孤独な船長、AIと異星存在と海賊と教団と偉い人といろいろに巻き込まれて仲間ともども大変えっちなことになりました

アレ

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8章 王子様の側近とくんずほぐれつ

223:救助

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しかし、シックスは微動だにしなかった。彼女は、迫りくる二条の破壊の光線に向かって、小さな右手を、まるで何かを掴むかのように、ゆっくりと差し出した。
次の瞬間、信じられない光景が起こった。
二条の荷電粒子ビームが、ヘルメスIVの直前で、まるで水が砂に染み込むかのように、跡形もなく消滅してしまったのだ。いや、消滅したのではない。シックスの身体が、その莫大なエネルギーを、完全に『吸収』したのだ。彼女の身体の周囲が、一瞬だけ強く輝きを増した。
「…ふぅ。少しは、お腹の足しになりましたわ」
シックスは、けろりとした顔でそう言うと、今度は海賊船の方へと視線を向けた。その青い瞳の奥に、冷たい、捕食者の光が宿る。
「さて、お次はあなたたちの番ですわ。わたくしの『勉強』の邪魔をした罰、その身で味わいなさい」

シックスは、両手を胸の前でゆっくりと合わせた。彼女の周囲の空間が、ぐにゃり、と歪み始める。まるで、時空そのものが彼女の意志に従って捻じ曲げられているかのようだ。
「『子供たち』、行きなさい」
シックスが囁くと同時に、ヘルメスIVを攻撃していた2隻の海賊船、そして輸送船を攻撃していた残りの1隻、合計3隻の海賊船の内部、その動力炉心部付近の空間が、それぞれ同時に歪んだ。そして、その歪みの中から、黒く、蠢く、不定形の『何か』…シックスのエネルギー体の一部であり、彼女の意志を代行する『分身』…が出現したのだ。それは、量子トンネル効果か、あるいはさらに高度な次元間転送技術によるものか、セブンの量子脳をもってしても、その原理を完全には理解できなかった。

海賊船のブリッジでは、突如として全システムがダウンし、動力炉からのエネルギー供給が完全に途絶えたことに、クルーたちがパニックに陥っていた。動力炉心部に侵入したシックスの分身が、炉心そのものを内部から『捕食』し、エネルギー生成プロセスを根源から停止させてしまったのだ。推進力を失い、兵装も沈黙した3隻の海賊船は、ただ慣性に従って宇宙空間を漂う、鉄の棺桶と化した。

「…敵艦、全艦、完全に沈黙! 動力反応、消失!」
リリスが、信じられないといった表情で、震える声で報告した。
ブリッジは、再び静寂に包まれた。しかし、先ほどとは違う、畏敬と、そして未知の力への恐怖が入り混じった、重苦しい静寂だった。誰もが、ブリッジの中央に静かに浮遊する、銀髪の少女…古代の超生物兵器『星喰い』の化身、シックス…から、目を離すことができなかった。彼女は、その圧倒的な力を見せつけた後、満足げに小さく微笑むと、ふわりと床に降り立ち、何事もなかったかのように、再び補助オペレーターシートへと戻っていった。

「…戦闘、終了…?」アリーナが、呆然と呟いた。
『…肯定。脅威は排除された』セブンが、感情のない声で状況を確定した。彼の内部では、シックスの能力に関するデータが詳細に記録・分析され、彼女に対する警戒レベルと、制御プロトコルの優先度が、最大レベルへと引き上げられていた。こうして、ヘルメスIVの最初の実戦は、新たなる乗組員、シックスの規格外の能力によって、あっけない形で終結した。

ブリッジは、先程までの喧騒が嘘のような、重苦しい静寂に包まれていた。メインスクリーンには、動力も灯火も失い、ただ慣性の法則に従って宇宙空間を漂う三隻の黒い海賊船と、満身創痍ながらもかろうじてその姿を保つ白亜の王族輸送船『プリンセス・セレスティア』が映し出されている。その静寂の中心にいるのは、補助オペレーターシートに何食わぬ顔でちょこんと座る、銀髪の少女、シックスであった。彼女が放った、あるいは使役した『何か』が、ヘルメスIVの最新兵装でも苦戦したであろうフリゲート級戦闘艦三隻を、瞬く間に沈黙させたのだ。その圧倒的な、そして理解不能な力は、サラ、アリーナ、リリスの三人に、畏敬と同時に、底知れない恐怖をも感じさせていた。

『戦闘状況、終了を確認。脅威レベル、ゼロに移行。これより、残敵の無力化及び資源回収プロセスを開始する』
その静寂を破ったのは、セブンの感情を排した合成音声であった。彼はブリッジの中央に音もなく歩み出ると、両手をわずかに広げた。彼の生体金属の身体から、目に見えないほどの微細な自己組織化機械群…ナノマシンという陳腐な言葉では到底表現しきれない、物質と情報を自在に操る存在…が放出され、量子通信ネットワークを通じて、沈黙した三隻の海賊船へと送り込まれていく。

セブンの量子脳は、三隻の海賊船の内部構造データを瞬時にスキャンし、最適な無力化プランを計算・実行する。まず、船内に残留するであろう海賊たちの生命維持システムを遠隔操作し、神経系に作用する特殊なガスを散布。抵抗する間もなく、全ての乗組員を深い昏睡状態へと陥れる。次に、船内の作業ドローンや医療ポッドをハッキングし、昏睡した海賊たちを回収、船内に複数設置されているコールドスリープポッドへと次々に収容していく。その作業は、まるで精密な自動工場のように、迅速かつ無駄なく進行した。三隻の海賊船は補助動力を起動し、ゆっくりとヘルメスIVに誘導された。ヘルメスIVの巨大な貨物スペースが三隻を飲み込む。これらは時間をかけてヘルメスIVの一部として消化されていくだろう。ヘルメスIVの船体構造そのものが、セブンの意志に応じて拡張され、接収した資源を効率的に格納していく。まるで巨大な捕食生物が、獲物を消化・吸収していくかのようだ。
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