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二章 盗賊と盟友
盗賊との戦闘
しおりを挟むギラギラと光る黄色い目には、敵意が宿っている。
「……なんだ、お前」
警戒しつつ、問いかける。
「俺か? 俺はな……」
瞬間、男の体が横にブレた。
慌てて体の前で両腕をクロスさせる。
「が……っ!」
少し遅れて両腕に衝撃が走る。
なんだ……っ、この威力……!
「おうおう、なかなか反応がいいじゃねぇの」
言い終わるや否や、またしても男の体が横にブレる。今度は、左に向かって足を蹴りあげる。
が、ザリっと砂を蹴る音が左側から聞こえ、右側から衝撃がきた。
「ちぃっ……!」
地面を蹴り、身体を浮かすことで威力を抑える。が、数メートルほど吹き飛ばされてしまった。
「おいおいおいおいっ! ここまで反応できるやつは久しぶりだぜ、おい!」
「おいおいおいおい、うるせぇよ……」
胃液が逆流して、口の中に微妙に酸っぱい感触が広がる。それを唾を吐いて吐き出す。
やばいな……。こいつはかなり強い。
「っ、八代! レイを連れてこっから離れろ!!」
「え、へ、あ、う、うんっ!」
一瞬戸惑ったものの、すぐに頷き、レイを逃げるように促し始める。
「いや、さすがにサトウさん一人だと厳しいでしょ」
「いや、その、我いても役に立たないといいますか……」
「幹部だったんですよね!? この人ぐらい、どうにかならないんですか!」
「ええ……」
助けてくれと視線を送ってくるが、こちらはこちらで手一杯なので目配せもすることが出来ない。
「身体強化系統のスキルか……」
スキル――それは、人間や魔族といった生物一体に対して一つ備わる超常現象的な力を持つことが出来る。
八代で言えば、『重力加速』がそれだ。
やつのスキルは確か、自身や触れたものの重力を変化させられる能力だったはずだ。
そして、今相対しているやつのスキルはおそらくは身体強化系統。……クソっ、苦手なタイプじゃねぇか。
「無理だから! ほら、早く逃げよう!!」
「流石の私でも、ここで逃げるような人じゃないですよ……私も戦いますっ!」
「お、おーい、危ないって!!」
説得に難航しているのか、八代の焦った声だけが聞こえてくる。……大丈夫かな、あいつ。
「そういえば、早く逃げなくていいのか? この辺、騎士が調査に来てるらしいぜ」
念の為、そう聞いてみることにする。
だが、おそらくは無駄だろう。
なぜなら――。
「ああん? ……ああ、その騎士なら、さっきそこで俺が殺したぜ」
ケタケタと、何がおかしいのか嗤い始める。
血のついた剣を鞘から抜き取り、こちらに切っ先を突きつける。
「これ以上、俺を手こずらせんじゃねぇよ」
またしても急速に近づいてくる気配を感じて、横へ飛び退く。
「ちっ、今度は避けられたかっ!」
手には、血塗れの剣を持った男がいた。
あのまま逃げ遅れていたら、もし受け止めようとしたのなら、俺は切られて終わっていただろう。
「刃物使うのかよ……」
「喧嘩にルールなんてねぇんだぜ! 最後まで立ってたやつが正義なんだよ!」
そう叫びながら、飛びかかってきた。
俺は、今回は生身なので刃物を受け止める訳にはいなず、なんとか斬撃を避け続ける。
「クソがっ! ちょこまかと……!」
剣を振り回す様は見たまんま蛮族だ。
こんな時に変な想像をしながら、不意に気がつく。八代とレイの二人が、やけに静かなことに、だ。
あのまま口論をしていたのなら、声が今にも聞こえてきてもおかしくはない。けれども、二人の気配が全くしないのだ。
「まさか……!」
不意に嫌な想像が頭の中に過り、あの二人がいる方向を向いたその時である。
「は……?」
肩から、腕にかけて生ぬるい何かが腕を伝うような感触があった。
恐る恐る肩の方を見てみると、そこには銀色に鈍く光るナイフが突き刺さっていた。
「ぐっ……!」
歯を食いしばり、痛みに耐える。
一体何が……!
「ふむ。幹部と言っても所詮はこの程度、かな」
レイや八代がいるであろう方向を見てみると、そこには赤毛の女がいた。そして、その足下には気を失っている二人の姿も。
「さてグスタフ。この娘だけを連れて行こう。この二人は抵抗されると厄介だからね」
テキパキと、その女はグスタフと呼ぶ大男に指示を出す。
「へいへい……。じゃ、さっさとこいつを始末するか」
仕方ないとばかりに、頷くと、先程よりも一段と速く俺との距離を詰めてきた。
「この……っ!」
肩からの激痛により、動きが若干鈍る。そのせいか、グスタフからの一撃をモロにくらってしまった。
「ゲホッゴホッ……っ!」
体が吹き飛ばされて、地面に転がり回る。
痛てぇ……! 視界がチカチカと明滅しやがる。
なんとか気力を振り絞って立ち上がる。すると、今度は顎に衝撃が走った。
「あ……っ」
脳が掻き回されるような不快感。そして、視界がさらに明滅し、全身から力が抜けていくのを感じる。
「ちっ、人の獲物奪ってんじゃねぇよ」
「あなたがさっさと仕留めないからだよ」
ぼやけてくる意識の中で、二人の会話がうっすらと聞こえてくる。
「……娘……こうか」
「はあ!? なん……逃……よ!」
徐々にそれさえも聞こえなくなってきた。
このままじゃ、確実に殺……され……。
最後に、微かに二人が倒れている方向へ手を伸ばし、そして俺の意識は暗闇へと沈んでいった。
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