ストーカー達から逃げる場所がない!私は普通の生活が送りたいのに!!

ててて

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父が海外イギリスに赴任することになった。

「ごめんな、詩春しはる。せっかく第1希望の高校に入ったのに。詩春には悪いけど、一緒にイギリスに着いていくか、こっち日本で全寮制の高校に入るかしか選択肢がないんだ。」

母は父についていくという。

「詩春ちゃん、一緒に行かない?詩春ちゃんも中学生の時にイギリスでホームステイしてたことあるし、言葉は通じるじゃない?お母さん、詩春ちゃんが居てくれると安心するなぁ~」


…正直、日本に居たいんだよなぁ……。
から離れられるなら、またイギリスに飛んでもいいんだけど…うーん。


私は頭の中で葛藤していた。
イギリスはいい所だった。どこに行っても音楽があって、街もオシャレで、歩く人達みんな綺麗だ。
イギリスのホストファミリーもすごく良くしてくれて、今でも月に1度は手紙を書く。

ホームステイに行ってからもう3年は経つが、まだ英語は問題なく話せるだろう。

でも。

イギリス…というか、海外全部。

トイレがなぁ…。日本は先進国の中で1番トイレが綺麗だと思う。ビバトイレ最高。
それに、どうもお風呂がいただけない。なぜ、シャワーだけなんだ。身体の疲れが取れないだろ。ホームステイの時もそれだけが不満だった。
私はお風呂が好きなんだ。

「ん~、それともおばあちゃんの家に住む?今の学校からは少し遠くなっちゃうけど、通えなくはないし…。やっぱり、お友達と別れるの寂しいわよね。それに響也くんも辛いだろうし…」

「それは、大丈夫!学校は全然変わっていいから!!うん!!!」

おばあちゃん家から今の学校まで電車で片道2時間はかかる。とてもじゃないが通いたくない。
別れて寂しいと思える友達なんていない。響也のおかげで。

響也とは、野口響也という幼馴染のことだ。
隣の豪邸に住んでいるアイツは、お金持ちのボンボンの上、顔はそこそこいいし、頭もそこそこいい。(そこそこ)
サッカーをしてたから、刈り上げた黒髪にシュッとした顔のライン。身長は170cmと中学生ながらに目立っていた。

そんな奴が、保育園から知らないうちに引っ付いてきた。

それは、小学校低学年まで不思議に思わず一緒にいた。だが、中学年になり少しずつ恋だの愛だのが皆に芽生えたとき、私たちは浮きまくった。

「あいつら付き合ってるぜ!!」

「きゃーっ!!」

と、指を刺されては弄られた。

一緒にいるのが恥ずかしくなった私は少しづつ距離を置くようになった。
なのに、響也は反比例するように逆に引っ付いて来るようになった。

「しーちゃんは俺と一緒にいるの。」


なんでだよ!!!

それは、中学生になっても続いた。
流石に登校も一緒、教室でも一緒、休み時間も一緒、帰るのも一緒となると悪目立ちだった。
それに、アイツは顔がそこそこいい。

だから、一緒にいる私が標的になり同級生の嫉妬やら、先輩からの冷たい視線やら浴びるようになった。

「何あいつ」
「なんか、響也くんの幼馴染らしいよ?」
「はぁ?きも」

私は頑張って逃げてたんだ!!
登下校は諦めた。だって、家隣だよ?アイツ朝イチから家の前で待ってるんだよ??
学校内でも必死に逃げてたのに、「今日は鬼ごっこするの?それともかくれんぼ?」と遊ばれていた。

そんな日々に疲れた私は、中学2年14歳。逃げるようにイギリスへ飛んだ。
とは、行っても夏休みだけの語学留学だが。


日本に帰ってきた頃には、学校で得た傷も薄れ、後は受験だけだ。アイツとは違う高校に行けばいいと、自分を励ましていた。

響也のひっつき虫が酷くなっているとも知らずに。

「…しーちゃん。俺に何か言うことあるよね?」

「…ふぅん。そうやって勝手にどっかに行くんなら俺だって勝手にするよ?」

黙ってホームステイに行ったものだから、その後の響也は酷かった。休日まで付きまとわれ、知らず知らずのうちに私の家で夕飯を食べるなんてこともあったぐらいだ。

私は響也=ストーカーで間違いないと再認識した。

その後、出身中学からでも1人も入ればいいと言われる、難関校への受験に向けて、もう勉強した。

予備校にも通い、毎日が勉強漬け。
勉強しすぎて、響也なんか忘れていたくらいだ。
むしろ忘れるために勉強していたのだが。

そうして、怒涛の受験期間が終わり私は無事合格。

合格発表で自分の受験番号を見つけた時は、喜びのあまり、泣くかと思った。

そして、その隣で

「あ、俺もあった!」

と、聞きなれた声が聞こえたときは、勉強のし過ぎで頭がおかしくなったのかと思ったが

「しーちゃん!これで、高校もいっしよだね!」

幻覚でも無ければ、夢でもなかった。
私はその場に崩れ落ちて、泣いた。

その後のことは、想像できるだろう。

また中学の頃と同じことの繰り返しだ。

私は相も変わらず友達も出来ず、敵ばかりが増えながら、虚無な感情で学校へ通い今年で2年生、5月。


「全寮制の学校でどんなところ?」

お母さんが差し出した春日丘高校と書かれたパンフレットを見てみる。表紙には木々に囲まれた、豪華な校舎が乗っていた。

場所はここから電車で5時間はかかる。
男女別れた寮に、家具家電付きの部屋。
一人一部屋と個室が与えられ、憧れるような写真も乗っていた。そして、一部屋に1つトイレ風呂付き!!しかも寮の屋上には大浴場があるって!?
その他にも学校とは思えないほどに環境が整っている。


「何これ。お金持ちの行く学校じゃない?」

「ん~まぁ、比較的そうかも?政治家の子供とか、資産家の子供が通うような学校だし。」 

「え…?私そんなとこ入れないけど。」

「大丈夫大丈夫!詩春ちゃん、頭いいから編入の奨学金枠でパパっと入れちゃうよ!たぶん!」

あ、全寮制の学校に入れたいけどお金はないのね。


「それで、どうする?お母さんと一緒にお父さんについてイギリス行く?それとも日本に残る?」

「私、日本に残るわ。この学校に通うことにする。」

そうして、春日丘高校へ編入することにした。
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