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くちばしのかけたカラス
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昔々ある国の山奥の村に、カラスに荒らされたことのない畑がありました。
そこには優秀なカカシが二人いたのです。一人はすっごく頭が切れるが力はそんなにないカカシ。もう一人はすっごく力はあるが頭はそんなによくないカカシでした。
二人は毎日自分らの足りない部分を補いながらカラスを退治していたのです。
そんな優秀なカカシたちが毎日畑を守っているのですからカラスはお手上げです。
でもカラスだって生きています。毎日何かを食べなければ死んでしまいます。それにここで作られているスイカはとても大きくて甘い果汁がたっぷり詰まったことでとても有名でした。あるカラスはどうしてもスイカが食べたくてあることを思いつきました。
「ねえねえカカシさん。僕の話を聞いてくれないかい?」
まだ周りはとても暗い中、あるカラスは力の強いカカシに頭の切れる方のカカシにばれないようにこっそりと話しかけました。
「おうなんだい。わざわざ倒されに来たのかい。まったく物好きなものだ」
力の強いカカシはカラスに見せつけるように指をぽきぽきと鳴らします。
でもカラスは落ち着いて首をよこにふりました。
「違うよ。僕の話を聞いてほしいんだ。今日はスイカがほしいわけじゃないよ。君にとって悪い話じゃないんだ。話を聞いてくれるかい?」
「そうかい。なら話してみろ」
「僕に毎日少しだけでいいからスイカを分けてほしいんだ」
「バカ言ってんじゃねえ」
すぐに力の強いカカシは言います。
「まあまあ話は最後まで聞いて。僕に毎日スイカをくれるなら君にこのきれいな石をあげるよ」
「なんだいこれは」
きれいな石を受け取った力の強いカカシは疑うように石を見ます。
「それは金っていうんだ。人間たちの間ではそれがすっごい価値を持っているんだ」
もちろんこれは嘘っぱちです。本当は金でもなんでもなくただの石ころです。
ですが頭のよくないカカシはこれを信じてしまいました。
「本当にくれるのかい?」
「もちろんだよ。毎日スイカをくれるのなら毎日金を用意してあげるよ」
「わかったよ。毎日この時間にスイカを用意しておこう。ただこっそりな」
「うん、わかってるよ。じゃあまた明日ね」
カラスはこっそりと森の方へと歩いていきました。
さあさあただの石ころを金と信じ切っている力の強いカカシはとにかく上機嫌です。頭の切れるカカシがいないところでは石ころを宙にかざしたりながめたりしています。
そんなおかしな様子を頭の切れるカカシは、まだおとなしく見ているだけでした。
それから数日が経ちました。
あれから毎日カラスは石ころを運び、力の強いカカシはスイカをカラスに渡しました。
ここにきてようやく頭の切れるカカシはおかしいと思い始めました。
「なんだか最近スイカの数が減っているようなんだ。何か知らないかい?」
「し、知らないなぁ。きっと人さまが収穫しているんじゃねえか」
頭の切れるカカシはいつもと様子がおかしい力の強いカカシをおかしいと思いました。
目が泳いでいるのとなぜだかすっごく汗をかいているのを頭の切れるカカシは見逃しません。
「最近君は石ころを集めているみたいだけどどうしてだい?」
「石ころじゃねえよ! これは金だよ」
「ほう。もしよければ僕に見せてくれないかい?」
「いいぜ。ほらよ」
頭の切れるカカシは数十個ほどの石ころを見てすべてを理解しました。
そしてことの真実をわかりやすく説明してあげました。
すると力の強いカカシは地面に倒れ、とうとう泣き始めてしまいました。
「ああ、俺はなんていうことをしてしまったんだ。人さまに申し訳がたたねえよ」
「君は悪くないよ。悪いのはだましたカラスの方だよ」
頭の切れるカカシは力の強いカカシの肩をたたいて慰めてあげます。
「でも、でもよ俺の腹の虫がおさまらねえんだ。何か、何か俺に償いをさせてくれよ」
「うん、わかったよ。僕に任せてよ。」
頭の切れるカカシは必死に頭をふりしぼって何かカラスをこらしめる方法を考えます。
うーん、あーでもない。こーでもない。
「そうだ、これなら!」
それからまた夜が来ました。
何にも知らないカラスは今日もスイカにありつけると思ってのんきにやってきます。
「やあかかしさん今日は金を二つもってきたんだ。よかったらスイカを二つ分けてくれないかい?」
「ああそれならちょうどいい。今日は大きなスイカを用意したんだ。これは中も果汁がたっぷり詰まっていておいしいに違いない」
カラスはいつもより大きめなスイカを見て驚きました。
カカシが言うようにこれはおいしいに違いない。
カラスはいつの間にか出ていたよだれを手でぬぐいます。
「いいよいいよ。それと金二つを交換しよう。さあ早く早く」
「まあそうせかすなよ。ほらよ」
力の強いカカシは大きなスイカをカラスに渡しました。
「こりゃ重い。こんなに重いと持っていけないよ」
「ならここで少し食べていけばいい。そうすれば軽くなるだろ?」
「それは名案だ!」
カラスはスイカにくちばしをあてます。
あれ? おかしいです。
かたすぎて皮をつらぬけないのです。
「そりゃしっかり中が詰まっているからな。もっと勢いよくつつかねえとだめだよ」
「そうか。もっと勢いよくだね」
カラスはゆっくりと空へ羽ばたいていき、勢いよく降下します。
そしてそのままスイカへと……………。
「い、いたああぁぁぁぁぁーーーい」
カラスの悲鳴が響き渡ります。
「ははは、そりゃそうさこれはスイカじゃねえからな」
力の強いカカシは高らかに笑います。
「そ、そんなこれはいったい」
「それは丸い石だよ」
そっと近づいてきた頭の切れるカカシが言いました。
「ああそうか。そういうことなんだね。もうこんなところ二度とくるもんか!!」
それ以来くちばしのかけたカラスが畑に現れることはなく、畑は荒らされることもなくなりました。
そこには優秀なカカシが二人いたのです。一人はすっごく頭が切れるが力はそんなにないカカシ。もう一人はすっごく力はあるが頭はそんなによくないカカシでした。
二人は毎日自分らの足りない部分を補いながらカラスを退治していたのです。
そんな優秀なカカシたちが毎日畑を守っているのですからカラスはお手上げです。
でもカラスだって生きています。毎日何かを食べなければ死んでしまいます。それにここで作られているスイカはとても大きくて甘い果汁がたっぷり詰まったことでとても有名でした。あるカラスはどうしてもスイカが食べたくてあることを思いつきました。
「ねえねえカカシさん。僕の話を聞いてくれないかい?」
まだ周りはとても暗い中、あるカラスは力の強いカカシに頭の切れる方のカカシにばれないようにこっそりと話しかけました。
「おうなんだい。わざわざ倒されに来たのかい。まったく物好きなものだ」
力の強いカカシはカラスに見せつけるように指をぽきぽきと鳴らします。
でもカラスは落ち着いて首をよこにふりました。
「違うよ。僕の話を聞いてほしいんだ。今日はスイカがほしいわけじゃないよ。君にとって悪い話じゃないんだ。話を聞いてくれるかい?」
「そうかい。なら話してみろ」
「僕に毎日少しだけでいいからスイカを分けてほしいんだ」
「バカ言ってんじゃねえ」
すぐに力の強いカカシは言います。
「まあまあ話は最後まで聞いて。僕に毎日スイカをくれるなら君にこのきれいな石をあげるよ」
「なんだいこれは」
きれいな石を受け取った力の強いカカシは疑うように石を見ます。
「それは金っていうんだ。人間たちの間ではそれがすっごい価値を持っているんだ」
もちろんこれは嘘っぱちです。本当は金でもなんでもなくただの石ころです。
ですが頭のよくないカカシはこれを信じてしまいました。
「本当にくれるのかい?」
「もちろんだよ。毎日スイカをくれるのなら毎日金を用意してあげるよ」
「わかったよ。毎日この時間にスイカを用意しておこう。ただこっそりな」
「うん、わかってるよ。じゃあまた明日ね」
カラスはこっそりと森の方へと歩いていきました。
さあさあただの石ころを金と信じ切っている力の強いカカシはとにかく上機嫌です。頭の切れるカカシがいないところでは石ころを宙にかざしたりながめたりしています。
そんなおかしな様子を頭の切れるカカシは、まだおとなしく見ているだけでした。
それから数日が経ちました。
あれから毎日カラスは石ころを運び、力の強いカカシはスイカをカラスに渡しました。
ここにきてようやく頭の切れるカカシはおかしいと思い始めました。
「なんだか最近スイカの数が減っているようなんだ。何か知らないかい?」
「し、知らないなぁ。きっと人さまが収穫しているんじゃねえか」
頭の切れるカカシはいつもと様子がおかしい力の強いカカシをおかしいと思いました。
目が泳いでいるのとなぜだかすっごく汗をかいているのを頭の切れるカカシは見逃しません。
「最近君は石ころを集めているみたいだけどどうしてだい?」
「石ころじゃねえよ! これは金だよ」
「ほう。もしよければ僕に見せてくれないかい?」
「いいぜ。ほらよ」
頭の切れるカカシは数十個ほどの石ころを見てすべてを理解しました。
そしてことの真実をわかりやすく説明してあげました。
すると力の強いカカシは地面に倒れ、とうとう泣き始めてしまいました。
「ああ、俺はなんていうことをしてしまったんだ。人さまに申し訳がたたねえよ」
「君は悪くないよ。悪いのはだましたカラスの方だよ」
頭の切れるカカシは力の強いカカシの肩をたたいて慰めてあげます。
「でも、でもよ俺の腹の虫がおさまらねえんだ。何か、何か俺に償いをさせてくれよ」
「うん、わかったよ。僕に任せてよ。」
頭の切れるカカシは必死に頭をふりしぼって何かカラスをこらしめる方法を考えます。
うーん、あーでもない。こーでもない。
「そうだ、これなら!」
それからまた夜が来ました。
何にも知らないカラスは今日もスイカにありつけると思ってのんきにやってきます。
「やあかかしさん今日は金を二つもってきたんだ。よかったらスイカを二つ分けてくれないかい?」
「ああそれならちょうどいい。今日は大きなスイカを用意したんだ。これは中も果汁がたっぷり詰まっていておいしいに違いない」
カラスはいつもより大きめなスイカを見て驚きました。
カカシが言うようにこれはおいしいに違いない。
カラスはいつの間にか出ていたよだれを手でぬぐいます。
「いいよいいよ。それと金二つを交換しよう。さあ早く早く」
「まあそうせかすなよ。ほらよ」
力の強いカカシは大きなスイカをカラスに渡しました。
「こりゃ重い。こんなに重いと持っていけないよ」
「ならここで少し食べていけばいい。そうすれば軽くなるだろ?」
「それは名案だ!」
カラスはスイカにくちばしをあてます。
あれ? おかしいです。
かたすぎて皮をつらぬけないのです。
「そりゃしっかり中が詰まっているからな。もっと勢いよくつつかねえとだめだよ」
「そうか。もっと勢いよくだね」
カラスはゆっくりと空へ羽ばたいていき、勢いよく降下します。
そしてそのままスイカへと……………。
「い、いたああぁぁぁぁぁーーーい」
カラスの悲鳴が響き渡ります。
「ははは、そりゃそうさこれはスイカじゃねえからな」
力の強いカカシは高らかに笑います。
「そ、そんなこれはいったい」
「それは丸い石だよ」
そっと近づいてきた頭の切れるカカシが言いました。
「ああそうか。そういうことなんだね。もうこんなところ二度とくるもんか!!」
それ以来くちばしのかけたカラスが畑に現れることはなく、畑は荒らされることもなくなりました。
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