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12章 クールな受付嬢も暑さでとろとろに溶けてしまうお話
286:観光
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この『魂喰らいの水晶』こそ、アシュワース氏が古代魔術の秘儀を解析し、独自に改良を加えた、彼の最高傑作の一つでした。表向きは単に光景を記録するだけの魔導水晶、しかしその実態は、その場で発生した、あらゆる感情エネルギー、特に、生命の根源たる性の交わりから生まれる魔力を吸収し、その内部で、極めて希少な錬金術素材『賢者の涙』へと変換、精製する、悪魔的な魔導具。そうして精製された『賢者の涙』は、神話級の魔導具を創造するための触媒となるとも言われる、まさに彼の傑作だったのです。
やがて、部屋に満ちていたむせ返るような匂いが、完全に水晶の中へと吸い尽くされると、その中央に、一滴の、まるで朝露のように、しかし虹色の輝きを放つ、美しい液体が、ぽつりと生成されていました。
「うむ。上出来だ」
アシュワース氏は、満足げに頷くと、その水晶を懐にしまい、同じ形をした新しい水晶をその場所に置きなおしました。そして今度は、まるで指揮棒のような、細く、銀色に輝く、別の魔導具を取り出します。
「君たちには、少し、夢を見てもらうとしよう。楽しい、楽しい、南国の夢をな」
彼が、その『忘却の杖』を、眠る若者たちにむかって、軽く一振りすると、杖の先端から、ふわり、と、銀色の光の粒子が放たれ、若者たちの額へと、吸い込まれていきました。これは、対象の記憶を消去するのではなく、特定の記憶を、別の、当たり障りのない記憶へと『上書き』する、極めて高度な精神干渉魔術です。彼らの記憶の中で、二人の美しい人妻の存在は、ただ「飲みすぎて、前後不覚になった」という、ありふれた思い出へと、完全に書き換えられてしまったのでした。
「さて、仕上げだ」
アシュワース氏は、最後に、ギルドでも安価で販売されている『清掃のスクロール』を取り出すと、その魔力を解放します。ぱん、と乾いた音と共に、ベッドの上を覆っていた、おびただしい量の体液の染みが、まるで最初から何もなかったかのように、跡形もなく消え去りました。若者たちの身体も、そして、ぐったりと眠る二人の人妻の身体も、魔法の力で、生まれたばかりのように清められます。
「よし。お前たち、彼女たちを、丁重に、別荘へと運べ。傷一つ、つけるなよ」
アシュワース氏の命令に、二体の戦闘用ゴーレムが、無機質な単眼を青白く光らせ、音もなく動き出しました。その巨躯に似合わぬ、驚くほど繊細な動きで、リーゼさんとセレスさんの、柔らかな肢体を、それぞれ、まるで壊れ物を扱うかのように優しく、しかし有無を言わせぬ力強さで、その鋼の腕に抱き上げます。
こうして、南国のヤリ部屋には、ただ、自分たちが犯した罪も、その相手の顔さえも忘れ、すべてを出し尽くして、満足しきった穏やかな寝顔で眠る、四人の若者たちだけが、静かに取り残されたのでした。三つの月が、そんな彼らの無垢な寝顔を、ただ、静かに、そしてどこか嘲笑うかのように、照らし続けていました。
やがて、部屋に満ちていたむせ返るような匂いが、完全に水晶の中へと吸い尽くされると、その中央に、一滴の、まるで朝露のように、しかし虹色の輝きを放つ、美しい液体が、ぽつりと生成されていました。
「うむ。上出来だ」
アシュワース氏は、満足げに頷くと、その水晶を懐にしまい、同じ形をした新しい水晶をその場所に置きなおしました。そして今度は、まるで指揮棒のような、細く、銀色に輝く、別の魔導具を取り出します。
「君たちには、少し、夢を見てもらうとしよう。楽しい、楽しい、南国の夢をな」
彼が、その『忘却の杖』を、眠る若者たちにむかって、軽く一振りすると、杖の先端から、ふわり、と、銀色の光の粒子が放たれ、若者たちの額へと、吸い込まれていきました。これは、対象の記憶を消去するのではなく、特定の記憶を、別の、当たり障りのない記憶へと『上書き』する、極めて高度な精神干渉魔術です。彼らの記憶の中で、二人の美しい人妻の存在は、ただ「飲みすぎて、前後不覚になった」という、ありふれた思い出へと、完全に書き換えられてしまったのでした。
「さて、仕上げだ」
アシュワース氏は、最後に、ギルドでも安価で販売されている『清掃のスクロール』を取り出すと、その魔力を解放します。ぱん、と乾いた音と共に、ベッドの上を覆っていた、おびただしい量の体液の染みが、まるで最初から何もなかったかのように、跡形もなく消え去りました。若者たちの身体も、そして、ぐったりと眠る二人の人妻の身体も、魔法の力で、生まれたばかりのように清められます。
「よし。お前たち、彼女たちを、丁重に、別荘へと運べ。傷一つ、つけるなよ」
アシュワース氏の命令に、二体の戦闘用ゴーレムが、無機質な単眼を青白く光らせ、音もなく動き出しました。その巨躯に似合わぬ、驚くほど繊細な動きで、リーゼさんとセレスさんの、柔らかな肢体を、それぞれ、まるで壊れ物を扱うかのように優しく、しかし有無を言わせぬ力強さで、その鋼の腕に抱き上げます。
こうして、南国のヤリ部屋には、ただ、自分たちが犯した罪も、その相手の顔さえも忘れ、すべてを出し尽くして、満足しきった穏やかな寝顔で眠る、四人の若者たちだけが、静かに取り残されたのでした。三つの月が、そんな彼らの無垢な寝顔を、ただ、静かに、そしてどこか嘲笑うかのように、照らし続けていました。
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