レベル1の死に戻り英雄譚 ~追放された俺の【やりなおし】スキルは、死ぬほど強くなる~

夏見ナイ

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第51話:砦の蹂躏

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「死にやがれええっ!」

ゲートを守っていた二人の盗賊が、同時に斬りかかってきた。左右からの挟撃。連携としては悪くない。だが、俺の目には、その動きが虫の歩みのように遅く見えた。

俺は、歩みを止めることすらなかった。

すれ違いざま、ミスリルの剣を水平に一閃する。
ザシュッ、という湿った音。
二人の盗賊は、俺とすれ違った後、数歩よろめき、やがてその上半身と下半身が泣き別れになって地面に崩れ落ちた。

返り血を浴びることなく、俺は歩き続ける。
城壁の上から、矢が雨のように降り注いできた。見張りの盗賊たちが、慌てて放ったものだろう。

だが、そんなもの、俺に届くはずがない。
俺は降り注ぐ矢の軌道を全て見切り、その合間を縫うようにして、ただまっすぐに歩を進める。数本の矢が俺の体を掠めたが、ミスリ-ルレザーアーマーがそれを容易く弾き返した。

俺が、砦の巨大な木製のゲートの前にたどり着いた時、城壁の見張りたちは矢を射るのも忘れ、呆然と立ち尽くしていた。

俺は、ゲートをノックする代わりに、その中央に拳を叩きつけた。

ドッゴオオオオオオンッ!

砦全体が揺れるほどの、爆発的な轟音。
鉄で補強された分厚い木の扉が、内側に向かってくの字に折れ曲がり、蝶番から弾け飛ぶようにして吹き飛んだ。

木片と土煙が舞う中、俺は悠然と砦の中庭へと足を踏み入れた。

中庭には、騒ぎを聞きつけた十数人の盗賊たちが、武器を手に集まっていた。彼らは、吹き飛んだゲートと、そこから現れた俺の姿を見て、一様に唖然としている。

「な、なんだ、今の音は……!?」
「ゲートが……! 一撃で……!」

彼らの動揺。それこそが、俺が狙っていたものだ。

「一人残らず、潰す」

俺の低い声が、静まり返った中庭に響き渡った。
その言葉を合図に、俺は地面を蹴った。

それは、もはや戦闘ではなかった。
一方的な、蹂躙。虐殺。

俺の姿は、盗賊たちの目には捉えきれないほどの速度で、縦横無尽に駆け巡った。
一人目の喉を、剣で貫く。
二人目の頭蓋を、肘打ちで砕く。
三人目の心臓を、裏拳で抉り出す。

悲鳴を上げる暇さえ、彼らには与えなかった。
俺の剣が閃くたび、拳が唸るたび、一人、また一人と、命の灯火が消えていく。

「ひっ……! ば、化け物だ!」
「逃げろ! こいつは人間じゃねえ!」

ようやく我に返った盗賊たちが、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う。だが、この砦に、逃げ場などどこにもない。

俺は、背中を見せた者の足を切り裂き、動きを止める。
武器を捨てて命乞いをする者の首を、容赦なく刎ね飛ばす。

俺の心は、凍てついた湖面のように静かだった。
憐憫も、慈悲も、一切ない。
エリナを傷つけたという、ただその一つの罪が、彼らの死に値した。

中庭の盗賊たちを殲-滅し終えるのに、一分とかからなかった。
血の海と化した中庭に、俺は一人、静かに佇む。返り血で、俺のミスリルの鎧は禍々しい赤黒色に染まっていた。

「……さて、と」

その時、砦の城壁の上で、巨大な爆発が起こった。

「火球よ、敵を焼き尽くせ! ファイアボール!」

シルフィリアの詠唱と共に、城壁の見張り台が炎に包まれる。見張りたちが、悲鳴を上げながら火だるまになって転がり落ちてきた。

「がっはっは! 派手にやってくれるじゃねえか、嬢ちゃん! 俺も負けてられねえな!」

別の場所では、ヴォルフが城壁をよじ登り、その剛腕で盗賊たちを紙くずのように投げ飛ばしていた。

仲間たちも、それぞれの戦いを始めたようだ。
俺は、中庭の奥にある、ひときわ大きな建物へと視線を向けた。砦の本丸。リーダーと、そしてエリナは、あの中にいるはずだ。

俺は、再び歩き出した。
建物の扉を蹴破り、中へと侵入する。
内部は薄暗い回廊になっており、そこにも数人の盗賊たちが待ち構えていた。

「よくも仲間を!」
「死ねええっ!」

彼らは、仲間を殺された怒りに燃え、決死の覚悟で俺に襲いかかってきた。
だが、その覚悟も、絶対的な力の差の前では、無意味だった。

俺は、襲い来る剣を指でつまんで止め、そのままへし折る。
そして、持ち主の心臓を、その折れた剣で貫いた。

狭い通路での戦闘は、俺の独壇場だった。
壁を蹴り、天井を走り、予測不能な角度から、次々と盗賊たちを葬っていく。

血の匂いが、建物の中に充満していく。
俺は、その血の道を、ただまっすぐに進んだ。

やがて、回廊の突き当たりにある、豪華な装飾が施された両開きの扉の前にたどり着いた。
この奥だ。リーダーがいるのは。

俺は、扉に手をかける。
その向こうから、男の怯えた声と、そして、聞き覚えのある、か細い女性の声が聞こえてきた。

「……やめて……ください……!」

エリナの声だ。
その声を聞いた瞬間、俺の頭の中で、何かがぷつりと切れる音がした。
静かな怒りの炎が、制御不能な灼熱の奔流へと変わる。

俺は、扉を、蹴破るのではなく、その両手で、引き裂いた。

バリバリバリッ!

金属と木が引き裂かれる、耳障りな音。
扉の残骸が左右に吹き飛ぶ。

そして、俺は見た。
部屋の奥、豪華な椅子に座る、狼の毛皮を被った大男。黒狼団のリーダー。
そして、その男の腕に捕らえられ、怯えた表情で涙を浮かべている、俺の幼馴染、エリナの姿を。

男は、俺の常軌を逸した登場の仕方に、腰を抜かしていた。
その手には、エリナの喉元に突きつけられた、一本の短剣が握られていた。

「ひっ……! く、来るな! 来たら、この女の喉を掻き切るぞ!」

男の震える声。
その光景を見て、俺の思考は、完全に停止した。

ただ、目の前の敵を、この世で最も残酷な方法で殺す。
その、冷たい衝動だけが、俺の全てを支配していた。

俺の体から、これまで感じたことのないほどの、濃密な殺気が溢れ出した。
部屋の空気が凍りつき、燭台の炎が、まるで怯えるかのように揺らめいた。
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