猫系男子の優雅な生活

ててて

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プロローグ

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「成功だ…!!奇跡だ、聖女様がいらっしゃったぞ!!」

大きな拍手と完成の中、まるで映画のセットのような部屋で起こった出来事はあまりにも一瞬で理解が出来なかった。

大きなホールの中、何人もの人が肩を組んで喜びあっており、まるでなにかの大会で優勝したかのような場面だ。

それをただ呆然と見つめていた。

でも、座り込んだ大理石の床の冷たさは現実味を帯びている。
キョロ、と辺りを見渡すと見知った制服が目に入った。と同じように呆然としていたのは、同じ高校で同じクラスに通う女子生徒、『渡辺凛』だった。彼女は目立つのが好きなのか、派手な容姿を好み、つるむ友達も似た人達が多い。

髪は明るい茶色でパーマをあててるのかいつも巻いてある。目元は愛嬌のあるタレ目だ。

よく言う、一軍女子というやつ。


方や、僕は陰キャも陰キャ。友達すらいないカビのような人間である。

まぁ、少しはするが。


渡辺凛は少しずつ状況が読み取れたのか、ジワジワと頬が赤く…?なっていき、口角が上がっていた。そして周りを見渡し、僕と目が合うと汚物を見たような心底嫌そうな顔をした。



そんな僕らに、仰々しく近づき傅く老人が1人。

お年を召した人に傅かれる居心地の悪さったらない。

「よく、いらっしゃいました、聖女様。ここはバーミリオン王国の王城でございます。私たちは、ここ数年魔物に土地を汚され、飢餓が進んでおります。
この王国を救っていただくため、女神より聖女様のお力をお借りしたいのです。」


……全くもってよくわからない。
これ、映画の話じゃないのか、ゲーム?
こんなこと現実に起きるはずがない。起きてたまるものか。


「……ですが、古の召喚の書物によると聖女様はお1人のはず………どちらが聖女様であるかお心当たりはございますか?」


「…はいっ!私が聖女です。」

渡辺凛が素早く手を挙げた。彼女の頬は高揚からか赤く色づいており、ハキハキと喋る姿はいつもの授業中の姿とは比べ物にならない。


「そ、それはつまり、時の狭間で女神様にお会いしたのでしょうか!!」

他の神官が緊張した面持ちで、聞く。


「女神?……ん~、、会ったかも?ていうか、コイツ、あ、この人はですよ!聖女って女子がなるものでしょ?」


「「「「「え??」」」」」



今完全にコイツって言ってたな。しかも態々言い換えたとなると、ぶりっ子でもするのか?

そんなことを考えてるうちに、何故かバラされ周りは僕の方を見た。

揃いも揃ってすごい顔だ。皆意味がわからないと言った表情である。

まぁ、始めてみればそうかもしれない。
僕は、確かに生物学上は『男』だ。ただ、生きるためにも、『女の子』をしていないと行けない環境だった。


一度も染めたことがない黒髪は真っ直ぐなストレートで、あまり外に出して貰えなかった肌は白い。
別にメイクなんてしてないが、ハッキリした二重に黒い瞳は丸っこい。そして、極みつけはこの制服だ。

学校指定の制服で、本来であれば学ランを着なくてはいけない僕は、女の子指定のセーラー服を着ている。
サイズは少し大きめで、袖を捲らないと手は出ないほど。

身体が大きくならないように、食事の量が調整されていたお陰で、体も女子とそう大差ない。ただ、どう足掻いても骨の細さは女の子に勝てないもので、服で隠している。

そのためか、パッと見は間違いなく女子だろう。
ちなみに、いつも髪の毛は下の位置にツインテールしてる。


言っておくが、僕の趣味ではない。
まぁ、似合うし可愛いなとは分かるが別に趣味じゃない、、はず。
いや、似合うんだよね。自分で言うのもなんだけど、身長は165cmで男にしては低いけど、女子からしたら高めだから、体型もいい感じだし。

おっと、話が逸れた。



「………??本当に男性なのですか?」


「…はい」


老人は酷く混乱していたが、見た目の割には低めの声を聞いて無理やり理解したようだ。
低いって言ってもちょっとハスキーっぽいだけだけど。

「……もしかして、異世界では男もそのような姿をするのが一般的なのでしょうか?」


「………その、」

「いいえ、違います。この人は、かなりの変人で皆から嫌われてるんです。だって、気持ち悪いし」

そう渡辺が言った瞬間、目線の半分に嫌なものが混じった。彼女の言い方も言い方だ。それは間違いなく非友好的である。

僕は彼女になにかした覚えはないが、同郷で同じ状況だと言うのに、仲間意識すら芽生えず、むしろ敵を作ってくれる程には僕のことを嫌っていることが分かった。


そして、『聖女』という役職はほぼ、渡辺凛で決定だろうという判断が下された。もし、間違いにも、万が一にも僕にも可能性があった最悪の場合を考えて、僕は王宮に留まるように告げられた。



そして、恭しく、丁重に手を差し出され立ち上がった渡辺は勝ち誇ったような笑みを僕に向けたのだった。
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