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一章 元戦闘員と元奴隷少女
何気ない朝の出来事
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――日の光が差し込んできて、目を覚ます。布団からもぞもぞと抜け出し、立ち上がる。そして一度伸びをすると、部屋から出る。
既にそこには、レイの姿があった。
「あ、あはよー」
「……おう、おはよう」
ぼんやりとした意識が覚醒してくる。
ちょうど今完成したであろう朝食が机の上に置かれていた。
「……あー、いつも悪いな」
「別にだいじょぶだよー。ほら、泊めてくれてる駄賃ということで」
「うーん、それだと安すぎるような……」
冗談半分で言ってはみるが、本気では思っていない。朝の面倒な料理をして貰えるだけで、十分お釣りが出ると思ってる。
「ふーん……。つまり、これ以上のことをしろと? 何されちゃうんだろうなぁ」
「何もしねぇよ。冗談だ、冗談」
ケラケラと笑いながら、だろうねぇ、と返ってくる。
「ま、居候の身ですから何されようがどーでもいいんですけどね」
「お前人生捨てすぎだろ……。もうちょい希望持ってもいいんじゃねぇの」
何気なしに言ってみたが、困ったように笑うレイの姿を見て、失言だったとはたと気づく。
「……そーいや、この家での暮らしに慣れたか?」
話題を変えるように聞くと、んー、と考えてから口を開いた。
「まあ、ぼちぼち……かな。電気つけようとしたら、床から電気が流れてきた時はなんだここって思ったけど」
「そりゃお前、他人の家の電気を勝手につけようとしたらそうなるだろ」
多分どこの家も一緒だぞ、多分。
「えー、それはないと思うなぁ……」
いやいやと首を振るレイ。
そうかぁ、人間にはそんなことないのか。
「というか、この家から出る準備は進んでんのか?」
不意に思い出し、そう問いかける。するといやー、とレイは自分の頭をかいた。
「まあ、ほら、まだもう少しいる予定だし、いいかなーって思いまして……」
言いづらそうにしながらも、ちゃんと口にする。まあ、ちゃんと言ったからといってどうこうということはないのだが。
「つまり、まだ何にもしてない、と?」
「はい……」
シュンと項垂れるレイ。思わず気にすんな、と言ってしまいそうになるが心を鬼にしてぐっと堪える。
ダメだダメだ。こいつがちゃんとここから出ていかないと、こいつのためにもならない。
そんなことを考えながら、頭を振って意識を切り替えていると、あっ、でも……と不意になにか思い出したのか、瞳がキラリと光った。
「ちゃんと一人で生きていけるように、本を読んで勉強してますよ。ほら」
立ち上がると、何やら本を持ってくる。
「料理本だな。『男の一人飯にはこれだ!!』か……。なんかあったな、こんな本」
「いつもの朝食も、これ読んで作ってるんだよ?」
「ほーん……」
これ全部男の一人飯かよ。レベル高くね? 俺、毎日奪ったもんを丸焼きにして食ってたんだけど……。
「ま、知識を蓄えるのもいいけど、ちゃんとここを出る準備もしとけよ?」
「分かってるって。ほら、今は外に私たちを探している騎士様がいるからちょっと無理だからさ」
いやまあそうだけど。最近では、手配書でもあるのか、俺たちを探しに来る冒険者やら荒くれ者やらが増えてきている。
少なくとも、ほとぼりが冷めるまでここからレイを逃がすのは危険だ。もうしばらくはここに置いておくべきだよな……。
「……そういえば、ここはだいじょぶなの? 騎士様に見つかったりとかは……」
不意に、不安そうにレイが尋ねてきた。
その疑問はもっともだ。場所を転々と移動しているのならまだしも、同じところに居続けるのは見つかる可能性が高くなる行為だ。けれど、俺には見つからない自信があった。
「ま、大丈夫だろ。認識阻害の結界張ってるし。そこら辺の雑魚相手じゃ、見つかることはねぇよ」
「へー、結界なんてものあったんだ」
まあ、結界は装置を使って張ってるから、壊されたら終わりだけど。まあでも、一応敵が近づいたら分かるように別の結界も張っておいたし、大丈夫大丈夫……。
と、そこで俺はあることに気がついた。
――今の発言、フラグっぽくなかったか……? と。
その時だった。
認識阻害の結界を張っている装置が破壊され、探知結界に反応があったのは。
「おい、レイ」
「ん? どうしたの?」
俺が声をかけると、こてんと首を傾げてこちらを見てくるレイ。珍しく真剣味の帯びた声に、戸惑っているようだ。……それ、ちょっと失礼じゃありませんかね……。
「床下に隠れとけ」
「床下?」
はて? またしても首を傾げて問い返してくるレイに、無言でちょうど机の下にある床下への扉を開ける。中は、人一人が入れるぐらいの大きさで近くの物置小屋へつながっている通路となっている。
「もし危険そうだったら、この先へ逃げろ。あの、西側にある物置小屋あっただろ。あそこに繋がってるから」
「うん、わかった」
早口でそう説明しながら、レイを床下へ押し入れる。そして、入ったのを確認するとすぐさま床下の扉を閉める。そして、急いでレイがいた痕跡を消した。食器や本など、一目で他に人がいたことがわかるような物は自分の部屋へ押しやり、なんとか半年前の部屋の風景に似せる。
そして、悠々と椅子に座って水を飲もうとしていると、ノックもなしに家の扉が開いた。
扉の軋む音に続いて、複数の足音が聞こえてくる。そちらへちらりと横目で見ると口を開いた。
「おいおい、ノックもなしに来訪とか失礼にも程があるだろ」
ため息を吐きながら、やれやれとグラスを机に置いてそちら側へと体を向ける。
「そう思わねぇか、シモン」
漆黒の鎧に身を包んだ集団の、先頭に立つ男に声をかける。すると、シモンと呼ばれた男は、ニヤリと嫌な笑みを返してきた。
既にそこには、レイの姿があった。
「あ、あはよー」
「……おう、おはよう」
ぼんやりとした意識が覚醒してくる。
ちょうど今完成したであろう朝食が机の上に置かれていた。
「……あー、いつも悪いな」
「別にだいじょぶだよー。ほら、泊めてくれてる駄賃ということで」
「うーん、それだと安すぎるような……」
冗談半分で言ってはみるが、本気では思っていない。朝の面倒な料理をして貰えるだけで、十分お釣りが出ると思ってる。
「ふーん……。つまり、これ以上のことをしろと? 何されちゃうんだろうなぁ」
「何もしねぇよ。冗談だ、冗談」
ケラケラと笑いながら、だろうねぇ、と返ってくる。
「ま、居候の身ですから何されようがどーでもいいんですけどね」
「お前人生捨てすぎだろ……。もうちょい希望持ってもいいんじゃねぇの」
何気なしに言ってみたが、困ったように笑うレイの姿を見て、失言だったとはたと気づく。
「……そーいや、この家での暮らしに慣れたか?」
話題を変えるように聞くと、んー、と考えてから口を開いた。
「まあ、ぼちぼち……かな。電気つけようとしたら、床から電気が流れてきた時はなんだここって思ったけど」
「そりゃお前、他人の家の電気を勝手につけようとしたらそうなるだろ」
多分どこの家も一緒だぞ、多分。
「えー、それはないと思うなぁ……」
いやいやと首を振るレイ。
そうかぁ、人間にはそんなことないのか。
「というか、この家から出る準備は進んでんのか?」
不意に思い出し、そう問いかける。するといやー、とレイは自分の頭をかいた。
「まあ、ほら、まだもう少しいる予定だし、いいかなーって思いまして……」
言いづらそうにしながらも、ちゃんと口にする。まあ、ちゃんと言ったからといってどうこうということはないのだが。
「つまり、まだ何にもしてない、と?」
「はい……」
シュンと項垂れるレイ。思わず気にすんな、と言ってしまいそうになるが心を鬼にしてぐっと堪える。
ダメだダメだ。こいつがちゃんとここから出ていかないと、こいつのためにもならない。
そんなことを考えながら、頭を振って意識を切り替えていると、あっ、でも……と不意になにか思い出したのか、瞳がキラリと光った。
「ちゃんと一人で生きていけるように、本を読んで勉強してますよ。ほら」
立ち上がると、何やら本を持ってくる。
「料理本だな。『男の一人飯にはこれだ!!』か……。なんかあったな、こんな本」
「いつもの朝食も、これ読んで作ってるんだよ?」
「ほーん……」
これ全部男の一人飯かよ。レベル高くね? 俺、毎日奪ったもんを丸焼きにして食ってたんだけど……。
「ま、知識を蓄えるのもいいけど、ちゃんとここを出る準備もしとけよ?」
「分かってるって。ほら、今は外に私たちを探している騎士様がいるからちょっと無理だからさ」
いやまあそうだけど。最近では、手配書でもあるのか、俺たちを探しに来る冒険者やら荒くれ者やらが増えてきている。
少なくとも、ほとぼりが冷めるまでここからレイを逃がすのは危険だ。もうしばらくはここに置いておくべきだよな……。
「……そういえば、ここはだいじょぶなの? 騎士様に見つかったりとかは……」
不意に、不安そうにレイが尋ねてきた。
その疑問はもっともだ。場所を転々と移動しているのならまだしも、同じところに居続けるのは見つかる可能性が高くなる行為だ。けれど、俺には見つからない自信があった。
「ま、大丈夫だろ。認識阻害の結界張ってるし。そこら辺の雑魚相手じゃ、見つかることはねぇよ」
「へー、結界なんてものあったんだ」
まあ、結界は装置を使って張ってるから、壊されたら終わりだけど。まあでも、一応敵が近づいたら分かるように別の結界も張っておいたし、大丈夫大丈夫……。
と、そこで俺はあることに気がついた。
――今の発言、フラグっぽくなかったか……? と。
その時だった。
認識阻害の結界を張っている装置が破壊され、探知結界に反応があったのは。
「おい、レイ」
「ん? どうしたの?」
俺が声をかけると、こてんと首を傾げてこちらを見てくるレイ。珍しく真剣味の帯びた声に、戸惑っているようだ。……それ、ちょっと失礼じゃありませんかね……。
「床下に隠れとけ」
「床下?」
はて? またしても首を傾げて問い返してくるレイに、無言でちょうど机の下にある床下への扉を開ける。中は、人一人が入れるぐらいの大きさで近くの物置小屋へつながっている通路となっている。
「もし危険そうだったら、この先へ逃げろ。あの、西側にある物置小屋あっただろ。あそこに繋がってるから」
「うん、わかった」
早口でそう説明しながら、レイを床下へ押し入れる。そして、入ったのを確認するとすぐさま床下の扉を閉める。そして、急いでレイがいた痕跡を消した。食器や本など、一目で他に人がいたことがわかるような物は自分の部屋へ押しやり、なんとか半年前の部屋の風景に似せる。
そして、悠々と椅子に座って水を飲もうとしていると、ノックもなしに家の扉が開いた。
扉の軋む音に続いて、複数の足音が聞こえてくる。そちらへちらりと横目で見ると口を開いた。
「おいおい、ノックもなしに来訪とか失礼にも程があるだろ」
ため息を吐きながら、やれやれとグラスを机に置いてそちら側へと体を向ける。
「そう思わねぇか、シモン」
漆黒の鎧に身を包んだ集団の、先頭に立つ男に声をかける。すると、シモンと呼ばれた男は、ニヤリと嫌な笑みを返してきた。
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