自身の剣[アルテマの剣]の鍔へと視線を移した。
移して、鍔に刻まれた彫りを指でなぞる。
それはこの剣の製作者名が刻まれた位置、なぜ分かるかと言えば先程この鍛冶屋で触った剣にも同様な刻銘をあったから。
「おいおい、アルバート・ジックレイ…お前がこの剣を鍛えたというのかよ?」
「ええ…そうですよ。まさか知らないでこの場所にやってきたなんて…くく、あははははは!これが笑わないでいられますか?」
「ち、ちくしょ…」
やっちまった、まさかそんな所から俺の正体がバレるなんて…
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