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決め事はルーレットで(2話)
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目覚ましの音が鳴る前に目が覚めた。遅くまでゲームをしていたら目覚ましでも起きないことがあるのに。ギリギリで母が起こしにきてくれて学校に間に合うか間に合わないか。だから、今回は自力で起きることができているはずだ。セットした目覚ましを止めておこう。ベッドの近くにある机に手を伸ばす。
「あれ? 目覚ましない。やっぱり壊したか?」
「もう! お寝坊さん! 寝転がったままでなく体を起こす! 早くこれ回して」
半分起き上がった。先程まで白い天井が見えていた。視界に映っているのはぷかぷかと浮かぶ物。その中には目覚まし時計もある。あまりの非現実的なことにまだ夢を見ているのだろうかと思う。
「ぼーっとするのはかまいませんが、回してください! もうこうやってこう。えいっ!!」
いつの間にかいたウサギの耳を付けている少女が僕の手を取り、ルーレットのつまみを掴ませた。僕の手に少女の手が重なる。そのまま少女はくるっとルーレットを動かした。
「えっと、君、誰? あと、ここどこ?」
僕の部屋であるのは間違いない。僕の物もある。お気に入りのぬいくるみだって浮かんでいるが、あるのだ。僕が異世界に飛んでいるわけではない、はず。
「反応鈍くないですか? もっと驚くところですよ? あっ、さては夜更かししましたね? 体に悪いですよ」
僕の疑問に対する答えはいっさい返ってこなかった。
「あー、うん。この画面を見てください」
少女はいくつも浮かんでいるものの中から1つのものをさっと掴んだ。それは僕のスマホ。言われた通り覗いてみる。映っているのはイラスト。弓矢と首輪。
「なにがなんだかわからないけどさ、勝手に僕のスマホに変なアプリ入れないでよ。壊れたらゲームデータ消えちゃう!」
「変なアプリとはなんですか。これは優秀なんですよ。面倒なことをサクサクと決められるんですから」
「いや、何が面倒なのかわからないし」
ウサミミ少女の話についていけない。そもそもなぜルーレットをやったのかも理解できていない。ニコニコと笑みを浮かべているウサミミ少女の笑みが
不気味に見えてきた。
「ハーイ。じゃあ、数値を調整して弓矢を使えるようにしておきますね。次は……もう面倒なので、猫さんに決定! じゃあ、行ってらっしゃい」
「どこに!? ん? 猫??」
「一体何を聞いていたんですか? あ、ネームは『チィ』で登録しておきましたよ。聞きたいことはないですよね? はい、ないですね」
「ちょっ!! 僕は……」
口を挟む暇もなく、一方的に打ち切られた会話。ウサミミ少女がパソコンを持ち上げた。嫌な子感がする。逃げようとするが体はしびれて動かない。
「さようなら。今度こそいってらっしゃい」
パソコンが投げられた。僕の頭に撃突する。我慢できないほどの痛みがあった。そこから先の記憶はない。目の前が真っ暗になった。
「ふぅ。『あなただけのモンスターを入手!! 育成して最強のモンスターへ』にようこそ。サポート案内を担当しております。リースでございます『チィ』様が快適にゲームを行えるようにお仕事させていただきますね。ってもう私の仕事は終わりですけど」
ゲームの世界へ誘うのが私の仕事であり、1人1人に合った武器などを選んで決めるのも私の仕事。でも、面倒なので最近はルーレットにしてランダムで決めています。数値を調整して武器を使えるようにしておけばいいだけ。合わなくて後々不具合があろうが、死んでしまおうが、私には関係ありません。報告書は偽造しておけばいいだけですから。バレなければ問題はありません。どうせ現実世界では生きることは不可能です。あの人間は喜びのあまり泣き叫ぶことでしょう。パソコンを頭に投げたのが致命傷でしたね。報告書に事実は書けません。別の理由にしておきましょう。
リースは姿を消した。浮かんでいた物やベッド等も消えた。残ったのは何もない空間。それも少し経つと薄くなっていき、なくなった。
「あれ? 目覚ましない。やっぱり壊したか?」
「もう! お寝坊さん! 寝転がったままでなく体を起こす! 早くこれ回して」
半分起き上がった。先程まで白い天井が見えていた。視界に映っているのはぷかぷかと浮かぶ物。その中には目覚まし時計もある。あまりの非現実的なことにまだ夢を見ているのだろうかと思う。
「ぼーっとするのはかまいませんが、回してください! もうこうやってこう。えいっ!!」
いつの間にかいたウサギの耳を付けている少女が僕の手を取り、ルーレットのつまみを掴ませた。僕の手に少女の手が重なる。そのまま少女はくるっとルーレットを動かした。
「えっと、君、誰? あと、ここどこ?」
僕の部屋であるのは間違いない。僕の物もある。お気に入りのぬいくるみだって浮かんでいるが、あるのだ。僕が異世界に飛んでいるわけではない、はず。
「反応鈍くないですか? もっと驚くところですよ? あっ、さては夜更かししましたね? 体に悪いですよ」
僕の疑問に対する答えはいっさい返ってこなかった。
「あー、うん。この画面を見てください」
少女はいくつも浮かんでいるものの中から1つのものをさっと掴んだ。それは僕のスマホ。言われた通り覗いてみる。映っているのはイラスト。弓矢と首輪。
「なにがなんだかわからないけどさ、勝手に僕のスマホに変なアプリ入れないでよ。壊れたらゲームデータ消えちゃう!」
「変なアプリとはなんですか。これは優秀なんですよ。面倒なことをサクサクと決められるんですから」
「いや、何が面倒なのかわからないし」
ウサミミ少女の話についていけない。そもそもなぜルーレットをやったのかも理解できていない。ニコニコと笑みを浮かべているウサミミ少女の笑みが
不気味に見えてきた。
「ハーイ。じゃあ、数値を調整して弓矢を使えるようにしておきますね。次は……もう面倒なので、猫さんに決定! じゃあ、行ってらっしゃい」
「どこに!? ん? 猫??」
「一体何を聞いていたんですか? あ、ネームは『チィ』で登録しておきましたよ。聞きたいことはないですよね? はい、ないですね」
「ちょっ!! 僕は……」
口を挟む暇もなく、一方的に打ち切られた会話。ウサミミ少女がパソコンを持ち上げた。嫌な子感がする。逃げようとするが体はしびれて動かない。
「さようなら。今度こそいってらっしゃい」
パソコンが投げられた。僕の頭に撃突する。我慢できないほどの痛みがあった。そこから先の記憶はない。目の前が真っ暗になった。
「ふぅ。『あなただけのモンスターを入手!! 育成して最強のモンスターへ』にようこそ。サポート案内を担当しております。リースでございます『チィ』様が快適にゲームを行えるようにお仕事させていただきますね。ってもう私の仕事は終わりですけど」
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リースは姿を消した。浮かんでいた物やベッド等も消えた。残ったのは何もない空間。それも少し経つと薄くなっていき、なくなった。
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