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三章 天才と凡才
ようこそ、あたしの城へ
しおりを挟む宿屋の自分の部屋にて。
俺は、黙々と作業に勤しんでいた。
「――で、何してるんですか?」
真剣な空気を壊すように、耳馴染みのある声が聞こえてきた。
「何が」
端的に質問の真意を聞くと、「いやだから」と続けた。
「何を作ってるのかなー、っと思いまして」
レイはそう言うと、俺の手元を指さした。
ああ、その事か。
「お前も、ある程度戦えるようになる必要があるだろ。その時のための、武器だよ」
「えー、別にいいですよー。ほら、君が守ってくれたら安全じゃないですか?」
上目遣いでちらと見上げてくるが、どうせ戦うのが面倒くさいとかの理由を上塗りしただけなので特に動じることはない。
「そういう訳にもいかないだろ。俺だって付きっきりでいられる訳じゃねぇし、これからまた街から街へと移動するかも知れない。そんな時、自分の身を守る術がなかったら不安だろ?」
盗賊経験から、レイはそこそこ動ける。が、それは一般人に比べたらで、魔物に襲われればレイの命が危ない。なので、ある程度身を守る術を身につかせるため武器を作っているのだ。
「ふーん。キミもそんなふうに人を気遣えるんだね」
「お前は俺をなんだと思ってんだ。ちなみに、お前の分もあるぞ」
「……ふーん。そうかい」
言うと、ふいっとそっぽ向いてしまった。
……怒らしたか、興味無いかのどっちかか。多分。
「……あー、そーいえば、探してた人、見つかったんですか?」
不意に、思い出したようにそんなことを尋ねてくるレイ。
「まあ、見つかった。明日改めて会うことになったが」
「へー、どんな人なんですか?」
どんな人……か。
思い浮かべてみるが、適切な表現が出てこない。
「……頼れる人……かな?」
苦し紛れに出した答えに、ほうほうと頷くレイ。
例え、基本的には引きこもりだろうがなんだろうが、幹部の司令塔みたいな立場だったから頼れる人という表現で大丈夫なはずだ。
「ってか、なんでこの部屋にいるんだよ、お前ら。わざわざ別々の部屋とったのによ」
さらっとここにいるのでスルーしていたが、よく考えれば、ここは俺が借りた一人部屋だ。こいつらにはそれぞれ部屋を割り振っていたはず。
「いやいや、報連相は大事ですよー」
ほうれん草? え、なんで野菜の話してんの。部屋割りに野菜関係ある?
「ちょっと何言ってんのかわかんない」
「あー、なんかこの人勘違いしてる」
ふっと小馬鹿にしたように笑ってきたのは、今まで会話に入ってこようとしなかったセシルだった。
「なんの勘違いだよ」
「報連相って、それぞれの言葉の頭文字をとった略語だよ」
略語……? ああ、なんか言葉を略すやつか。
となると、なんの略称なのかだが……。
「報復、連鎖、葬式の略か?」
「それ死んでない?」
「その発想が出てくるキミが怖いんだけど……」
違うのか。まあ、復讐に葬式は含まれないしなぁ……。
「報告、連絡、相談の略称だよ」
セシルが指をふりふり教えてくれる。
……というか、二文字の言葉を一文字に変える必要はどこにあるんだ。あれか、なんか言いやすさとかテンポとかか。……わっかんねぇなぁ。
「というか、お前らは何してたんだよ。俺を置いて」
恨みを込めた眼差しを向けると、気まずそうに視線をそっとそらす二人。
「罪悪感があるのか」
俺がそう尋ねると、レイは「やー、たはは」と苦笑を浮かべて口を開いた。
「いやまあ、さすがに悪いとは思ってますよ」
「でも、人探しって面倒じゃない?」
でもってなんだよ、でもって。
というか、なんか俺の言葉の意味勘違いしてないか、こいつら。
「俺が言ったのは、お前らに罪悪感ってものが備わってたんだっていう意味だ」
「もしかして私、そんな非道な人間だと思われてたの!?」
「キミが一番罪悪感が備わってないと思うんだけど」
レイは純粋な驚きを、セシルは疑問を俺に投げかけてくる。
いや、俺だって罪悪感とかあるぞ。……えーと、ほら、具体的には特にないが……ともかく罪悪感は備わっているはずだ。
「はい、この話はおしまい。ほら、さっさと自分の部屋に戻る」
「都合が悪くなったら逃げるんですか?」
「うわー、ダメな大人の典型だね」
レイとセシルが散々言ってくるが、俺には何一つ響いてこない。
盗賊をやってた時点で、ダメな大人だからな。え、八代? あいつはもう色々とダメだろ。
「ほら、いいからさっさと寝なさいな。あと、明日も自由行動していいからな」
二人を外へと押しやりながらそう言うと、二人とも何言ってんのこいつ? 的な目でこちらを見てきた。
「明日はその探してた人と会うんじゃないんですか?」
「ああ。だが、明日は俺一人で会うことになった。……まあ、今日も一人だったけどな」
特に深い理由があるわけではないが、いきなりこの二人を紹介するのは気が引けた。
彼女は八代みたいにコミュ障ってわけじゃないから問題はないと思うのだが、如何せん彼女はかなりいい性格をしている。
もしも尋ねる内容が彼女にとって都合の悪い内容だった場合、レイやセシルへと話題を移すだろう。
つまり、話が脱線しまくって別の駅に到着してしまう恐れがあるわけだ。なので、今回は一人で会いに行くことにしたのだ。
そんな感じの話をすると、呆れた様子で「分かりました」と言い、一応は納得してくれた。
「では、明日はゆったりと昼寝でもしますかー」
「いっつも寝てるような気がするんだけど……」
二人をそれぞれの部屋へ送り出すと、バタンっと扉を閉めると、これから武器作りに勤しむ気分ではなくなり、布団へ飛び込んだ。
「はあ……」
明日の話の運び方を考えながら、目を閉じるのだった。
☆ ☆ ☆
「よう、来たか」
昨日別れた路地裏へ行くと、そこには既にナツミさんの姿があった。
「ついてきな、話はそこで聞いてやる」
返事を聞かぬまま、さっさと行ってしまう。俺はその後ろを早歩きで追いかけ、横に並んだ。
「ナツミさん、ちゃんと飯食べてるか?」
俺がそう尋ねると、煩わしそうに視線を向けてきた。
「なんでお前がそんなこと気にすんだ」
「元幹部の中で一番一人暮らしが不安だったから……」
実際、どこかで野垂れ死にしている可能性も考えていたため、こうして会うことが出来てほっとしている面もある。
「……大丈夫だよ。しっかり給料貰って、それで食っていっている」
「え!? 働いてんのか!?」
あの働いたら負けとか言ってたナツミさんが!? 働かずに飯を食いたいと明言してるナツミさんが!?
と、そんな話をしていると、真っ暗な地下へとたどり着いていた。
「……これ、道間違ってない?」
「あたしが道間違えると思ってんのか?」
「迷子になるタイプのやつが言うセリフじゃねぇか」
ただ、ナツミさんに限って間違える訳では無いだろうし、大丈夫だと思うのだが……。
「……あー、そーいや、なんで俺がサトウって名前にしたの知ってんだ?」
訪れた沈黙を破るように、そう声をかける。
「普通に山田から聞いたぞ?」
こともなげにさらりと答えるナツミさん。
というか、山田と連絡とってたんだ。この二人ってそんなに仲良かったか?
「そーですか……。俺にプライバシーとかねぇんですかね……」
「お前らはデリカシーとポリシーもないだろ」
「うぐっ……」
図星をつかれておかしな声をあげてしまう。
というか、話の脱線の仕方おかしくありませんかね。ほんと。
「……それで、ナツミさん的にはどー思いますか? サトウって苗字は」
恐る恐る聞いてみる。
八代は特に何も言わなかったが、ナツミさんはどうかは分からない。
だが、ナツミさんはこちらには一切目もくれず、ただぽつりと呟くように言葉を返してくる。
「……別に、あたしはどーでもいい。戒めなのか、自己の確立なのか知らないけど、それについてどうこう言う気はねーよ」
予想通りの返答。
きっと、こんな感じの内容が帰ってくるだろうとは考えていた。
サトウと名乗った理由は、自分でも何故なのか分かっていない。けれど、ナツミさんがあげた二つのどちらかなのだと思う。
「というか、会った時に聞こうとは思ってたんだけどよ。なんでお前一人で来たんだ?」
その問いに、反射的にレイとセシルの顔を思い浮かべる。
「ちょっと話の邪魔になるかなと思ってな。ってか、なんであの二人のこと知ってんだよ」
「山田から聞いた」
八代ぉ……。あいつ、今度あったら紐なしバンジーを体験させてやろう。クックックッ、あいつの泣き叫ぶ姿が目に浮かぶぜ……でも引っ張りあげるのは面倒だなぁ。
そんなことを考えながら悪い笑みでクックックッと笑っていると、ナツミさんは変な人を見る目でこちらを見ていた。
「え、何笑ってんだ……怖っ」
「俺の情報がダダ漏れな方が怖ぇよ」
「大した情報持ってないんだし、大丈夫だろ」
言い返すが、興味が無いとばかりにばっさりと切られてしまった。
「……で? そろそろどこ向かってんのか教えてくれませんかね?」
「あと少しのところで聞くか、普通。もうちょい早くに聞けよ」
「あとどれぐらいの距離かなんて知らねぇもん」
むしろここまで何も聞かずについてきたことを褒めて欲しい。全然危機感がねえよな! って。……いや、これ褒められてねぇな。
「今向かってんのは、あたしの職場の地下だ」
「職場に向かうんなら百歩譲って分かるんだが、どうして地下に?」
突然職場に連れてこられるのも訳わからないけどな。
「地下ならどれだけ叫んでも聞こえねぇだろ?」
「お前は俺に何をしようとしてんだよ……」
「冗談だ」
「顔見えねぇんだから、冗談だってわかる声音で言ってくれ」
全然トーンが変わらねぇから冗談かどうか分からないんだよなぁ……。
と、不意にナツミさんが立ち止まり、ジャラジャラと金属がぶつかる音が聞こえてきた。
そして、続いてキィッと音がして、眩い光に目の前が真っ白になる。
「うわっ……、外か……!」
「地下だって」
徐々に白い光が収まって、はっきりとその奥が視認できるようになった。
「ここは……?」
思わず口から疑問の声が漏れ出てしまう。
その問いは、部屋の中へ数歩入ってくるりとターンすると、得意げに答えてくれた。
「ここは、あたしの第二の職場。ま、いわゆる研究所みたいなもんだ」
言うと、ツカツカと奥へと進み、かけてあった白衣を身に纏う。そして、意味ありげに紫色の瞳を光らせると、こう言った。
「ようこそ、あたしの城へ」
そこは、外のファンタジーな街並みとは全然違い、メカメカしい機械が至る所にある。
その異色な部屋の中で、一番俺の目を引いたのは、
――大きな瓶のようなものに入れられ、ピクリとも動かない、人間に似た数多くのナニカだった。
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