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第三章 BL小説の存在、世に知られる
085 公爵令嬢の天国と地獄
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その年の夏休みは、嵐の前の静けさのような日々であった。
シルヴィアは実家に帰り、三日ほど滞在したのちランズダウン家に戻った。
念の為、自室のクローゼットを調べたところ、曾祖母から伝えられた蔵書は全部そこにあった。
一旦胸をなでおろしたものの、なんとなく引っ掛かりを感じる。
(以前置いたときと、本の位置が違っているような気が……)
とはいえ、ランズダウン家に仕えるようになってから数年が経っているのだ。
それまで帰省したのは今回を含めて、たったの二回。
本をしまったときの場所など、はっきり憶えていなくて当然である。
兄弟たちはシルヴィアが教わった術には興味もなく、むしろ馬鹿にしているような態度だったので、つい軽いセキュリティーにしてしまったことが、今更ながらに悔やまれた。
念には念を入れておくべきだったと思ったが、今更言っても遅い。
とりあえず、使われたら危険な術が書かれた本だけ持ち出し、家を出た。
今頃メリーローズたちは、例の別荘に行っているはずだ。
アルフレッドがあの別荘を気に入ってしまったらしく、また行きたいと持ち掛けてきたようである。
(私のいない隙に、お嬢様が羽目を外されなければよいのだが……)
シルヴィアはランズダウン家の別荘へと急いだ。
アルフレッドとメルヴィン、ついでに言うとアーネストは高等学院の四年生、最終学年である。
前世である日本の大学四年といえば就活に勤しんでいる頃であったが、卒業後の彼らにはすべき仕事が決まっていた。
アルフレッドは、王族の一人として将来兄を補佐できるよう、既にいくつか公務をこなし始めているし、メルヴィンは公爵家の後継者として領地経営の他、王家を支える為の業務を父から教わり始めている。
ついでにいうとアーネストも、アシュビー伯爵家の後継者になる勉強の為、夏休みはヘザーの実家に行っていると聞いた。
王族のアルフレッドと、貴族のメルヴィン、アーネストではこなす仕事にも違いがあるが、公爵家のメルヴィン、貧乏伯爵家のアーネストの間にも大きな違いがある。
ランズダウン公爵家は広くて肥沃な領地を持ち、領内の治水工事なども完備されているので、安定した収益がある。
そこで領地経営に関しては大きな問題がなければそれでよし、むしろ国政に関わって王室を支える方に力を入れていた。
一方アシュビー伯爵家が後継ぎとなるアーネストに求めるのは、領地経営の充実だ。
結納金をたんまりもらっても、それだけではいつかはなくなってしまう。
大事なのは安定して継続した収入の増加なのだ。
そんなわけで学生最後の夏休みを、アーネストはアシュビー家でのスパルタ教育に充てられているそうだ。
シルヴィアは実家に帰り、三日ほど滞在したのちランズダウン家に戻った。
念の為、自室のクローゼットを調べたところ、曾祖母から伝えられた蔵書は全部そこにあった。
一旦胸をなでおろしたものの、なんとなく引っ掛かりを感じる。
(以前置いたときと、本の位置が違っているような気が……)
とはいえ、ランズダウン家に仕えるようになってから数年が経っているのだ。
それまで帰省したのは今回を含めて、たったの二回。
本をしまったときの場所など、はっきり憶えていなくて当然である。
兄弟たちはシルヴィアが教わった術には興味もなく、むしろ馬鹿にしているような態度だったので、つい軽いセキュリティーにしてしまったことが、今更ながらに悔やまれた。
念には念を入れておくべきだったと思ったが、今更言っても遅い。
とりあえず、使われたら危険な術が書かれた本だけ持ち出し、家を出た。
今頃メリーローズたちは、例の別荘に行っているはずだ。
アルフレッドがあの別荘を気に入ってしまったらしく、また行きたいと持ち掛けてきたようである。
(私のいない隙に、お嬢様が羽目を外されなければよいのだが……)
シルヴィアはランズダウン家の別荘へと急いだ。
アルフレッドとメルヴィン、ついでに言うとアーネストは高等学院の四年生、最終学年である。
前世である日本の大学四年といえば就活に勤しんでいる頃であったが、卒業後の彼らにはすべき仕事が決まっていた。
アルフレッドは、王族の一人として将来兄を補佐できるよう、既にいくつか公務をこなし始めているし、メルヴィンは公爵家の後継者として領地経営の他、王家を支える為の業務を父から教わり始めている。
ついでにいうとアーネストも、アシュビー伯爵家の後継者になる勉強の為、夏休みはヘザーの実家に行っていると聞いた。
王族のアルフレッドと、貴族のメルヴィン、アーネストではこなす仕事にも違いがあるが、公爵家のメルヴィン、貧乏伯爵家のアーネストの間にも大きな違いがある。
ランズダウン公爵家は広くて肥沃な領地を持ち、領内の治水工事なども完備されているので、安定した収益がある。
そこで領地経営に関しては大きな問題がなければそれでよし、むしろ国政に関わって王室を支える方に力を入れていた。
一方アシュビー伯爵家が後継ぎとなるアーネストに求めるのは、領地経営の充実だ。
結納金をたんまりもらっても、それだけではいつかはなくなってしまう。
大事なのは安定して継続した収入の増加なのだ。
そんなわけで学生最後の夏休みを、アーネストはアシュビー家でのスパルタ教育に充てられているそうだ。
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