ドラッグストア「スミヨシ」

竜骨

文字の大きさ
20 / 29

20.変化

しおりを挟む
「……うそだろ」
 碧斗の宿題の内容をみて、碧斗の母親はびっくりした。
「碧斗が勉強してる……」
「……いや、足し算だし。」
 碧斗がやっているのは3桁+3桁の足し算だった。
 国語も、小学1年生から順に始めることになった。
 くらら以外は、みんなここから再スタートだ。
 みんながどこからつまづいているか、教師陣はちゃんと気づいていた。
「2年前に同じことやろうとしたら、暴れて暴れて大変だったじゃないか。」
「……あん時は、まぁ……」
 碧斗もその騒動はしっかり覚えていた。
 あの時はくらら以外の4人で大暴れだった。
 周りは自分の事を考えてくれていたのに、拒否したのは自分達だったのかもしれない。
「なんにしろ、やる気になったのはいい事だ。頑張んな。」
「おう。」
 とは言ったものの……

(やっぱりよく分かんねぇな)
 スミヨシに行く前にちゃちゃっと終わらせようと思ったのだが、
 碧斗は分からなすぎて、すぐに飽きていた。
 ほんとに自分は勉強出来ないんだと、ほんとに分かってしまい、悔しくて泣いた。
 バイトに行くと、りな達の表情も暗かった。やっぱりりな達も出来なかったらしい。
 足し算すら、ほんとに出来ない自分達に、心が暗い。
「士郎。おれ、足し算も出来ない……どうしたらいいんだろう。」
 碧斗はここに来てから、ついつい喋らない士郎に本音を言う習慣がついていた。
「……ぼく、一緒に、やる」
 士郎はほんとに小さな声で言った。碧斗が士郎に喋っても障がい者のままだから、大丈夫だと言った日から、こうして少しづつ喋るようになってきた。
「え?士郎、教えてくれんの?」
 こくん。
 今まで誰に教わっても分からなかったが、ダメ元で教えてもらうことにした。

 士郎先生が授業すること1時間、みんなは目が輝いていた。
「分かる!分かるよ!16だから、ここは6でしょ?!」
「繰り上がって、答えは356だ!」
 みんな、分からない問題が解けて、大興奮だ。
 士郎は喋りすぎて、顔が真っ赤で汗だくだ。
 でも、なんだか、嬉しそうに感じる。
 分かってみたら、みんな簡単だった。でもみんな分かるまでは、簡単じゃなかった。
 みんな、士郎に思いをぶつけた。
 その思いを士郎は丁寧に1つずつほぐしていった。
 ある子はブロックを使って。
 ある子は、1から9の前に0を入れないと分からなかった。
 一人一人分かるポイントが違ったが、みんな分かれば自分で出来るようになった。
 自分で出来るようになったら嬉しくて、みんなどんどん解いていく。
 気づくと、士郎は建物の外に走りに行っていた。
「士郎さん、よっぽど嬉しかったんだなぁ。」
 とスタッフの山本和弘が言っていた。
 嬉しいと走りたくなる気持ちは分かるけど、士郎はほんとに走りに行くんだなと碧斗は思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

処理中です...