悪役令嬢はBL作家「処刑覚悟で萌えますわ!」~婚約者の王子様ごめんなさい、あなたをネタに小説書いてます~

すえつむ はな

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第三章 BL小説の存在、世に知られる

105 公爵令嬢、友と力を合わせる

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「ミュリエル・ルーカン嬢」

 大司教が足を止めて、先頭を進むミュリエルに声を掛けた。

「この辺りで、少し、そなたの持つ奇跡の力を見せてはいただけないかな?」

 余裕を取り戻した大司教の声には、やはり『魅了』の魔力が込められている。
 その声が届く範囲にいる学生たちの視線が、一斉に大司教に集まった。

「間違いない。やはり大司教様だ。なぜここに?」

「あの二年生の女子に、何か仰っているぞ。『奇跡の力』? 奇跡の力って、何だ?」

「わからないけど……なんていい声なんだ……素晴らしい」

 学生たちの顔つきが、目に見えて変わってきた。
 皆、うっとりと大司教を見つめている。
 とはいえ、多少距離があるので、彼らの精神にかけられたフックは弱そうだ。

(むしろ、わたくしたちから目を逸らせてくれるので、やりやすくなる)

 シルヴィアはそう判断し、注意深くなりゆきを見守った。

 大司教から声を掛けられたミュリエルはゆるゆると振り返って答える。

「はい。……大司教様」

「そうじゃな。……例えば、この噴水の水を自在に操り、後ろの木にシャワーのように降らせ、水が当たった枝に花を咲かせる……というのは、どうだね?」

 大司教が、やけに具体的な『奇跡』の指示を出した。

物質を操り、植物の生育を促す枝に花を咲かせる……か。中級から上級の魔術だな。衆人環視の中、集中力ががれがちな環境でそんなことが行えるとは、やはりそれなりの力を持ち、鍛錬を積んだ者だな、あの男は)

 シルヴィアは、そうアンガスの力量を推し量る。

 一方、大司教の言葉を聞いて、何も知らない学生たちが、どよめいた。

「聞いたか? あの二年生、奇跡を起こすらしいぞ」

「噴水の水を操って、花を咲かす? そんなことが、まさか……」

「いや、大司教様が仰ったことなら、間違いない!」

 しかし、その肝心な『奇跡の力』を起こすアンガスには、まだ迷いがあった。

 ――あの娘と、お近づきになりたい
 ――大司教様に逆らってはいけない
 ――生意気なロナルドの言いなりになんて、なりたくない
 ――しかし、あの娘はなんて愛らしいのだ

 迷った挙げ句、ミュリエルと大司教を天秤にかけ、そこにロナルドというマイナス要素が加わり、大司教の命に従うことを選ぶ。

 操られているミュリエルの腕が噴水を指し、ゆっくりと上方に向けられた。
 アンガスはその動きに合わせて、噴水の水が通常より高く噴き出すよう、式神に命じる。

「おお……! 本当に噴水の水が変化したぞ」

「奇跡が起きるのか?」

 学生たちが騒ぎ出した。
 シルヴィアもまた、水の動きを止めようと魔力を込める。

 アンガスの魔力に、邪魔が入った。
 が、シルヴィアではない。
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