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第1章

2 質問と交渉

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「な!何たる無礼!!」

陛下に許可を取ったはずがおっさんが騒ぎ始める。

「おい、ブェーレン卿。黙れ」

「はっ」



「なんだ?申してみよ」

ようやく話せる環境が整う。
ちーはずっと周りを見渡し俺の手を握っている。あぁ、今日もかわいいなぁ。

ひとまず必要な事を確認する。

「私達はおそらく、何かの間違いで呼ばれてしまっただけなのでしょう。元の世界に戻るということは可能でしょうか?」

「うむ、できん。呼び出すのはできても戻すことは不可能だ。お前達はこのままこちらの世界で生きてゆくしかあるまい。」

勝手に呼び出しといて、しょうが無いよねっみたいな感じで流してんじゃねぇよ。

「この国には魔法が存在してますか?」

「うむ。そうだが?」

この世界はかなりファンタジーな世界のようだ。前の学力主義とはかなりの違いがでるだろう。

「そうですか…
そこで倒れている奴が勇者で私達は何の変哲もない一般人です。」

あくまでもそいつが勇者だと強調する。

「私達はなんの力も金も住む場所もないのですが、このまま外で野垂れ死ねばいいのでしょうか?」

ちーが俺の手を握るのを強める。ごめん、結構残酷的なこと言ってるけど、これはこの陛下の器を知るためのお話だから。
野垂れ死になんか絶対させないから。

「ふむ、そうさな。お前達も今日よりこの国の民。それにお前達が勇者でなくともこれから何らかの力に目覚めたりするかもしれぬな。よかろう。我が保護してやる。」

「………どんな条件でしょうか?」

「ほう、お主中々目ざといな。」

こういう人間は対価なしでは動かない。自分の利益があってこそ事を動かすんだ。
そんな人間はどこの世界でも変わらないんだな。

「お前達には家と、月に一定の金と食料、あと使用人も数人やろう。他にも欲しいものがあるなら言え。
そのかわりお前達にはヴィルシーナ学院に通ってもらう。 」

ヴィルシーナ学院?学院ってことは学校か…
なるほど、何か力に目覚めた時にすぐに確かめられる監視施設といったところだろうか。

「わかりました。あ、使用人1人短時間お借りするだけで結構です。金と食料と家だけください。」

「よかろう、手配してやる。」

「ありがとうございます。大変光栄でこざいます。」

「…ありがとうございます」

ちーも一緒にお礼を言う。相手にいい印象をつけとくのも大事だしな。

そのあと来た、執事のような人に案内され俺たちは部屋から出る。


陛下side


「あの、陛下」

おずおずとまたブェーレン卿が話しかけてくる。

「なんだ」

「まだ勇者は倒れたままなのですが…」

「知らぬわ、客間にでもぶち込んでおけ!」

「はっ」

ブェーレン卿が勇者を引きずっていく。

あの茶髪は本当に勇者なんだろうか?
どちらかというと黒髪黒目のあの2人。
何か他の奴らとは違う空気をまとっていた。

あちらではないのか?
まずこの茶髪が目を覚ましてみないとわからない。それにもし茶髪じゃなくても黒髪黒目の奴らを我の保護下。予防線は張っておくべきだな。

ただし、ここで1つ自分の失敗に気づく。

「あやつらの名前、聞いておらぬな…」
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