私と彼を繋いでいたのは夢でした―放課後の目覚めと眠り―

月詠世理

文字の大きさ
2 / 11

学校に向かうまでと幼馴染の夢の話(2話)

しおりを挟む
「今日さ、変な夢だったんだよね」

 通学中。制服を着た男女私たち。話しながら徒歩で学校へ向かっているところだ。

「琴音はほぼ毎日見てるじゃん。そういえば、僕も今日夢見たよ」
「どんな?」
「僕が琴音に何か言ってたような気がするんだよな」

 私は驚いた。勢いよく暁人を見てしまう。あの夢は彼は幼馴染暁人であったのだろうか。目の色が異なっていたけれど、同じ人物なのだろうか。それとも、見間違いをしているだけなのだろうか。

「ねぇ、夢でさ、水の中にいた?」
「どうして知ってるの? って言いたいところだけど、いたのはたぶん公園。琴音が見てる水の中の誰かの正体は僕だったの?」

 恐る恐る尋ねた。キョトンとした暁人の返事に背筋が凍った。ドクンっと心臓がはねる。暁人本人なのかもしれない。そう思ったのだが、続けられた言葉がそれを否定しているっぽいので、ほっとした。
 揶揄うにしても時機を見てほしい。惑わすようなことを言われ、ヒヤッとした気持ちが急速に引いていった。一瞬、暁人と関係あることなのかもしれないと思ったが、違う夢だったみたいだ。私は誤魔化そうと口を開いた。

「いや、えーと、私に何か言ってたって言われたからさ。私も夢で誰かに何かを言われた気がして? 暁人も同じものを見たのかもって。違ったみたいだけど」

 このままやりすごそうと笑みを浮かべ、暁人の顔色を伺った。そちらに集中し、歩いていたためか、何かに躓いて転ける。「わっ!」と小さな悲鳴が上がった。倒れそうになり、衝撃に備える。温もりを感じた。何かに支えられている。

「気をつけなよ。よそ見して歩いてると危ないって」
「う、うん。ありがとう。助かりました」

 怪我はなかった。暁人が支えていてくれたおかげだ。手伝ってもらい、私は体勢を立て直すことができた。

「何事もなくて良かったよ。背負って学校まで運んでいくことになったら困るし」
「え? そういうことなの?」
「さぁね?」
「えー」

 曖昧な暁人の返事に不満を抱いた。私は胡乱げな視線を向けたが、飄々とした態度でダメージを受けている様子はなかった。
 突然、ガラリッと暁人の雰囲気が重々しいものに変化した。ピタリッと足が止まる。私もそれにつられて立ち止まった。真剣な表情で真っ直ぐに私を見つめてきた。

「琴音はさ、考えすぎなんだって。同じものを見るなんてことをあるわけないよ。あったら不思議だな、面白いなくらいの気持ちでいればいいんだって」

 そんな楽観的思考で大丈夫かと思うが、今回のことは暁人の言う通りかもしれない。あの一緒の夢を見ていると思わせるような一言は問題アリだったけど。もし暁人が否定せずに同じ夢を見ていたとしたら、安心できなかった。黒色の目が青色の目なのに、どういうことだと混乱するし、わからないがゆえに怖いし、幼馴染暁人の心配もするだろう。本当に同じ夢を見ていなくて良かった。

「暁人! もうすぐ学校着くよ」
「あれ?」

 暁人自身は覚えていないこと。たまに、ボーッとしたかと思うとキョロキョロと辺りを見回すのだ。まるで何かを探しているかのように。この状態の時は大きな声で名前を呼ぶことにしている。いつ、どこで、が決まっているものではない。ふとした時に起こること。暁人自身の問題であり、その症状は本人に自覚はなし。昔聞いてみたらことがあるが、「わからない」と言っていた。

「僕には――がいたはずなのに」

 この言葉をぼんやりとしている暁人が呟いていたのは頭に残っている。何について言っているのかは私にはわからなかった。後に、本人にさりげなく尋ねてみたところ、忘れているようだった。

「ほら、早く行くよ」
「引っ張らないでよ。歩けるって」

 何も起こらないといいけど。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

あなたの隣は私ではないけれど、それでも好きでいてもいいですか、レオナルド様

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢エリアーナには、三年間ずっと抱えてきた秘密がある。 婚約者であるヴァルフォード公爵・レオナルドへの、誰にも言えない恋心だ。 しかし彼の隣にいるのは、いつも幼馴染の伯爵令嬢・ソフィア。 儚げな笑顔と上目遣いで男性を虜にするあざとい彼女に、レオナルドも例外ではないようで—— 「レオ、私のこと嫌いにならないでね?」 「……そんなことにはならない」 また始まった二人の世界。

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

短編)どうぞ、勝手に滅んでください。

黑野羊
恋愛
二度も捨てられた聖女です。真実の愛を見つけたので、国は救いません。 あらすじ) 大陸中央にあるルオーゴ王国で、国を守る結界を維持してきた聖女ロザリア。 政略のため王太子と婚約していた彼女は、突如『真の聖女』が現れたとして婚約を破棄され、聖女の座を追われてしまう。さらに、代わりに婚姻しろと命じられた聖騎士からも拒絶され、実家にも見捨てられたロザリアは、『最果ての修道院』へと追放された。 けれど彼女はそこで、地位や栄光、贅沢などとはほど遠い、無条件に寄り添ってくれる『真実の愛』と穏やかな日々を手にいれる。 やがて聖女を失った王国は、崩壊へ向かっていき――。 ーーー ※カクヨム、なろうにも掲載しています

幼馴染を溺愛する婚約者を懇切丁寧に説得してみた。

ましろ
恋愛
この度、婚約が決まりました。 100%政略。一度もお会いしたことはございませんが、社交界ではチラホラと噂有りの難物でございます。 曰く、幼馴染を溺愛しているとか。 それならばそのお二人で結婚したらいいのに、とは思いますが、決まったものは仕方がありません。 さて、どうしましょうか? ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

処理中です...