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第14話「パンパカーナ」
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「だから本当に驚いたんだ。あれ以来、ラルエシミラには会ってないからね」
パンパカーナは、なめらかな横髪を指にくるくると巻きつけながら言う。
おそらく、あれ以来とはアンダーグラウンドでラルエシミラに朱印玉を飲まされたことだろうと予想できた。
こいつも同じ苦しみを味わったのかと思うと、なんだか親近感のような情が湧いてくる。
俺はパンパカーナの肩を何度か叩いて、
「うん、そうか、辛かったよな。よく頑張ったな、うん」
と俺は涙目でそう言った。
「な、なんでちょっと泣いているんだ......あ、そうか。お前もアレを飲んだのね」
「ああ。ちなみに俺は2回もアレを飲まされたわ。そんで、パンパカーナもあのゲームをクリアしたからここに連れて来られたのか?」
パンパカーナは少し考える様子で、
「ゲーム? いや、私は父と射撃場にてライフルで的を撃っていたのだけど、
突然、体が動かなくなったと思ったら目の前が真っ暗になり、気づけば周囲の景色は全く違うものになっていたというわけだ」
(なんだ、人によって違うのか。)
「それで、私はここへ来てから勇者たちを追ったのだけど、
その時は既に勇者たちが魔王を打ち倒してしまった直後だったらしく、役目を失った私はしばらく放浪としていた」
「ということは、パンパカーナは願いを叶える条件が魔王を討伐することになっているのか」
「そう。しかし魔王なき今、おそらく私の宿願成就は不可能。......そして魔王討伐後、しばらくしてから、
世界のあちらこちらで異形の怪物が発生したという報告が相次ぎ、さらに頼みの綱であった勇者たちは各国の王を引きずり降ろし、
彼らが成り代わって国土、人民を統治した。だが、中には傍若無人な振る舞いをする者も、国を顧みずに放浪をする者もいるの」
パンパカーナはフーッと長い溜息を洩らし、
「結果的には、魔王に支配されていた時代となんら変わらないわね」
「聞いていると、パンパカーナが勇者たちに対して憧憬を抱く理由がわからないんだが。
確かに、魔王を打ち倒したことは賞賛に値されることかもしれないけど、ただ『魔王を倒すこと』、それだけが目的になっていたために起きた悲劇だ」
俺は胸ポケットからラルエシミラを取り出すと、指で挟み、ヒラヒラと振ってやる。
「とても尊敬に値する人物とは言い難いわな。こいつも勇者も無計画すぎる」
「憧れているのは単純に、彼らの戦闘力に対してだよ。誰も敵わないし、逆らえない。
この世の頂点に君臨する、その圧倒的強さに心を惹かれたのだ。ただ、それだけだよ」
パンパカーナは微笑し、「それに」と続けてこう言った。
「このご時世、流れの傭兵としてやっていくには少々厳しいのでね。いつ魔傑に殺されてもおかしくないし、任務を達成するとなると1人では厳しい。
金を稼ごうにも、その辺の低級クエストでは宿賃にもならない。そこで、改めて相談があるのだけど......」
俺は唇を噛んで、こちらを不安そうに見上げる少女に手を差し出し、
「しょうがないな。特別に永遠なるニート生活の夢を叶えるための礎にしてやるよ。ありがたく思えよ」
「お前......そういえば、名前を聞いていなかったな。なんという?」
「俺か? 戸賀勇希だ。名前でも苗字でも、好きな方で呼んでくれたまえよ」
パンパカーナは俺の親指を握り、満面の笑みでこう言った。
「爆ぜろ、腐れニート」
パンパカーナは、なめらかな横髪を指にくるくると巻きつけながら言う。
おそらく、あれ以来とはアンダーグラウンドでラルエシミラに朱印玉を飲まされたことだろうと予想できた。
こいつも同じ苦しみを味わったのかと思うと、なんだか親近感のような情が湧いてくる。
俺はパンパカーナの肩を何度か叩いて、
「うん、そうか、辛かったよな。よく頑張ったな、うん」
と俺は涙目でそう言った。
「な、なんでちょっと泣いているんだ......あ、そうか。お前もアレを飲んだのね」
「ああ。ちなみに俺は2回もアレを飲まされたわ。そんで、パンパカーナもあのゲームをクリアしたからここに連れて来られたのか?」
パンパカーナは少し考える様子で、
「ゲーム? いや、私は父と射撃場にてライフルで的を撃っていたのだけど、
突然、体が動かなくなったと思ったら目の前が真っ暗になり、気づけば周囲の景色は全く違うものになっていたというわけだ」
(なんだ、人によって違うのか。)
「それで、私はここへ来てから勇者たちを追ったのだけど、
その時は既に勇者たちが魔王を打ち倒してしまった直後だったらしく、役目を失った私はしばらく放浪としていた」
「ということは、パンパカーナは願いを叶える条件が魔王を討伐することになっているのか」
「そう。しかし魔王なき今、おそらく私の宿願成就は不可能。......そして魔王討伐後、しばらくしてから、
世界のあちらこちらで異形の怪物が発生したという報告が相次ぎ、さらに頼みの綱であった勇者たちは各国の王を引きずり降ろし、
彼らが成り代わって国土、人民を統治した。だが、中には傍若無人な振る舞いをする者も、国を顧みずに放浪をする者もいるの」
パンパカーナはフーッと長い溜息を洩らし、
「結果的には、魔王に支配されていた時代となんら変わらないわね」
「聞いていると、パンパカーナが勇者たちに対して憧憬を抱く理由がわからないんだが。
確かに、魔王を打ち倒したことは賞賛に値されることかもしれないけど、ただ『魔王を倒すこと』、それだけが目的になっていたために起きた悲劇だ」
俺は胸ポケットからラルエシミラを取り出すと、指で挟み、ヒラヒラと振ってやる。
「とても尊敬に値する人物とは言い難いわな。こいつも勇者も無計画すぎる」
「憧れているのは単純に、彼らの戦闘力に対してだよ。誰も敵わないし、逆らえない。
この世の頂点に君臨する、その圧倒的強さに心を惹かれたのだ。ただ、それだけだよ」
パンパカーナは微笑し、「それに」と続けてこう言った。
「このご時世、流れの傭兵としてやっていくには少々厳しいのでね。いつ魔傑に殺されてもおかしくないし、任務を達成するとなると1人では厳しい。
金を稼ごうにも、その辺の低級クエストでは宿賃にもならない。そこで、改めて相談があるのだけど......」
俺は唇を噛んで、こちらを不安そうに見上げる少女に手を差し出し、
「しょうがないな。特別に永遠なるニート生活の夢を叶えるための礎にしてやるよ。ありがたく思えよ」
「お前......そういえば、名前を聞いていなかったな。なんという?」
「俺か? 戸賀勇希だ。名前でも苗字でも、好きな方で呼んでくれたまえよ」
パンパカーナは俺の親指を握り、満面の笑みでこう言った。
「爆ぜろ、腐れニート」
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