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第4章 騒乱と死闘
17話 絶望の先へ
しおりを挟む一瞬の内には屍の三人を破壊した俺を垣間見てか、ノブナガの動きピタリと止まった。
また残る屍二人もノブナガに呼応するかのようには動きを停止させた。
そんな彼等が俺に向けていたものの正体ーーそれは警戒心他ならないだろう。
見ると、ノブナガはジリジリと後ずさりをしていた。
「まさか、一瞬で…」
驚愕の声色でそう言ったノブナガに対し、俺は挑発混じりには左手にて手招きをした。
「来いよ、ノブナガ。まだまだこんなもんじゃないんだろう?」
そう言った俺の言葉は確かなようで、ノブナガは奇妙な動きを見せ始めていた。
手に持った大剣を地面に突き刺して、膝を降り身を屈ませては地面に両手をついた。
ついて、ブツブツと譫言のようには呟き、全身から蒸気のようには魔力を放出させていた。
「…はは、まさか奥の手を使わざる得ないとはね…」
ニヤニヤとして気色の悪い笑みは以前として、なれどノブナガから発せられるオーラには明確な違いが見受けられた。
何かするつもりなのか…俺は次に見せるノブナガのアクションを静かに待った。
「joker、君はやはり特別な存在なようだネ…」
「特別…か。はは、買い被りすぎだ。そんな言葉に見合うような高等なものじゃないんだよ…これは」
そう、俺は別に特別なんかじゃない。
むしろ特別とは真逆の位置にする存在、力。
もっとありきたりで、誰しもが抱くような、シンプルかつ単純明快なものこそが俺という存在垂らしているに過ぎない。
それは欲望、生きていれば誰しもが抱くようなそんな思いこそが俺に力を与え、再びこの世界に留まらせてくれた。
誰よりも幸福になりたいという欲望、誰よりも高みへと上り詰めたいという欲望、その為にはいつくもの業を重ねてもいいとする欲望、それが例え復讐という邪な感情であってもいいと、罪の在り方そのものを認めた俺の欲望こそが俺を奮い立てせていた。
俺という愚か者が辿り着いた境地とは、どこまでも下等でゲスで醜い。ただ生きているっていうことは、それらと付き合っていくということーー俺はそこに改めて気が付いた。
切っても切れない世のしがらみが、今この瞬間は何もない。言わば今の俺とは、ありとあらゆるリミッターが外れた状態と言える。
情け無用、上等。外道鬼畜、上等。残虐非道…上等。
ああ認めるよ。俺はそれら全てを受け入れてやるよ。
その事で後悔は二度としない。したくない。
それらなくして俺が何も守れないというならば、俺はそれを快く引き入れる。
それでも俺は行くよ、絶望の先へーー
『俺この異世界ベルハイムで、第二の人生を送る』
「行くよ、joker。僕の真の力を…思い知るがいい…」
「ああいいぜ、その全てを受けてやる。ただな、受けた後でお前はきっと後悔するだろうよ…俺という化け物を呼び覚ましてしまったことを、未来永劫、死んだ後でも…ずっとな」
答えは決した。
俺たちに希望はいらない。
あるのはただの、生きるか死ぬか、ただそんなシンプル過ぎる弱肉強食の結果だけでいい。
強い者が相手を屈服させ、自分の正義を貫く事を許される。
その正義がどんなに歪なものであろうと、最後に生き残った者だけにその正義を主張する権利が許される。
生きるとはそれ程に残酷かつ無情で、なれどどこまでも分かりやすいルールを俺たちに与えてくれた。
そのルールに従い、俺はノブナガを殺す。
殺して、身を引き裂いて、その魂が穢れ朽ちて行く様を見届けてやる。
「悪逆非道なるノブナガよ、俺はお前が生きてきた意味全てを消してやる。生まれて来なければ良かったと、異世界転生などするべきではなかったとーーそう思え」
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