悪魔も恋をする

月詠世理

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14話

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 ユアは強い力で使用人の格好をした女に捕らえられていた。そこから逃れようと暴れるが、その力に敵わない。
 同じ女なのに、何が違うのか。ユアはふとした拍子に女の顔を見てしまう。その女は……。
 ユアの両親を殺した使用人であった。

「あ、あなたは……」

 この場所にいることが信じられない相手である。驚きに満ちた表情を女に向けるユア。しかし、彼女とは異なり、女は反応を示すことはない。
 女はユアを覚えていないのだろうか。

「姫君を連れていけ!」

「かしこまりました」

 デレアスモスの命令に淡々と従う女。人間であるのに、彼女はデレアスモスの手下となってしまったのか。何とか逃れようともがくが抵抗することはできず、そのまま引きずられるように連れ去られてしまう。

「ユア!」

「セツ!」

 お互いを呼び合う声が響く。ユアはセツに手を伸ばす。セツはその手を取ろうとした。しかし、その行為はデレアスモスによって阻まれてしまった。セツはユアの手を掴むことはできなかったのである。

「クソッ!」

 四つん這いになっているセツは、拳でおもいっきり地面を殴りつけた。彼のその様子を笑って見ているデレアスモス。

「残念であったな。悪魔の強者として上位に君臨していても、悪魔の王である我に敵うわけがない。悪魔の序列は力でハッキリ決まっているのだから。さようならだ。愚かな悪魔よ」

 辺りを包むのはどす黒い魔力の塊。恐ろしく冷たいものであった。強い魔力は全てを包み込み、多くの命を奪っていった。最後には、街も消えてしまった。


 セツは傷だらけであった。満身創痍であるセツであるが、ユアを探して彼は歩き続ける。契約者の居場所は契約が強いほど分かりやすい。しかし、悪魔の王に阻まれているのか、上手く気配を追えないセツであった。

「このままでは契約違反になってしまう。ユアへかかっている護りは強化しておいた。だから、しばらくは平気だと思うのだが……」

 セツは傷を自己治癒しながら、ユアを救うにはどうしたら良いのかを考える。


「ちっ! あいつを頼るしかないか。面倒めんどくせぇぇ」

 さてさて、セツのいうアイツとは誰であるのか。


 セツがデレアスモスの黒い魔力から助かったのは、アイツといわれる者のおかげであった。その者はセツにあるものを渡していた。それは、魔力を吸い取る魔石である。
 魔力を吸収できる容量は魔石によって決まっている。その中でも高品質のものをセツはある者から貰っていた。多くの魔力を吸える魔石によって彼は助かったのである。しかし、その魔石も悪魔の王であるデレアスモスの魔力を全て吸収するのは難しかったみたいだ。
 デレアスモスの魔力が大きすぎたのか、たった一度の使用で壊れてしまった。
 セツは高望みはしていないようである。命が助かっただけでも幸いだったからだろうか。彼は早くユアを探そうと前へ進む。
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