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10章 危ないお店に潜入したら当然のごとくぐちょぐちょえっちになってしまうお話
173:依頼★
しおりを挟むその日、港湾要塞都市アストリナの冒険者ギルドにもたらされた依頼は、熟練の冒険者たちを統括するアシュワースすら顔を曇らせるほどに陰惨で、かつ厄介なものであった。依頼主は、この街の治安維持を担うアストリナ自警団。その内容は、近年急速に勢力を拡大させている盗賊団の壊滅に向けた、大規模な潜入調査であった。
奴らの根城は、都市遺跡エンブレス。アストリナを含む周辺諸都市を結ぶ街道網のまさに中心に位置するその遺跡は、かつては交通の要衝となるべく、五百年ほど前に近隣の都市国家群が共同で出資して建設した人工都市であった。しかし、完成から二百年と経たぬうちに、周囲を取り囲む山々が次々と噴煙を上げ始め、火山性地震と有毒ガスの頻発により、人々は泣く泣くその地を放棄せざるを得なくなったのである。皮肉なことに、活発な地熱活動はエンブレスに温暖な気候と豊富な温泉をもたらしており、火山噴火の脅威さえなければ、まさに理想郷と呼ぶにふさわしい土地であった。
盗賊団は、その放棄された遺跡の地理的優位性と、火山活動という天然の要害に目をつけたのだ。彼らはエンブレスを一大拠点とし、周辺の村々から年頃の娘たちを組織的に誘拐。男を喜ばせるためだけの性的技能と、決して逆らわぬ従順な精神を徹底的に調教した上で、大陸の裏社会に広がる闇のネットワークを通じて「商品」として売りさばき、莫大な利益を上げているという。その手口は狡猾であり、自警団が何度か討伐隊を派遣したものの、複雑な地形と巧妙に仕掛けられた罠に阻まれ、多大な犠牲を出して撤退するほかなかった。
自警団からギルドへの正式な依頼は、この盗賊団の全容解明。誘拐の手口、構成員の数、拠点の正確な位置と内部構造、そして何よりも、彼女たちを買い付けている顧客リストの入手が最優先事項として挙げられていた。ギルドマスターであるアシュワースは、薄暗い執務室で依頼書を読み下すと、重々しく顔を上げ、目の前に立つ一人のくノ一にその重責を託した。東方の国から来たシノビ、黒羽・小雪である。
「この街のスラムに『赤煙亭』と呼ばれる安酒場がある。どうもこの店のウエイトレスが、ここ数ヶ月で何人も姿を消しているらしい。だが、店側はそれを気にする素振りも見せず、矢継ぎ早に新しい求人を出し続けている。実に怪しいと思わんかね」
アシュワースのねっとりとした視線が、小雪の全身を舐めるように走る。その視線に射抜かれ、小雪の身体の奥が微かに疼いた。領主邸で受けた任務の折、ユーノが作り出した劇薬「ちゃんとげんきになるぽーしょん」の原液を飲み干してしまった影響は、未だ彼女の肉体を内側から蝕み続けている。それは彼女の生命力を根源から活性化させると同時に、心身を極めて発情しやすい状態へと変質させてしまう、甘美で呪わしい媚薬でもあったのだ。
「……小雪さん。顔がずいぶんと赤いようだが、大丈夫かね?」
アシュワースの指摘に、小雪の肩が微かに震える。大丈夫なはずがない。彼の執務室に漂う、革とインクと、そして壮年男性特有の濃い匂いが、過敏になった嗅覚を刺激し、それだけで下腹部の奥がきゅんと熱くなる。肌の下を微かな熱が絶えず走り回り、呼気は自分でもわかるほど甘く湿っていた。
「……問題ない。続けて。」
かろうじて平静を装い、短く促す。その声が、ほんの少しだけ上ずってしまったことに、彼女自身は気づいていない。今回の任務は、おとり捜査。小雪自身が「商品」となるべく身の上を偽り、盗賊団の誘拐部門に捕らえられることで、奴らのアジトであるエンブレスへの道を切り開くという、極めて危険な作戦である。そして、その誘拐部門として最も疑わしいのが、スラムの安酒場「赤煙亭」というわけだ。
「うむ。例によって、いくつか役に立つものを渡しておこう」
アシュワースはそう言うと、執務机の引き出しからいくつかの魔道具を取り出した。掌に収まるほど小さな銀細工の鳥。これは緊急時にギルドへ現在位置を知らせるための発信機だ。そして、指輪に偽装された解錠用の極細ワイヤーセット。さらに彼は、小雪に向かって指を組み、古ドワーフ語の呪文を低く唱え始めた。
「危険な任務になる。切り札として、身体強化の言霊をかけておこう。この呪文を『起動』と念じることで、一時的に君の筋力と敏捷性は限界を超えて上昇する。ただし、効果時間は極めて短い。代償として術後には相応の副作用が現れる。魔力循環にも相当な負荷がかかるから、本当に最後の手段として使いなさい」
「了解した。直ちに取り掛かる」
魔道具を受け取り、深く一礼すると、小雪は足早に執務室を後にした。一刻も早く、このむせ返るような男の匂いが充満する空間から逃げ出したかった。扉が閉まる直前、アシュワースが「健闘を祈るよ。なに、君ならきっと、この任務を立派に『楽しんで』くれると信じている」と呟いたのは耳に入っていない。
ギルドの一階に下りると、冒険者たちの熱気と汗、そしてエールの匂いが混じり合った喧騒が小雪を包み込む。しかし、今の彼女にとって、その猥雑な空気さえもが身体を内側から煽る刺激でしかなかった。すれ違う筋骨隆々の戦士や、ぎらついた目をした盗賊たちの無遠慮な視線が、まるで素肌を直接撫でるかのように感じられ、そのたびに背筋がぞくぞくと粟立ち、秘裂の奥がじゅわりと濡れていく。
(ああ、だめ……♡ こんな時に……♡ からだが、あつくて、いうことをきかない……♡)
許嫁である早瀬の顔が脳裏をよぎる。彼に捧げた操が、見も知らぬ男たちの視線だけで汚されていくような背徳感。そして、若き主君ユーノに無理やりこじ開けられ、その灼熱を注ぎ込まれた記憶。それらの断片が、媚薬の効果によって増幅され、彼女の理性をぐちゃぐちゃにかき乱す。果たして小雪は、この淫らな呪いを抱えたまま、無事に任務を果たすことができるのだろうか。その道のりが、想像を絶する快楽と屈辱に満ちていることを、彼女はまだ知る由もなかった。
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