スコップ1つで異世界征服

葦元狐雪

文字の大きさ
13 / 75

第13話「2本杖の女」

しおりを挟む
 湿った肩から銀色の短冊を拾うと、大事そうに胸ポケットへしまい込んだ。
ポケットから少し頭を出した短冊は、雲1つない青空を見ているようである。

俺は腰に手を当て、燦燦 さんさんと照りつける太陽の光を自前のサンバイザーで遮りながら、
悲鳴を上げ、空高くわっしょいされている白いフードの少女を見上げる。

「おーい、大丈夫か〜?」

少女は羞恥により顔を紅潮させながら、

「大丈夫な訳ないだろう! お、下ろせください!」

「ん〜? 口当てで声がこもってよく聞こえないなあ〜?」

「......ぷはあ! これで聞こえるでしょう! はやく助けろくださいってば!」

ソラマメ色の口当てを顎までずり下げ、救助を請うような言葉を大声で叫ぶ。
しかしなんだねあの言い方は。
なめているのかね? ちょいと自分の置かれている状況がわかっていないようだな。
教えてやらねば。

「いいのか? そんな頼み方で。その高さから落ちたらたぶん死ぬぞ〜」

実際、死ぬと思う。マジで。
思ったより高々と噴射した水の柱は、およそ15メートルはある。
これはマンションの五階から落ちるようなものであり、硬い地面に叩きつけられれば、ひとたまりもないだろう。
まあ、いざとなりゃ受け止めてやろうと考えているから大丈夫だ。
目の前で落下死とか勘弁してほしいからな。

「く......ださい......」

「え? なんだって?」

「けて......ください......」

俺は耳に手を当て、自身の持ち得る最大の煽り顔で、

「な〜に〜?」

「「 助けてください!! お願いしますぅー!! 」」

プライドをかなぐり捨てて言い放ったと同時に、水柱は形を保てなくなり、空中で霧散し、
白いフードの少女を空中に置き去りにした。

「きゃあああああああ」

痩せた白い背中は地に向かい、加速しながら落ちていく。
俺はふと思った。
あいつ、飛行石とか持ってないかな。

「よし来い! 受け止めてやる!」

だんだんと悲鳴が近づいてくる。
俺は両手を広げ、キャッチの体制をとりつつ、影の真下に移動する。

「シータ!」

腕にズンとした重さを感じ、足は地にめり込む。
体全体でなんとか落下による衝撃を受け止めてやる。

「シータ、おも......」

白いフードの少女は俺の胸板をど突きながら、

「誰が重いか!!」

「おいおい、暴れるなよ! 今下ろしてやるからおとなしくしてくれ、シータ」

「さっきからシータってなんなんだ! 私の名前は『パンパカーナ・パスティージュ・パンナコッタ』! 覚えておきなさいよ!」

ドヤ顔で指をビシッと差して、決め台詞のように言われたので、
なんだかムカついた俺はつい、手を離してしまった。

「痛い!」

ビチャっという音がして、パンパカーナの体は、びしょ濡れのベットへ仰向けに寝かされた。
さて、こいつが何者か聞き出さなくては。
チート勇者の一味かと思ったが、それにしては弱すぎるような......
それに奴ら独特の威圧感というか、独特の雰囲気を感じない。
ということは、もしかして。

「パンパカーナだっけ。もしかして2本杖 ドゥーエ・カンナ使いの女ってお前のことか?」

パンパカーナは仰向けのまま目を伏せ、口許をフッと緩めると、

「ふん。1本しか杖を見せていないのに、よく私が2本杖ドゥーエ・カンナ 使いの女だとわかったな! 褒めてやろう!」

俺は無言でスコップを上に掲げてみせると、パンパカーナは慌てふためき、

「いや、うそうそ! ごめんなさい調子に乗りましたもうやめてください」

「今度はこっちが質問だ。どうして俺を襲ったりしたんだよ」

「襲うつもりはなかった。その証拠に、お前を賊から助けてあげたでしょう?
ほら、無法の街バンダで。というより、むしろ襲ってきたのはお前の方ではないか!
それと、嘘をついたでしょう! あれはなぜだ」

逆に質問されてしまった。
なぜかと聞かれると、正直に色々話すとマーレの時のように地雷を踏んでしまわないかという、経験則からくる不安があったからだ。
俺は謝辞と言い訳の言葉を慎重に選びながらパンパカーナに伝える。

「あの時は助かったよ、正直。ありがとう。嘘をついたのは仕方なかったんだよ、
てっきり、スキンヘッドの仲間が追いかけてきたのかと思って、なんとか状況を打破しようと必死だったんだ」

「そうだったのか。では改めて聞く、お前は何者だ?」

ここで焦ってはいけない。
まずは相手の情報を把握してから、それからだ。

「待て。答える前に教えてくれ、パンパカーナ。お前は俺の敵なのか、味方なのか」

「味方......かもしれない」

「はい?」

「私はとある任務を遂行するために仲間を探している。そのためにお前をスカウトしようとしたのだが、
声をかけようとした途端、賊にさらわれてしまうわ、目を離した隙に逃げるわ、終いにスカウトをしようとした相手に反撃され、辱めを受けるという始末!」

あれは仲間に誘っていたつもりなのか。
しかし、タイミングが悪すぎるうえに不器用すぎる!
もっとこう......あるだろ、上手な誘い方とかさ。
いきなり「動くな」と言われて背後に立たれたら誰だって警戒するわ。

「さあ、はやく答えて! はやく! 教えてよ! さあ!」

こいつはどうしてこんな無様な格好で、そんな強気な発言ができるのかと思いながら、
俺は1番注意しなければならない質問をする。

「最後に、これだけはハッキリさせておいてくれ。それからだ。その杖のことと、チート勇者に関して何かしらの強い憎悪を持っていないか?」

「この杖はサント・アルベロ製の『魂の神器アルマ・アニマ 』。
そして私はチート勇者に憎悪などないし、むしろ憧憬さえしているよ!
私はチート勇者のなりそこないだからね! さあ、こちらの情報は十分開示したし、
敵対意識がないことも明白になったわけだ! だからお願いします教えてください。
あと、そろそろスコップしまってください。私、先端恐怖症だから」

「ちょっと待って。今なんて言った?」

「私、先端恐怖症だから」

「いや、そこじゃない。最初の方」

「これは魂の神器アルマ・アニマ で、私がチート勇者のなりそこないってところ?」

頭が痛い。
なんてことだ。また新しい疑問が生まれてしまった。
それに、魂の神器アルマ・アニマ を持っているということは......

「あのお、もしや『ラルエシミラ・ラルシエミラ』ってお姉さんをご存知?」

「ええ、もちろん。なんであそこにいたの?」

ああ、頭が痛い。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...