親友が変わってしまったので、留学したら溺愛されてしまいました。

ててて

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幕開け

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入学式が終わり、各自解散となった。
また明日もオリエンテーションがあり、学校の施設案内や授業の説明がある。そして、明後日から通常授業が始まるのされている。

私はすぐに、エミリーの手を掴むと逃げるように講堂から離れた。
人がいなさそうな、校舎裏へ行くとエミリーと向き直る。

「エミリー!どうして遅れたの!?それに、なんであんなに目立つように入ってきたの!淑女が走って勢いよく扉を開けるだなんて、はしたないじゃない。」

何だか、泣きたくなってしまった。
あぁ、まさかこんな短時間にここまでやらかすなんて。私が着いていながら…母や彼女の両親になんて説明をしたらいいのか。


エミリーは、じーっと私の顔を見つめると今思い出したかのように言った。

「…あぁ、セレシアか。こんなに髪が長かったけ?一瞬誰か分からなかったわ」

そんなことを言われ、私は言葉を無くしてしまった。

「そんなに怒らなくてもいいじゃない…ヒロインは遅れてくるってシナリオなのよ。私だって遅れたくて遅刻したんじゃないわ!仕方なくよ!」

私は彼女が言っていることが半分も理解できなかった。

「……え、貴方エミリーよね?エミリー・バーデルでしょ?私の幼なじみの…」

思わず確かめたくなってしまうほど、彼女に違和感があった。エミリーはこんな話し方をしていただろうか。いつも話し方が柔らかくてとても純粋で…

「セレシア、何を言っているの?こんなに可愛い顔が2人もいるわけないじゃない!あはは」

そう言って、いつもと同じ無邪気な笑顔を見せる。だが、発言は全くいつもとは異なっていた。

私は疲れているのだろうか。
どう見ても、彼女はエミリーだ。幼い頃から一緒に過ごし、彼女の面倒を見ながらも仲良く歳を重ねた幼なじみだ。

だが、今日の彼女は、のようだった。


「今日は、入学式で終わりでしょ?なら、帰ってもいいわよね?」

「…え、えぇ…そうね」

「…?セレシア、なんだか顔色が悪いみたいだわ。早く帰って休んだ方がいいんじゃない?……私も早く帰って攻略対象の情報を思い出さなきゃ」

彼女が最後に行った言葉は耳に入らなかった。
そのまま、門まで歩き別々の馬車に乗って帰宅した。

私は馬車の中でも呆然としており、今日の入学式は疎か、皇太子の祝辞さえ思い出せなかった。

「おかえりなさい、セレシア。入学式はどうだった?」

母はいつも通り、笑顔で迎えてくれた。

「…えぇ……」

私は今日あった事を母に話せなかった。
私だって、何故あんなことになっているのか理解が出来ないと言うのに、なんと説明すればいいのか…

「セレシア…疲れているみたいだね。大丈夫かい?顔色が悪いよ?」

心配そうに顔を覗き込んでくるのは4歳上の兄だ。
兄は去年学園を卒業し、今は伯爵家を継ぐため父と共に領地運営などの勉強をしている。

「…本当だな。セレシア、今日はもう休みなさい。後でメイドに夕食を運ばせよう。」

話さない私を見兼ねた父が優しい提案をしてくれた。私はそれに甘え、部屋へ戻りすぐに制服を脱いでお風呂へ入る。

その後、メイドのアニーによって運ばれた夕食を取ると何も考えないようにしながらすぐに眠った。

やはり疲れていたみたいだ。

とてもよく眠れた。

きっと、彼女は緊張のあまりいつもはしないような行動を取ってしまったのだろう。
きっと、明日には元通りの彼女に戻っているはずだ。だから、今日目立ってしまった分、目立たないように、めをつけられなあように過ごさなくては。


そんな私の考えなど、意味はなかった。






翌日、振り分けられたクラスに入る。
1学年2クラスに分けられ、頭のいい秀才が集まるのがSクラス。平凡なのがAクラスだ。

もちろん、私もエミリーもAクラス。
私は勉強が苦手ではない。寧ろ好きだ。
小さな頃から本が好きで、歴史の本や偉人の本。建国物語などをよく読んでいて、自分ていうのも何だが頭は悪くない。

だから、普通に入学テストを受ければSクラスだった。だけど、エミリーが心配で。
エミリーはあまり勉強が得意ではなかったから、クラスが離れることは明白だった。彼女を1人にしておくのは不安だから、テストでは半分正解、半分わざと間違えAクラスを狙った。

Aクラスは男爵家や子爵家が多く、伯爵家はちらほらといる程度だ。
クラスを見渡して、まだエミリーが来ていないことが分かる。


エミリー、まだ来ていないのね。
まさかまた遅刻なんてしないわよね…何処にいるのかしら

私はカバンを椅子に立てかけると、教室を出た。
それ違う生徒に軽い挨拶をしながら、エミリーを探した。

本当、どこにいるの…

キョロキョロと辺りを見渡すと、後ろから聞いた事があるような声が廊下に響いた。

「もぉ、待ってくださいよぉ!教室まで一緒に行きましょっ!」

甲高い声に、一体何処の常識ない女だと視線を向けるとエミリーだった。

「失礼だが、離してください。そんなに引っ付かれても困りますし、貴方とはクラスが違います。大体、貴族の女性が廊下でそんな大きな声を上げて恥ずかしいとは思わないのですか」

彼は昨日、新入生代表として挨拶をしていた宰相の息子、ニック・エルームだった。
エルーム様は迷惑だというように、抱きつかれた腕を振りほどく。だが、エミリーも負けずと追いかける。

「そんなことを言って、、恥ずかしがらなくてもいいじゃないですかぁ。もう、私は分かってますからね!」


私は頭が痛くなった。
これは早退理由にならないだろうか。

エルーム様はかなり迷惑そうだし、エミリーはそれに気づいていないみたいだ。

「エミリー、何をしているの。」

私はエミリーの前に立ち塞がった。
そして、後ろを振り返り、エルーム様に挨拶を述べる。

「おはようございます…私の友人が迷惑をお掛けしましたようで大変申し訳ございません。彼女は連れていきますので、今日のことは許していただけないでしょうか?」

彼は公爵家の長男だ。
いくら、平等をという学園でも常識として身分では許されないことは多々ある。
男爵家のエミリーが公爵家の長男である、ニックにまとわりつくなど、明らかに問題なのだ。

「…君は?」

「はい、セレシア・ウェルナーと申します」

「ウェルナーといえば、伯爵家ですね。
…いいでしょう。今回は目を瞑ります。ですが、貴方のご友人は学園に通うためのマナーをしっかりと身につけるべきですね。これでは、問題が何度も起こることになるでしょう。」

「…はい、その通りです。…ありがとうございます。失礼します」

そう言って、もう一度最大敬礼のカーテシーをとると、有無を言わさずエミリーの腕を引っ張った。

「ちょ、セレシア離してよ!私、ニック様と仲良くなりたいのに!!」

本当になんて言うことだろうか。
許可もなしに家名ではない方の名を口にするなんて。しかも、こんなに目立つ場所で。

彼女はこんなにも常識無かっただろうか。


私はまた立ちくらみながらも、必死に足を動かしその場から離れた。

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