スコップ1つで異世界征服

葦元狐雪

文字の大きさ
5 / 75

第5話「エンカウント」

しおりを挟む
 俺は、目をパチクリさせてラルエシミラに問いかける。

「あの、大事なことなのでもう一度言ってくれませんか?」

「では、これからトガさんには世界を滅ぼしに行っていただきます!」

「あ、どうも」

 俺は腕を組み、白い雲に覆われた空を見て考える。
 なんか違うんだよなぁ

 うん、普通さ、『さらわれたお姫様を助けに行きましょう!』 とか、
『凶悪な魔王を打ち倒しに行きましょう!』とかあるじゃない?

 あの娘、さっきなんて言った?

『世界を滅ぼしに行く』とか言ったよな?
 完全に悪役だよね。
ゲームをクリアして変なところに連れてこられたかと思ったら、この仕打ちよ。
あー、ニートに戻りてぇ。

「ピンと来ていないようですので、詳しく説明しますね」

「あ、はい」

 俺がラルエシミラから聞いた話によると、どうやらその世界とは、数あるパラレルワールドのうちの1つである『チート能力者たちによって支配された世界』らしい。

 元々、そこは凶悪な魔王が存在していて、それを打ち倒すためにチート能力もちの最強勇者たちを派遣したところ、逆に、力を持て余した勇者たちが世界を乗っ取ったというわけだ。
なんという本末転倒。目も当てられん。

「と、いうわけで! 勇者たちを根絶やしにしてきてください」

「アホか! できるか、そんなもん!」

「ちなみに、チート勇者たちを根絶やしにした暁には、なんでも1つ願いを叶える義務を贈呈致します!」

「え? 今、『なんでも』って言った? というか『権利』ではなく『義務』なんだ」

「はい! 必ず叶えて頂きます」

「そ、そうか......なら永遠のニート生活を希望しようかなぁ。ずっと遊んで暮らせる夢の生活をよお」

「問題ありませんよ。まあ、気が変わる可能性もありますし、ゆっくりと考えながら勇者たちをぶち殺してきてください。それにしても......」

ラルエシミラは俺の全身ををジロジロと観察し、心配そうな顔で、

「そんな装備で大丈夫ですか?」

「大丈夫だ、問題ない」

 大丈夫じゃないけど、反射的にそう返してしまう。

「もう、そんなわけないでしょう。あっちでは死んでも復活したりしませんからね!」

 その言葉に俺は絶望しました。

 どうせ、死んでも生き返るのが最近の流行りだと思ってたのに.....
 おお.....もう、不安になってきたわ。

「ええ。ですから、私が特別に装備を差し上げちゃいます!」

「マジで!? さっすがラルエシミラさん! やっぱ、スウェット姿じゃ締まらないよな!」

 さあ、さあ! いったいどんな装備をもらえるんだろうな!なんか、ラルエシミラさんがスリットの隙間に手を突っ込んでゴソゴソしてるけど、まぁイイか!
 重厚な鎧かな? それとも、カッコイイ魔法使いのローブかな?

「はい! どうぞ!」

 おお......! こ、これは!

 『学ラン』だ。

 何の変哲も無い真っ黒な学ランである。
 しかも、なぜか第2ボタンだけ付いていない。

「エシミラちゃん、これが装備なの?」

 震え声で俺は言う。

「そうですよ! しかも、モテモテの証である第2ボタンなし仕様です!」

「いらんところに気ぃ回さんでええわ!」

 まさか、こんなところに来て学ランを着ることになるとは.....
 死んだ魚の眼をしている俺に構わず、ラルエシミラは話を進めていく。

「では、これからゲートを繋ぎますからね〜」

 何も無い空中にノックをすると、まるで扉が開くように真っ黒い空間が出現した。

「さ! それでは、いよいよチーターの世界、『モンドモルト』へ行きますよ〜!」

 ラルエシミラは俺の手を掴むと、学ランと一緒に真っ黒な空間に放り込む。

 ちょ、力強くね?
 あなただけで、チーターしばき回せそうなんだけど!?
 扉は抵抗する力を奪い、肉体をどんどん吸い込んでいった。

 暗闇の世界に吸い込まれた俺の意識は、プツリと切れた。



「ハッ! なんだ夢か!」

 言ってみたら夢オチになる気がしたが、そんなことはないようだ。
 周囲は荒れ果て,大地はひび割れ、空は眩しく、太陽が照らしつけていた。
 いつの間にか服装が違う。
 グレーのスウェットから学ランへ。
 仕組みはよくわからないが、来る途中に着替えさせられたようだ。

 周囲に目をこらす。
 草木があまり見当たらず、枯れ草がコロコロと転がっていく。
 あんなもの、映画でしか見たことないぞ。
 そんな視界に入る人らしき影が。
 姿は、どこかで見たことがある格好をしていた。
 そう、確かあれは.....
 十二単《じゅうにひとえ》......?

 「こんにちは」

 突如、
 後ろから女性の声。
 俺は驚き、後ろを振り返る。
 そこには、先ほど見ていた、平安時代から出てきたような姿の女性。
 まさか、一瞬でここまで来たのか?

 「あら、脅かしてもうてスンマセン。私、『十二単牡丹《じゅうにひとえぼたん》 』言います。以後、お見知りおきを」

 十二単牡丹と名乗る人物が、にこやかに手を差し延べている。
 紫色の足元まである髪。
 美しく品のある顔立ち。
 目はぱっちり大きく、瞳は紅い。
 色とりどりの着物を、何枚も重ねて羽織っている。
 それにしても、クッソいい匂いがする。

 なんだか、悪い人ではなさそうだ。
 現に今、俺を起こそうとしてくれてるし......

「あ! これはどうも、え〜っと...... ジュウニヒトエさん?」

 十二単牡丹がクスリと笑う。

「『牡丹』でええですよ。そんな、かしこまらんとって下さい」

 「スンマセン」と言いながら、手を伸ばす。
 白く華奢な手。
 強く握れば、壊れてしまいそうだ。
 指先が、あと少しで、触れる。

「何やってんですか!!!」

 手は、物凄いスピードで遠ざかる。
 襟を掴まれていたため、踏まれたカエルのような声が出た。
 暫く中を滑り、落とされる。
 俺は痛さに尻をさすると、

「いてーな! 何すんだよ!!!」

「『何してる』のはあなたの方です! あの方に触れてないでしょうね!?」

「何だって!?」

 点になった十二単・牡丹が見える。
 顔を上げると、冷や汗をかいたラルエシミラがいた。
 空中に浮かぶ、黒い楕円形の穴から半身だけを出している。
 何が何だかわからない。
 俺はただ、美少女と握手しようとしただけなんだが。

「理由は後で説明します。している暇があれば、の話ですが......」

 ラルエシミラは、一呼吸おいて言う。

「いいですか、あの姿を、よく覚えておいて下さい。あれがこの世界を滅ぼした、最強チート能力者のうちの1人です......!」

 遠くの方で、十二単牡丹がニヤリと笑った気がした。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。  〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜

トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!? 婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。 気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。 美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。 けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。 食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉! 「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」 港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。 気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。 ――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談) *AIと一緒に書いています*

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

エレンディア王国記

火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、 「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。 導かれるように辿り着いたのは、 魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。 王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り―― だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。 「なんとかなるさ。生きてればな」 手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。 教師として、王子として、そして何者かとして。 これは、“教える者”が世界を変えていく物語。

処理中です...