私を呼ばないで

月詠世理

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私の名を呼ばないで

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 声を失った。いや、封印したのだ。自ら自分自身を戒めたのだ。私は大きな過ちを犯した。私は、犯した罪を償うために声を封じた。

「イリス! ありがとう! 貴方のお陰で私、決心がついたわ!!」
「ええ、ルシアナ。いってらっしゃい」

 この会話をした日は、いつのことだろうか。もう長い年月が流れたように感じる。この日は晴れだった。私の心情とは反対の天気。私の心には土砂降りの雨が降っていたというのに、残酷なものね。

「イリス! 貴方が私と彼をつないでくれたのよ! 貴方のお陰ですべてうまくいったわ。ありがとう!!」

 満面の笑みを浮かべて、彼を連れて報告しに来たルシアナ。私の心には風が吹き荒れていた。まるで嵐のように……。

「おめでとう! ルシアナ。よかったわね」

 泣きそうになるのを必死に押し隠した。ニッコリと笑い、祝福の言葉を述べる。

「おめでとう! これから仲良くやるのよ?」
「うん! 喧嘩することもあるだろうし、イリスのこと心配させることもあると思う。でも、私たちは別れることなんてないわ! だって、こんなにも想いあってるんですもの!!」

 はにかんで笑うルシアナに、寄り添い立っているのは、彼。私の好きな人。ルシアナと付き合うことになっても大好きで、愛している人。この愛が消えることはあるのかしら? 私はルシアナに背を向けて、歩き出した。

 ああ、どうして親友ルシアナなの? どうして私じゃないの? 私はいったいどこでボタンを掛け違えてしまったのだろうか。

 ねえ、ルシアナ。私のほうが先に彼に会っていたの。貴方を彼に会わせなければよかったなんて、今更思っても遅いわよね。もう、貴方と彼は付き合っている。恋人同士。私はいらなくなった、利用価値のない親友ガラクタ。貴方は私をそう思っていないだろうけれど、そう思ってないとやってられやないのよ!

「イリス、こんなところに呼び出してどうしたの?」

 ルシアナを廃墟に呼び出した。廃れた教会のようだった。ここに人はあまり寄り付かない。なぜならある噂があるから。幽霊が出るとか、呪われて手に真っ黒な痣ができるとか、墓場の骨が動き出すとか、不気味な噂。ここなら、誰にも知られずに、ルシアナを……。

「ルシアナ。私、貴方に言わないといけないことがあるの!」
「イリス?」
「わたし、わたし。私ね……」
「……ねぇ、もしかして、貴方が彼を好きだったことを言いたいの? それなら私知ってたわ。私、知ってて貴方を利用したのよ。だから何言う必要はないわ。話がそれだけなら、もう行くわね。彼とデートなの!!」

 待って、ルシアナ。待って! どういうことなの? 貴方のいってること、理解できないわ。理解したくなくて、思考を停止させているのかもしれない。けれど、今はそんなこと関係ないの。私はこのまま貴方を帰したりしないわ!

「ルシアナ!」

 銀色に輝く鋭い刃。私はルシアナのもとまで、走り寄った。刃を突き出し、ルシアナを刺そうとした。だが、ルシアナは咄嗟に私の刃を避ける。

「な、な、なによ!? 早い者勝ちでしょう? 貴方は選ばなくて、私は選ばれた。私は選ばれるために、努力した。貴方はモタモタして何もしなかった。その違い!! 私は何も悪くなんてないわ! 嫉妬してるの? でも、なにもかもが遅いのよ! 勝負することもなく、ステージから降りたなら、あのまま大人しくしていればよかったのに!!」
「うるっさい!! 私は貴方のために手伝えることはなんでもした。でも、知ってて私を利用してた? ふざけないで!!」
「自分が傷つくのが怖くて、私と渡り合おうとはしなかったくせに、今更なんなのよ! 私は貴方に殺されてなんかやらないわ。これから私は幸せになるの! その幸せを壊させたりなんかしない」

 薄暗い中で、睨み合う私たち。
 私は刃をルシアナに突き出しており、ルシアナは私が持つものを警戒していた。両者ともに目をそらさずに、相手の様子を伺っている。なぜか、一瞬でも目をそらしたら、やられてしまう、と思った。

「ねえ、――。私、貴方になるわ。これはきっと私が償うべきことだから。私たち、こうなる運命だったのかな? こうなることしかできなかったのかな? 恨み、恨まれる関係じゃなくて、笑い合える関係に戻りたい。時間は巻き戻らないから、どうしようもないのだけれど……。さようなら、――」

 後に、廃墟が火事となる大騒ぎが起きた。火がおさまり、発見されたのは、一人の焼死体。彼女はルシアナと判断された。

 約束した彼とのデートに来なかったという証言。また、イリスがルシアナに呼び出されて、この場所で会ったこと。そこから、ルシアナは一人残ったことなどのイリスの証言。そして、ルシアナの所有物と思われるものが近くにあったことから、焼死体は彼女だと判断された。

※※※

 コンコン。扉を叩く音がする。どうやら眠っていたようだ。ゆっくり瞼を開き、ベルに手を伸ばした。ベルを鳴らすことで、入室しても良いという合図をする。

「イリス。ルシアナが死んで、話さなくなりましたね。いえ、心の傷から話せなくなったのでしょう。僕もルシアナが死んだのはとても悲しいと今でも思っています。ですが、貴方が責任を感じる必要はありません。最後に会ったのが貴方といえ、ルシアナが死を選んだ理由はなんであれ、それは貴方のせいではありませんよ。だから、どうか、もう自分自身を苦しみから解放してあげてください。きっとルシアナも貴方がしゃべれないのを見たら、悲しむでしょう」

 これは罰。話せないのではなくて、話さないのよ。私は声を封じたの。あることで解けてしまうけれど、私はやめるつもりはないわ。しゃべれなくてもいいの。私は私であり続けないと……。

 フルフルと首を横に振った。「私は大丈夫」と口ぱくで伝える。彼は短ければ、私の言っていることがわかるようだった。彼はそんな私を見て、苦しそうに顔を歪めるのだ。そんな表情をして欲しくないわ。

「イリス! 僕は貴方を愛しています! ですか、どうか、どうか……自分を大切にしてください!!」

 私はキッと彼を睨みつけた。私は決めたの。声を戻すわけにはいかないの。私は私を大切にしているわ。これは私自身が望んだことよ。

「(帰って! 帰ってちょうだい!!)」

 彼に伝えた。今回のようなことは何度も繰り返している。彼は、私を心配してくれている。それは、わかっているが、私は声を戻すことはしない。やりたくない。その努力もしようと思わない。彼は私の声を取り戻すのに必死だが、私は何もしようと思わなかった。ただ、今回は珍しいことに彼は引き下がらなかった。いつもなら、悔しそうに唇を噛み締め、「すみません」と言って帰るのに……。

「はぁ、もういい加減やめましょう。あの日、何があったのか、僕は知らない。だけど、貴方はイリスではない。貴方は……」
「(まさか!? どうか、その名を呼ばないで!!)」
「貴方は、ルシアナです。誰もイリスの代わりになんて、なれはしない。その逆も同じです。誰もルシアナの代わりになれるものはいないんです。僕には君だけなんだ!!」

 パリンッと割れた音が響いた。
 あの日のことを思い出す。あの日、イリスは私に刃物を突き出してきた。だけど、イリスは私に殺されようとしているみたいだった。私はあんなに自分勝手で酷いことを言ったのに、イリスは私のことを最後まで思ってくれていたのかもしれない。

「私、ルシアナを恨んだわ。好きな人を奪われてしまったのだもの。でも、それ以上にルシアナが大好きなのよ。私、どうすればいいか迷ったの。迷った末で、私はこの先貴方達の人生に邪魔だなぁって思った。生きてたら、何をしでかすかわからないもの。だから、決めたの! 私は死んでしまおうって! それに、もう貴方に私は必要ないわ」

 ニッコリ笑って、自分の胸に刃を突き立てた。「えっ?」って思ったわ。何が起こっているのか、理解できなかった。イリスが倒れた派手な音を聞いて、我に返ったの。私はイリスにすぐさま駆け寄ったわ。
 胸の刃を抜くことはできなかった。抜いたら、血が出てしまうもの。怖かった。どんどん冷たくなっていくイリスが、温もりを失うイリスが、怖かった。

「ねぇ……、最期の、お願い……、しあ……わせ、に……な、て……。わたし、のことは、……忘れ……」
「イリス? イリス!!」

 どんなに叫んでも、イリスの命は戻ってこない。失われたものなど、戻ってきはしないのだ。だったら、私がイリスになればいい。イリスという存在はここにいると人々に刻みつければいい。イリスはいないけど、戻ってこないけど、イリスがいることにすればいいんだ。

 これは私の償い。私への罰。私は私自身を捨てよう。私はイリスになろう。そう決めた。

 決心がつき、思ったことは、私たちがいる場所がここで良かったのかもしれない、ということ。イリスが死んだ廃屋は不気味な噂が多々あった。だが、不思議な噂もあるところだった。その不思議な噂の一つにこのような言葉が出てきている。

『そなたの胸の内を全てを打ち明けよ。流れた赤は一人の願いを叶える代償だ。しかし、その赤を命の灯火を消すのは、そなたが大切に想うものに名を呼ばれること。真実の名を……』

 意味不明な言葉の羅列。だけど、私はこの時に、「イリスになりたい」と思った。ルシアナは死んだことにして、イリスになりたいと。また、「声を失くしてしまいたい。酷い言葉を紡ぐ声などいらない」と。たぶん、その願いが叶ったのだと思う。

 突然、あの廃墟は燃えたのだもの。私たちは真っ赤な炎に包まれた。イリスを置いていくのは嫌だったけれど、私は逃げなければ、走ろうとした。このままでは、私がイリスになる前に、死んでしまう。
その時に、スッと耳に入ってくる、美しく響きのある声を聞いたんだ。

「汝の願いを叶え、役目を終えよう。我は、結ぶもの、繋ぐもの、断ち切るもの、魅せるもの、様々な呼び名がある。そんな我がそなたに施しを与えよう。何も心配はいらない。目を覚ませば全てがそなたの望むままに……。だが、忘れることなかれ。真実の名はどんな誤魔化しも暴いてしまう。大切なものに真の名を呼ばれることなかれ」

 私は熱い炎とは違う、暖かくて不思議な光に包まれた。何事かとギュッと目を瞑る。何か良からぬことが起こるのではないかと思ったが、危害が加えられるような感じはしない。私は恐る恐る片目を開けた。不思議なことに、目の前には鏡があり、私は私ではなくなっていた。私はイリスになっていた。「えっ!?」と驚いたものの、私は状況を理解し、イリスとして生きていくことをすぐさま選んだ。

 その後、私は何も証言していないのに、私がルシアナと最期に会った存在となっており、ルシアナが死んだことになっていた。ルシアナと最期に会ったため、疑われていたが、その疑いも
いつしか消えた。問題は彼だった。私が、ルシアナとイリスが愛した男だった。

 毎日毎日、暇なのかと思うくらい時間を作って、彼は私のもとへやってくる。頻繁にくる必要はないのに……。それで、いつも真実の名を呼ばれないかと冷や冷やした。私はどうかバレませんようにと、彼が私の名を呼ぶことはありませんようにと、祈っていた。結局、名を呼ばれてしまったけれど……。

「ルシアナ。イリスが死んだのは貴方のせいではないよ。きっと僕のせいだ」
「ど、どういうこと……」

 私にかかっていた魔法は解けてしまったようだ。あれが魔法だったのかもわからない。だが、不思議なことが自分の身に降りかかり、代わりの言葉が見つからないので、魔法と呼ぶことにした。

 さて、彼の告白はいったいどういうことなんだろうか? イリスが死んだのは、私のせいではなく、彼のせいとは?

「僕も声を聞いた。耳に残る旋律のような綺麗な声を……。僕もあの場所に行ったことがある。僕はあの場所が載っていた本を見て、気になって、その地へ赴いた。その時に知った。何百年も前の人々、時の権力者が、願いを叶えるためにある儀式に使用した場所である、ということを。そのように本に記されていたよ」

 彼の語りは続く。
 どんな話がされるのだろうか。私は黙って耳を傾ける。

「僕にはね、恋人がいたんだ。でも、死んでしまった。僕はね、本に記されていた方法である儀式を行った。僕の願いを叶えるために、ね。僕の願いは叶った。時間は巻き戻り、死を免れた。だけど、また彼女は死んでしまった!! 僕はまたあの場所で願ったよ。繰り返し繰り返し願った。何度も君は死に、その度に時間は巻き戻った。僕は君を生かしたかった。君の死の運命を捻じ曲げたかった。君と一緒に過ごしたかった。君のいない世界が滅んでもどうでもよかった」

 ふぅ、と息を吐いた彼。顔は下を向いている。それは、何かをジッと堪えているようにも見えたし、考えているようにも見えた。バッと顔を上げた彼は、私を真っ直ぐに見つめてくる。その眼差しはとても真剣なものであった。

「僕が君を助ける方法を考えていくうちに、何度、時間は巻き戻ったのだろうか。巻き戻ると時間の中を過ごしていくうちに、僕はイリスに会った。イリスは僕に言った。『貴方、運命を捻じ曲げましたね? これ以上は貴方も貴方の大切な人もただでは済みません』と。僕は思わずイリスに掴みかかったよ。貴方に何がわかるってね」

 イリスは彼から瞳を背けることなく、話したらしい。掴みかかられたら、怒鳴ってしまいそうなものなのに……。

「分かりますよ。貴方と同じですから。私も私の願いのために、あの場所へ行きました。そして、願いを叶えました。だからでしょうか? 私は世界の異変を知っている。何度も時間が巻き戻っている。でも、これ以上はいけません。世界が耐えられないでしょう。きっと崩壊します。そして、貴方方の魂は砕け散り、もう二度と会えない。生まれ変わることなどできないのだから」

 イリスはこう答えたようだ。
 彼はイリスの話を聞いて、驚いたらしかった。恋人が生きられる方法を探していたのに、取り返しのつかないことになりそうで、自分を情けなく思ったと言う。イリスの話で魂が砕け散ることを知り、愕然としたそうだ。助けられない、と。そんなの嘘だ、と。

「目の前が真っ暗になりそうだった。でも、諦めることはできなかった。どうしても君を生かしたかったんだ! そうしたら、イリスが僕を手伝うと言った。僕はすぐさまその話に飛びついたよ。何か裏があるかもと警戒はしていた。でも、イリスは何もおかしな行動はしなかった。僕はイリスを信じた。時が来るまで待てと言うイリスに、本当に大丈夫かと、何度も詰め寄ったこともある」

 イリスが私を彼と引き合わせた。そこからはじまった。たぶん、すべてはイリスの思惑通りだ。イリスは私たちを救おうとしたの? いなくなった人に話を聞くことはできないから、真実は闇の中だ。

「やっとなんだ! やっと君が生きていける時を見つけた! だから、僕と一緒に生きて欲しい!! イリスではなく、ルシアナとして、僕とともに!!」
「私は……イリスよ! ルシアナではないわ……」
「君の声はイリスではないよ。ルシアナだ。外見ももうイリスではなくなっている」

 ああ、解けてしまった。私の魔法。私はイリスになれなかった。償いたかったのに。イリスがいるということを刻みつけたかったのに。わたし、私は……。

「何度でも言うよ。イリスが死んだのは君のせいではない。僕のせいだ。君はイリスを殺してなんていないよ。イリスを殺したのは僕だ。だから、君はもう苦しまないで。僕に全てを預けて、僕と一緒に生きて!」

 私の瞳からは滴が零れ落ちた。私は、ローダの手を――。

※※※

 私がすべての原因なの。私が悪いのよ。だから、これで良かったの。すべてはありのままに……。

 ルシアナが何度も死ぬのは私が呪いを施したから。正確には、自らにかかった解けない呪いを誰かに移したのだ。それがルシアナだった。彼女が時間を巻き戻る中で何度も死ぬのはそのせいだ。私はそんな中で、一人の男を見つけた。彼も願ったものだった。何を願ったかはわからないが、時間を戻しているのは彼だと思った。

 世界の悲鳴と魂の砕けそうな音が聞こえる。世界は時間の巻き戻しに耐えられなくなってきた。何度も繰り返しているのだから、崩壊してもおかしくはない。世界の均衡が崩れてきているのだ。時間の巻き戻りで、消えた国もあれば、新たにできた国もある。もともとは壮大な森だったのに、砂漠化したところもあった。超常現象のように、大量に雨が降り、二日ほどやまなかったこともある。

 世界はすでに壊れかけていた。それでも必死にもがく、一人の男。世界が壊れてもいいと思っているのだろう。でも、これ以上は貴方の大切なものも全てを失う。存在でさえ、なくなるだろう。だから、私は彼と会い、話すことにした。

 掴みかかられたのには驚いた。だが、彼の想いは真っ直ぐなものだった。どんなことをしてでも恋人を救いたいのだと。一種の愛だ。羨ましいくらいにその恋人は彼に愛されている。恋人を生かすために、時間の巻き戻しを何度も行った彼だ。愛されている人は幸せかもしれない。

 彼の話を聞いて、その恋人が時間を繰り返す中でも死んでいくことがわかった。私は嫌な予感がした。もしかして、と。私の呪いと似ていた。私にかかっていた呪いは、他の生を奪うものだった。それが形を変えて、彼の恋人の命を奪う呪いに変わってしまったのではないかと考えた。

 私のせいだった。私がなんとかしなければ……。私自身の過ちは、私が解決しなければいけないわね。
 廃れた場所でも力は残っている。私ので叶えられる願いは最期だろう。何度も時間を巻き戻し、力はほとんど残っていないと思われる。

「これが最期の願い。私は……」

 私の死を望もう。どんな形であれ、それが私の死への道だ。一人の男がもがいたように、私はもがくことはできない。運命を捻じ曲げた一人として、全てを終わらせよう。きっと全てが元通りとはいかないだろう。私は私にできることをやるだけだ。

「ねぇ、ルシアナ。ごめんね、ごめんなさい。貴方は生きて、幸せになって……」

 私が貴方に移った呪いを持っていくわ。世界に及ぼされた影響も、私自身を代償にして、限りなく元の形になるようにする。私の願いを叶えるのはあの廃れた場所。元は神殿だった。時を繰り返すうちに、輝くような立派な塔の面影はなくなってしまったわ。

 ねぇ、どうか苦しまないで。私のために泣かないで。すべての原因は私なのだから。ルシアナ、どうかどうか幸せになって……。貴方を騙して、本当にごめんなさい。

 私は、魂ごと消滅するだろう。私に次の生などない。罪を犯した。その罪を失くすのに、私は私という存在で、すべてを終わらせよう。この繰り返す時に終止符を打とう。

 はじまりからおわりのシナリオはすべて揃っている。ねえ、ルシアナ。ありがとう。さようなら。

 私の名前はウルズ。私は私の名を呼ぼう。自分自身で名を明かすことも、叶った願いが消える効果だから。ふふふ、楽しい時間をありがとう。
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