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2014年:夢は大きく
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「由乃ちゃん待ってよお」
「芽留ちゃん遅――い。置いてっちゃうも――ん」
小学校一年生の三崎由乃は、クラスでも一番足が早い。同い年の永田芽留が、息を切らせながら由乃を追いかけた。
子供達の後ろから、二人の母親が芽留よりも更に息を弾ませながら追いかける。
「二人とも待ちなさい」
「そうよ、荷物をママ達に持たせておいて」
母親達はどちらもキャリーバッグを引いていた。バッグの中には、厚手のタイツや靴下、練習着の他、一番大事なスケート靴が入っている。
由乃も芽留も、幼稚園の頃からフィギュアスケートを習っていた。
二人が急ぐその先に、練習場所であるスケートリンクと、コーチが待っている。
二人の夢は、もちろんオリンピック! そして金メダル!
知らない人が聞いたら、大きすぎる夢を笑うかも知れない。
とはいえ、同じ市内にある別のスケートクラブからは実際にオリンピックメダリストを何人か輩出している。
オリンピックが身近に感じられる環境の中、それは二人にとって遠い夢ではなかった。
冬になると、テレビでよくフィギュアスケートの試合が中継される。
テレビの地上波で放送されるのは、ほとんどが国際試合で上位ランクの試合だ。
その中でも公共放送局が主催するN杯出場は、二人にとってオリンピックの前段階の目標の一つである。
毎年国内で開催される唯一の国際試合であり、公共放送局が主催するN杯は、日本人のフィギュアスケート選手なら皆、出場したいと思う大会だ。
N杯に出場出来る選手は、国内でもトップクラス。
当然、世界選手権やオリンピック出場に近い位置にいる選手たちとなる。
「まずはオリンピックの前にN杯出場だね!」
「うん! テレビにも出たいよね」
「もう。N杯なんて言う前に、まずはさ来年からのノービスでしょう? それと夏の合宿参加。目の前の目標からコツコツとね」
大きな夢を語る二人の後ろから、コーチが苦笑しながら声を掛ける。
そうは言うけど、幼い二人に『目標は大きくオリンピック』とけしかけたのは、誰あろうこの太田万奈コーチだ。
コーチ自身、現役の頃は女子シングルの選手として活躍し、二人が目標とするN杯にも出場したことがある。
「と言っても、たったの一回だけどね」
そうコーチは笑って言うが、彼女に習っている生徒たちは憧れのまなざしを向けている。由乃と芽留も同様だ。
地域で開催される大会ならば、由乃たちのような小さいスケーターたちが参加できる試合もあるにはあるが、スケート連盟が主催する全国区の大会に参加出来るのは、九歳以上のノービスクラスからである。
九歳で「ノービスB」に上がった後は、十一歳から「ノービスA」、十三歳以上の「ジュニア」、そして十五歳以上から資格が与えられる「シニア」と、年齢によってクラスが分けられている。
これは日本だけのルールではなく、国際スケート連盟で決められた分け方だ。
一番下の「ノービスB」ですら、七歳の由乃たちにとってはお兄さんやお姉さんの世界で、まだまだ先のことに思える。
だがそれだけに、二人はむしろ怖いものなしだった。
「私、ノービスになったら、絶対優勝する!」
「ええ――、芽留も優勝したい!」
「じゃあ、一緒に優勝しよう!」
「うん!」
そんな二人の後ろ姿を、コーチと母親たちは笑顔で見守っていた。
「芽留ちゃん遅――い。置いてっちゃうも――ん」
小学校一年生の三崎由乃は、クラスでも一番足が早い。同い年の永田芽留が、息を切らせながら由乃を追いかけた。
子供達の後ろから、二人の母親が芽留よりも更に息を弾ませながら追いかける。
「二人とも待ちなさい」
「そうよ、荷物をママ達に持たせておいて」
母親達はどちらもキャリーバッグを引いていた。バッグの中には、厚手のタイツや靴下、練習着の他、一番大事なスケート靴が入っている。
由乃も芽留も、幼稚園の頃からフィギュアスケートを習っていた。
二人が急ぐその先に、練習場所であるスケートリンクと、コーチが待っている。
二人の夢は、もちろんオリンピック! そして金メダル!
知らない人が聞いたら、大きすぎる夢を笑うかも知れない。
とはいえ、同じ市内にある別のスケートクラブからは実際にオリンピックメダリストを何人か輩出している。
オリンピックが身近に感じられる環境の中、それは二人にとって遠い夢ではなかった。
冬になると、テレビでよくフィギュアスケートの試合が中継される。
テレビの地上波で放送されるのは、ほとんどが国際試合で上位ランクの試合だ。
その中でも公共放送局が主催するN杯出場は、二人にとってオリンピックの前段階の目標の一つである。
毎年国内で開催される唯一の国際試合であり、公共放送局が主催するN杯は、日本人のフィギュアスケート選手なら皆、出場したいと思う大会だ。
N杯に出場出来る選手は、国内でもトップクラス。
当然、世界選手権やオリンピック出場に近い位置にいる選手たちとなる。
「まずはオリンピックの前にN杯出場だね!」
「うん! テレビにも出たいよね」
「もう。N杯なんて言う前に、まずはさ来年からのノービスでしょう? それと夏の合宿参加。目の前の目標からコツコツとね」
大きな夢を語る二人の後ろから、コーチが苦笑しながら声を掛ける。
そうは言うけど、幼い二人に『目標は大きくオリンピック』とけしかけたのは、誰あろうこの太田万奈コーチだ。
コーチ自身、現役の頃は女子シングルの選手として活躍し、二人が目標とするN杯にも出場したことがある。
「と言っても、たったの一回だけどね」
そうコーチは笑って言うが、彼女に習っている生徒たちは憧れのまなざしを向けている。由乃と芽留も同様だ。
地域で開催される大会ならば、由乃たちのような小さいスケーターたちが参加できる試合もあるにはあるが、スケート連盟が主催する全国区の大会に参加出来るのは、九歳以上のノービスクラスからである。
九歳で「ノービスB」に上がった後は、十一歳から「ノービスA」、十三歳以上の「ジュニア」、そして十五歳以上から資格が与えられる「シニア」と、年齢によってクラスが分けられている。
これは日本だけのルールではなく、国際スケート連盟で決められた分け方だ。
一番下の「ノービスB」ですら、七歳の由乃たちにとってはお兄さんやお姉さんの世界で、まだまだ先のことに思える。
だがそれだけに、二人はむしろ怖いものなしだった。
「私、ノービスになったら、絶対優勝する!」
「ええ――、芽留も優勝したい!」
「じゃあ、一緒に優勝しよう!」
「うん!」
そんな二人の後ろ姿を、コーチと母親たちは笑顔で見守っていた。
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