スコップ1つで異世界征服

葦元狐雪

文字の大きさ
4 / 75

第4話「門出」

しおりを挟む
  俺は口から涎をダラダラとこぼしながら
 無造作に地面に転がっている、柄の赤い「ハンドスコップ」を見ている。

 「あの、ラルエシェミラしゃん?」

 呂律が回らん。
 自分でも、何を言っているのかわからないが、ラルエシミラは理解してくれたみたいだ。

 「はい! いかがなさいました?」

 「シュコップが出たんでしゅけど? シュコップ」

 「サ行が言えない人ですか?」

 「あなたのしぇーでしょーが!?」

 いつの間にか画用紙に書いた文字を、俺に見せてくる。

 「はい、これ読んでください」

 「ローション」

  腹を抱えながら笑い転げるラルエシミラ。

  それを死んだ目で見る俺。

 「安心してください。その涎は、じきに治ります。そんなことより! ついにあなたの『魂の神器《アルマ・アニマ》』が出ましたよ! ばんざーい!」

 ラルシエミラはあざとく両手を上げてぴょんぴょんとジャンプをする。
 おお、乳が......
 いやいや! そんなことより、口から出てきたこのスコップはなんだ?
 シャベルなら武器として使えたり、穴を簡単に掘れたりできるけど......
 どう見てもこれ、園芸用のスコップなんだが?
 俺ちゃん、お花でも愛でるの?

 そんな心配に胸がいっぱいな戸賀勇希の心を読んだのか
 ラルシエミラは、コホンと咳払いをすると、満面の笑みで話し出す。

 「信じられませんか? これは、あなたの魂の一部であり、潜在能力《ラテンザ・アビリタ》を具現化したものです!」

 「潜在能力《ラテンザ・アビリタ》?」

 「はい! あなたに眠っている力のことです! すなわち......」

  ラルシエミラの言葉を遮り、俺は叫んだ。

 「ちくしょう! つまり、これが俺の持つ才能のしゅべてなんだろ!? こんなちっしゃい、園芸用シュコップじゃねぇかよ!」

  俺はハンドスコップを掴むと、それを地面に突き立てた。

 「ちょっと待たんかい!!!」

 「しゅ?」

 スコップを握る手に走る、重い衝撃。
 ガラスのヒールが、俺の手の上に乗せられている。
 もはや「乗せた」というよりは、「踏みつけた」の方が適切だろう。
 俺は痛みに叫ぶ。

 「何やってるんですか? まだ私がお話をしている最中でしょう?」

 「あのぉ、かわいいお顔がまるで鬼みたいでしゅよ?」

 「ちなみに、あなたの能力は、あなたが『突き刺す』ことで『起動』し、『抜く』ことで『放出』されるのですよ。」

 「なん......だと......?」

 「だから、絶対にそれを引っこ抜かないでくださいね? トガ」

 「は、はい...ってか今呼び捨てにしませんでした!?」

 いつに間にか涎が治ったトガは、恐る恐るスコップから手を離す。
 そういうの普通、最初に言わないの?
 というか、どんな能力なのよそれ。
 めちゃくちゃ気になるわ。

 よし、聞こう。

 「はい! 質問があります!」

 「まだ、私がお話しているでしょう? 聞いてくださいね?」

 「はい」

 聞けなくなったわ。

 「あれはもう使えませんので、これからもう1つ『朱印玉』を飲んでいただきます。特別ですよ?」

 「え!あの苦しみをもう一度!? そいつは勘弁してちょうだい! 頼む!」

 「ズベコベ言わずにさっさと飲む!」

 「オヴォ」

 またしても俺の口に『クッソ赤い玉』が投げ込まれる。
 地獄の苦しみを味わった後、また柄の赤いハンドスコップが出てきた。
 なんでスコップしか出ないの?
 嫌がらせなの?

 ラルシエミラは柔らかな胸を膝に押し当てるようにしゃがみ
 トガに目線を合わせると、こう言った。

 「では、これからトガさんには世界を滅ぼしに行っていただきます!」

 「はい?」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...