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竜骨

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21.嫉妬

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「おはようございます。」
 みんなが足し算が出来るようになった次の日、士郎はマイクを付けて出勤した。
 声が小さい人の為の補助具のひとつだが、士郎は今まで付けたことがなかった。
 梨奈は、彼がマイクを付けて来たのを見て、言った。
「士郎さん、今回の子ども達の件、論文を書きましょう。」
 突然の提案に、士郎のみならず、周りがザワついた。
「私と一緒に書きましょう。子ども達に勉強が教えれなくて、困っている人が見れるように、論文としてネットに載せましょう。知的障害者だからと、自信がない人の為にも、載せましょう。」
 梨奈と士郎のあいだに、スタッフの山本和弘が入る。
「でも、他の人がもう見つけてるかもしれないっすよ。」
 だって、士郎がやれるわけないじゃないか。
「論文っていうのは、色んな形があるの。今回の件は事例研究という形で載せたらいいわ。それに、障害者が支援者となった例っていうのは報告として少ないから、それだけで価値があるわ。」
 梨奈はまっすぐな眼をしている。いつも心地よいその眼が、今日は和弘の心の嫌なところに届いた。
「ぼく。やる。」
 士郎は、梨奈の眼をまっすぐに見て言った。
 和弘は2人のやり取りを見て、胸がざわざわと落ち着かない。
 士郎はどんどんと道を進んで行く。
 和弘を置いて。
 適当に生きてる自分を置いて。
 士郎は何かを掴んで行く。
 和弘は自分の嫉妬に押し潰されそうだ。
「士郎さん、すごいじゃないっすか!頑張ってくださいよ!」
 和弘はそんな自分を必死に取り繕った。
 だってこんな自分、みっともねぇ。
 心がザリザリと悲鳴を上げる。
 自分なんて大っ嫌いだ。
 和弘は、心を端から順番に殺していった。

「はい。コーヒー」
 女性スタッフの内山彩から、コーヒーをもらう。
「うす。」
 いつも通り仕事して、いつも通りの休憩。
「…………」
 いつも、どうでもいい会話をするのに、今日はしない。
 気を使われてる。
「……もしかして、バレてます?」
「イライラしてること?」
 彩はなんでもなんでもないことのように言う。
 和弘は居た堪ず、座り込んだ。
 彩はそんな和弘をみて、慰める。
「……まぁ、あの人達は、敏感だから、しょうがないよ。」
 障害者は全体的に、人の気持ちに敏感だ。
「そんなに今日、ミス多かったですかね?」
 そして、その気持ちを上手く処理出来なくて、仕事のミスが増えがちだ。
「今のところ、みんなオドオドするくらいで済んでる……かな?」
 今まではすぐに仕事をミスしたりしていたのに。彼らも確実に成長してる。
「子ども達のおかげ……っすね。」
「え?なんでそんな暗く言うの??」
「いや……だって……オレってなんも出来ねーんだなって思って。」
 
 ぽろっと言ったら、和弘は自分語りが止まらなくなった。
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