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第61話 傷ついた元仲間
悪徳領主バルカスとの戦いが終わってから、エデンには本当の意味での平穏が訪れた。
領主の圧政から解放された周辺の村々からも、エデンの噂を聞きつけて移住を希望する人々が後を絶たず、俺たちの楽園は日に日にその規模を拡大し豊かになっていった。王都では辺境伯を打ち破った謎の村『エデン』の存在が、貴族たちの間で大きな関心の的となっているらしかったが、今の俺たちには関係のない話だった。
俺たちはただ目の前の日常を、仲間たちと共に大切に生きている。それだけで十分に満たされていた。
そんなある日の午後。
見張り台から来訪者を告げる鐘が鳴った。敵襲を告げるものではない、穏やかな響きだ。またギデオンさんのような行商人が来たのだろうか。村の子供たちが珍しい品物が見られるかもしれないと、わくわくしながら門へと駆けていく。
俺も、ちょうど村長との打ち合わせを終えたところだったので、何気なく門の方へと向かった。
だが、門の前に立っていたのは陽気な行商人ではなかった。
そこにいたのは一人の男だった。
その姿はあまりにも惨めだった。身にまとった旅人の服は擦り切れ、泥と埃で汚れきっている。無精髭は伸び放題で、その顔には深い疲労と絶望の色が刻み込まれていた。彼は門に立つ見張りの若者に何かを告げると、まるで糸が切れたようにその場に崩れ落ちた。
「おい、大丈夫か!」
見張りの若者たちが慌てて駆け寄る。
俺もただ事ではない気配を感じて、その輪の中へと入っていった。男は意識を失っているようだったが、その呼吸は浅く、時折身体が小さく痙攣しているのが分かった。
「ひどい消耗だ。とにかく教会へ運ぼう」
俺の指示で若者たちは男を担ぎ上げ、セレスティアがいる教会へと急いだ。
教会の客間に男を寝かせ、すぐにセレスティアが駆けつけてきた。彼女は男の衰弱しきった様子を見て眉をひそめた。
「なんてこと……。一体どれほどの距離を飲まず食わずで歩いてこられたのでしょうか」
彼女はまず男の身体を清めるために、濡れた布でその顔を拭き始めた。泥と汚れが落とされ、その下から現れた素顔。
その顔を見た瞬間、俺は息を呑んだ。
時間が止まったかのように感じた。
「……嘘だろ」
俺の口から掠れた声が漏れた。
忘れられるはずがない。その鋼のような意志を宿していたはずの厳しい顔立ち。短く刈り込まれた銀灰色の髪。
間違いない。
この男はダリウス。
かつて俺が所属していた勇者パーティー『光の剣』で最強の剣士と謳われた男。
剣聖、ダリウスその人だった。
「リアム様? どうかしましたか? この方のお知り合いですか?」
俺の異常な様子に気づいたセレスティアが、不思議そうに尋ねてくる。
俺はすぐには答えられなかった。頭の中が混乱していた。なぜ彼がここに? Sランクパーティーの剣聖である彼が、なぜこんなボロボロの姿で辺境の村に?
俺は彼の身体を注意深く観察した。
その右肩には古い、しかし深くえぐられたような剣傷の痕が残っていた。治癒はされているが、その傷が彼の剣士としての動きに少なからぬ影響を与えていることは明らかだった。
そして何より、彼の全身を蝕んでいるのはその傷ではなかった。時折彼の指先がぴくりと痙攣している。それは俺がパーティーにいた頃、彼が神速の剣を使った後に決まって現れていた症状だった。
(……やはり、そうか)
俺は確信した。彼は自らの剣技の『代償』にその身を蝕まれているのだ。俺という防波堤を失った結果、その反動が彼の神経を少しずつ破壊し始めている。
彼はその苦しみから逃れるため、最後の望みを託してこの村に来たのだろう。『どんな呪いも癒やす』という噂だけを頼りにして。
俺の心に一瞬だけ、黒い感情がよぎった。
彼は俺を追放したパーティーの一員だ。俺が「お荷物」だと罵られていた時、彼は何も言わずただ黙ってそれを見ていただけだった。見捨てられたという思いがなかったわけではない。
このまま、見なかったことにしてしまうか?
自業自得だ、と突き放すか?
だが、その黒い感情はすぐに霧散した。
目の前にいるのはもはや誇り高き剣聖ではない。ただ苦しみ、助けを求めている一人の傷ついた人間だ。
俺はもう昔の俺ではなかった。俺には仲間がいる。居場所がある。過去の恨みに囚われているほど、俺の心は狭くなかった。
俺はセレスティアに向き直った。
「……ああ、知り合いだ。昔のな」
俺はそれ以上は説明しなかった。そして彼女の目をまっすぐに見つめて頼んだ。
「セレスティア。彼を助けてやってくれ」
その言葉にセレスティアは一瞬だけ驚いたような顔をしたが、すぐに全てを察したように、優しくそして力強く頷いた。
「はい、リアム様。お任せください」
彼女はダリウスの傷ついた身体の上にそっと手をかざした。治癒の光が、その場を暖かく包み込んでいく。
その様子を部屋の入り口から、ルナリエルとソフィアが静かに見ていた。
「……ふん。あなたの元仲間ですって? 見るからに弱りきっているじゃない。本当に剣聖だったのかしら」
ルナリエルはいつものように辛辣な言葉を口にしたが、その声には非難の色はなかった。ただ俺の決断を静かに見守っているだけだった。
ソフィアはその紫色の瞳で、ダリウスの身体を分析するように見つめていた。
「……興味深い症例ですね。彼の身体を蝕んでいるのは外傷や病ではない。彼自身の力が生み出す内部からの自己崩壊。一種の『代償』の暴走と見るべきでしょうか。リアムさん、あなたのスキルがなければ治癒は難しいかもしれません」
彼女は的確にダリウスの状態を見抜いていた。
セレスティアの治癒魔法は彼の外傷を癒やし、消耗した体力を回復させていった。だが彼の神経を蝕む根本的な『代償』までは取り除くことができない。
やがてダリウスの瞼がゆっくりと震え始めた。彼が意識を取り戻そうとしている。
彼の虚ろだった瞳に少しずつ焦点が合っていく。そしてその視界に、ベッドの脇に立つ俺の姿がはっきりと映し出された。
「……」
ダリウスの顔が驚愕に染まった。
そしてその表情は、すぐに信じられないものを見るような深い困惑へと変わっていった。
「……リアム……?」
彼の唇から掠れた、しかし確かに俺の名前が紡がれた。
「なぜ……お前がここに……?」
彼は自分が流れ着いた楽園の噂の主が、かつて自分たちが見下し追放した、あの『お荷物』だったという残酷な事実に、ようやく直面したのだった。
領主の圧政から解放された周辺の村々からも、エデンの噂を聞きつけて移住を希望する人々が後を絶たず、俺たちの楽園は日に日にその規模を拡大し豊かになっていった。王都では辺境伯を打ち破った謎の村『エデン』の存在が、貴族たちの間で大きな関心の的となっているらしかったが、今の俺たちには関係のない話だった。
俺たちはただ目の前の日常を、仲間たちと共に大切に生きている。それだけで十分に満たされていた。
そんなある日の午後。
見張り台から来訪者を告げる鐘が鳴った。敵襲を告げるものではない、穏やかな響きだ。またギデオンさんのような行商人が来たのだろうか。村の子供たちが珍しい品物が見られるかもしれないと、わくわくしながら門へと駆けていく。
俺も、ちょうど村長との打ち合わせを終えたところだったので、何気なく門の方へと向かった。
だが、門の前に立っていたのは陽気な行商人ではなかった。
そこにいたのは一人の男だった。
その姿はあまりにも惨めだった。身にまとった旅人の服は擦り切れ、泥と埃で汚れきっている。無精髭は伸び放題で、その顔には深い疲労と絶望の色が刻み込まれていた。彼は門に立つ見張りの若者に何かを告げると、まるで糸が切れたようにその場に崩れ落ちた。
「おい、大丈夫か!」
見張りの若者たちが慌てて駆け寄る。
俺もただ事ではない気配を感じて、その輪の中へと入っていった。男は意識を失っているようだったが、その呼吸は浅く、時折身体が小さく痙攣しているのが分かった。
「ひどい消耗だ。とにかく教会へ運ぼう」
俺の指示で若者たちは男を担ぎ上げ、セレスティアがいる教会へと急いだ。
教会の客間に男を寝かせ、すぐにセレスティアが駆けつけてきた。彼女は男の衰弱しきった様子を見て眉をひそめた。
「なんてこと……。一体どれほどの距離を飲まず食わずで歩いてこられたのでしょうか」
彼女はまず男の身体を清めるために、濡れた布でその顔を拭き始めた。泥と汚れが落とされ、その下から現れた素顔。
その顔を見た瞬間、俺は息を呑んだ。
時間が止まったかのように感じた。
「……嘘だろ」
俺の口から掠れた声が漏れた。
忘れられるはずがない。その鋼のような意志を宿していたはずの厳しい顔立ち。短く刈り込まれた銀灰色の髪。
間違いない。
この男はダリウス。
かつて俺が所属していた勇者パーティー『光の剣』で最強の剣士と謳われた男。
剣聖、ダリウスその人だった。
「リアム様? どうかしましたか? この方のお知り合いですか?」
俺の異常な様子に気づいたセレスティアが、不思議そうに尋ねてくる。
俺はすぐには答えられなかった。頭の中が混乱していた。なぜ彼がここに? Sランクパーティーの剣聖である彼が、なぜこんなボロボロの姿で辺境の村に?
俺は彼の身体を注意深く観察した。
その右肩には古い、しかし深くえぐられたような剣傷の痕が残っていた。治癒はされているが、その傷が彼の剣士としての動きに少なからぬ影響を与えていることは明らかだった。
そして何より、彼の全身を蝕んでいるのはその傷ではなかった。時折彼の指先がぴくりと痙攣している。それは俺がパーティーにいた頃、彼が神速の剣を使った後に決まって現れていた症状だった。
(……やはり、そうか)
俺は確信した。彼は自らの剣技の『代償』にその身を蝕まれているのだ。俺という防波堤を失った結果、その反動が彼の神経を少しずつ破壊し始めている。
彼はその苦しみから逃れるため、最後の望みを託してこの村に来たのだろう。『どんな呪いも癒やす』という噂だけを頼りにして。
俺の心に一瞬だけ、黒い感情がよぎった。
彼は俺を追放したパーティーの一員だ。俺が「お荷物」だと罵られていた時、彼は何も言わずただ黙ってそれを見ていただけだった。見捨てられたという思いがなかったわけではない。
このまま、見なかったことにしてしまうか?
自業自得だ、と突き放すか?
だが、その黒い感情はすぐに霧散した。
目の前にいるのはもはや誇り高き剣聖ではない。ただ苦しみ、助けを求めている一人の傷ついた人間だ。
俺はもう昔の俺ではなかった。俺には仲間がいる。居場所がある。過去の恨みに囚われているほど、俺の心は狭くなかった。
俺はセレスティアに向き直った。
「……ああ、知り合いだ。昔のな」
俺はそれ以上は説明しなかった。そして彼女の目をまっすぐに見つめて頼んだ。
「セレスティア。彼を助けてやってくれ」
その言葉にセレスティアは一瞬だけ驚いたような顔をしたが、すぐに全てを察したように、優しくそして力強く頷いた。
「はい、リアム様。お任せください」
彼女はダリウスの傷ついた身体の上にそっと手をかざした。治癒の光が、その場を暖かく包み込んでいく。
その様子を部屋の入り口から、ルナリエルとソフィアが静かに見ていた。
「……ふん。あなたの元仲間ですって? 見るからに弱りきっているじゃない。本当に剣聖だったのかしら」
ルナリエルはいつものように辛辣な言葉を口にしたが、その声には非難の色はなかった。ただ俺の決断を静かに見守っているだけだった。
ソフィアはその紫色の瞳で、ダリウスの身体を分析するように見つめていた。
「……興味深い症例ですね。彼の身体を蝕んでいるのは外傷や病ではない。彼自身の力が生み出す内部からの自己崩壊。一種の『代償』の暴走と見るべきでしょうか。リアムさん、あなたのスキルがなければ治癒は難しいかもしれません」
彼女は的確にダリウスの状態を見抜いていた。
セレスティアの治癒魔法は彼の外傷を癒やし、消耗した体力を回復させていった。だが彼の神経を蝕む根本的な『代償』までは取り除くことができない。
やがてダリウスの瞼がゆっくりと震え始めた。彼が意識を取り戻そうとしている。
彼の虚ろだった瞳に少しずつ焦点が合っていく。そしてその視界に、ベッドの脇に立つ俺の姿がはっきりと映し出された。
「……」
ダリウスの顔が驚愕に染まった。
そしてその表情は、すぐに信じられないものを見るような深い困惑へと変わっていった。
「……リアム……?」
彼の唇から掠れた、しかし確かに俺の名前が紡がれた。
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