レベル1の死に戻り英雄譚 ~追放された俺の【やりなおし】スキルは、死ぬほど強くなる~

夏見ナイ

文字の大きさ
86 / 100

第86話:ブレス耐性、そして突破

しおりを挟む
次に目覚めた時、俺は奈落の城の入り口、アランと戦った場所に立っていた。全身を襲うのは痛みではない。ただ、自分が存在していたという感覚そのものが希薄になるような奇妙な喪失感だった。

「カイル!」

仲間たちが安堵の表情で駆け寄ってくる。

「……無事だったのね! よかった……!」
「大将! あのトカゲ野郎のブレス、とんでもねえ威力だったぜ!」

エリナは涙ぐみ、ヴォルフは興奮気味に叫ぶ。
シルフィリアは青ざめた顔で、しかし冷静に分析していた。

「……あれは純粋な熱エネルギーの塊よ。属性などという生易しいものじゃない。物理法則そのものを捻じ曲げるような神の領域の力……。あなたの属性耐性も意味をなさないかもしれないわ」

彼女の言う通りだった。エンシェントキマイラのブレスとは次元が違う。あれを克服するには、これまで以上の覚悟が必要になるだろう。

俺は仲間たちへと向き直った。

「……ここからは俺一人の戦いだ。お前たちは絶対に前に出るな」
「何を言ってるの!」「無茶だ、大将!」

シルフィリアとヴォルフが同時に反論する。

「一人でどうにかできる相手じゃないわ!」
「仲間だろ! 俺たちにも戦わせろ!」
「……そうだよ、カイル君! 私たちの力を信じて!」

エリナも強い眼差しで俺に訴えかける。
彼らの気持ちは痛いほど分かった。だが、バハムートのブレスの前では彼らは一瞬で塵と化す。死に戻りができる俺でなければ、あの攻撃のデータを得ることすらできない。

「信じている。信じているからこそ、頼むんだ」

俺は三人の顔を一人一人順番に見つめた。

「俺が必ず道を作る。お前たちはその時が来るまで、ただ待っていてくれ。それがお前たちの最も重要な役割だ」

俺の真剣な眼差しに三人は言葉を失った。そして、やがてそれぞれの覚悟を決めたように、静かに、しかし力強く頷いた。

俺は仲間たちの信頼を背中に感じながら、再び一人でバハムートが待つ広間へと足を踏み出した。

二度目の対峙。
バハムートは玉座の上から、再び現れた俺を少しだけ興味深そうに見下ろしていた。

「ほう。我がブレスを受けて、なお蘇るか。面白い余興だ」

俺は何も答えなかった。
ただ、インフィニティを構え、その切っ先を竜の王へと向ける。

再び純白のブレスが放たれる。
俺はそれを避けることなく、その身に受けた。

二度目の『消滅』。
復活。幻の喪失感が精神を削る。

三度目。四度目。十度目。
俺はただひたすらに蒸発し続けた。
それは痛みさえ感じない、あまりにも無機質で残酷な死の繰り返しだった。
仲間たちは広間の入り口で、俺が何度も消滅しそして蘇る姿を、ただ黙って見守っていた。彼らがどれほどの思いでその光景に耐えているのか。俺には痛いほど分かった。

だからこそ、俺は心を折るわけにはいかなかった。

死の回数が三十回を超えた頃。
俺の中に変化が訪れた。

ブレスを受けても即座に消滅しなくなったのだ。
ほんのコンマ数秒。俺の体が、あの絶対的な熱エネルギーに耐え始めている。

その一瞬の時間で、俺はブレスの性質を、そのエネルギー構造を魂に刻み込んでいく。

四十回目。
五十回目。

俺はブレスの中で一歩、前に進めるようになった。
全身が灼熱に包まれ、皮膚が気化していく。だが、俺の心は不思議なほどに静かだった。

そして、死の回数がこの城だけで百回に達しようとしていた、その時。

俺は純白のブレスが吹き荒れる、その奔流の中を歩いていた。

「な……に……!?」

バハムートが初めて驚愕の声を上げた。
俺の体はブレスに焼かれることなく、その表面をまるで陽炎のような薄い光の膜が覆っていた。それは俺の体がこの超高温の熱エネルギーに完全に適応し、それを無効化する『絶対熱量耐性』とも言うべき新たな力を獲得した証だった。

俺のミスリルレザーアーマーはとっくに蒸発して消え失せている。インフィニティの剣さえも、その刀身の半分が溶け落ちていた。
だが、俺は止まらない。

燃え盛る炎の中を歩く神話の死神のように。
俺はゆっくりと、しかし確かな足取りでバハムートの目の前までたどり着いた。

「……信じられん。人間が我がブレスを……無効化しただと……?」

竜の王は自らの常識を超えた現象を前に、明らかに動揺していた。

「お前の最大の武器は、もう俺には通用しない」

俺は灼熱の空気の中で静かに告げた。
そして半分溶けたインフィエィニティを振りかぶる。

バハムートは本能的な恐怖に駆られ、その巨大な爪を振り下ろしてきた。
だが、ブレスに耐えるために極限まで高められた俺の耐久力と百回の死で蓄積されたステータスの前では、その物理攻撃さえも脅威ではなかった。

俺は爪を紙一重でかわし、その巨大な前脚を駆け上がった。
そして竜の弱点。
逆さに生えた首元の一枚の鱗。

そこに俺は、溶け落ちたインフィニティを渾身の力で突き立てた。

「おおおおおおおおおおおおっ!」

グシャリ、という生々しい感触。
剣は硬い鱗を貫き、その下の肉を、そして心臓へと続く動脈を深々と断ち切った。

「ギ……シャアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

バハムートはこれまで聞いたこともない、天地を揺るがすほどの断末魔の絶叫を上げた。
その巨大な体から、まるで滝のようにマグマのような血液が噴き出す。

俺はその返り血を浴びながら、竜の体から飛び降りた。
竜将軍バハムートの巨体は数秒間、苦しそうに痙攣していたが、やがてその瞳から光が失われ、地響きを立てて力なく崩れ落ちた。

四天王最強、竜将軍バハムート。
その完全なる沈黙。

広間には溶岩が流れる音だけが虚しく響いていた。
俺は荒い息をつきながら、仲間たちが待つ入り口の方へと振り返った。

三人はただ呆然と、その光景を見つめていた。
そしてやがて我に返ったように、俺の元へと駆け寄ってきた。

「カイル!」

エリナが泣きながら俺の胸に飛び込んでくる。
シルフィリアとヴォルフもまた、言葉にならないといった表情で俺の肩を強く叩いた。

俺たちはまたしても不可能を可能にした。
俺の百回の死と。
仲間たちの揺るぎない信頼が。

四天王最強の竜を打ち破ったのだ。
だが、感傷に浸っている暇はなかった。

バハムートの亡骸が突如黒い炎に包まれ、塵となって消えていく。
そしてその体が消え去った後、広間の奥に新たな道が、まるで俺たちを誘うかのようにその姿を現した。

魔王城、第二階層。
俺たちの戦いはまだ終わらない。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

『ゴミ掃除』が役立たずと追放されたが、実は『存在抹消』級のチートだった。勇者一行がゴミで溺れているが、俺は辺境で美少女と温泉宿を経営中なので

eringi
ファンタジー
「悪いが、お前のスキル『ゴミ掃除』は魔王討伐の役には立たない。クビだ」 勇者パーティの雑用係だったアレクは、戦闘の役に立たないという理由で、ダンジョンの最深部手前で追放されてしまう。 しかし、勇者たちは気づいていなかった。 彼らの装備が常に新品同様だったのも、野営地が快適だったのも、襲い来る高レベルモンスターの死体が跡形もなく消えていたのも、すべてアレクが『掃除』していたからだということに。 アレクのスキルは単なる掃除ではない。対象を空間ごと削り取る『存在抹消』レベルの規格外チートだったのだ。 一人になったアレクは、気ままに生こうと辺境の廃村にたどり着く。 そこでボロボロになっていた伝説のフェンリル(美少女化)を『洗浄』して懐かれたり、呪われたエルフの姫君を『シミ抜き』して救ったりしているうちに、いつの間にかそこは世界最高峰の温泉宿になっていて……? 一方、アレクを失った勇者パーティは、武器は錆びつき、悪臭にまみれ、雑魚モンスターの処理すら追いつかず破滅の一途をたどっていた。 「今さら戻ってきてくれと言われても、俺はお客さん(美少女)の背中を流すのに忙しいんで」 これは、掃除屋の少年が無自覚に最強の座に君臨し、幸せなスローライフを送る物語。

『王都の神童』と呼ばれた俺、職業選定でまさかの【遊び人】三連発で追放される。……が、実は「全職業のスキル」を合算して重ねがけできる唯一のバグ

よっしぃ
ファンタジー
王都で「神童」の名をほしいままにしていた少年、ディラン・アークライト(17歳)。   剣を握れば騎士団長を唸らせ、魔法を学べば賢者を凌駕する。誰もが彼を「次代の勇者」と信じて疑わなかった。  しかし、運命の職業選定で彼が得たのは――【遊び人】。   それも、三つの職業スロットすべてが【遊び人】で埋まるという、前代未聞の怪現象だった。 「期待外れだ」 「国の恥晒しめ」   掌を返した周囲によって、ディランは着の身着のままで街を追放される。  だが、かつて神童と呼ばれた彼の「分析力」は死んでいなかった。 『……Lv1なのに、ステータスが異常に高い? それに経験値が分散せず、すべて加算されている……?』  彼だけが気づいた真実。  それは【遊び人】という名に偽装された、この世界の管理者権限(Free-Hander)であり、全職業のスキルを制限なく使用・強化できるバグ技(デバッグモード)への入り口だったのだ。  これは、理不尽に捨てられた元・神童が、その頭脳とバグ能力で世界を「攻略」し、同じく不遇な扱いを受けていた美少女騎士(中身は脳筋)と共に、誰よりも自由に成り上がる物語。 【著者プロフィール】アルファポリスより『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』を出版、オリコンライトノベル部門18位を記録。本作は2月に2巻刊行予定。

「雑草係」と追放された俺、スキル『草むしり』でドラゴンも魔王も引っこ抜く~極めた園芸スキルは、世界樹すら苗木扱いする神の力でした~

eringi
ファンタジー
「たかが雑草を抜くだけのスキルなんて、勇者パーティには不要だ!」 王立アカデミーを首席で卒業したものの、発現したスキルが『草むしり』だった少年・ノエル。 彼は幼馴染の勇者に見下され、パーティから追放されてしまう。 失意のノエルは、人里離れた「魔の森」で静かに暮らすことを決意する。 しかし彼は知らなかった。彼のスキル『草むしり』は、対象を「不要な雑草」と認識すれば、たとえドラゴンであろうと古代兵器であろうと、根こそぎ引っこ抜いて消滅させる即死チートだったのだ。 「あれ? この森の雑草、ずいぶん頑丈だな(ドラゴンを引っこ抜きながら)」 ノエルが庭の手入れをするだけで、Sランク魔物が次々と「除草」され、やがて森は伝説の聖域へと生まれ変わっていく。 その実力に惹かれ、森の精霊(美女)や、亡国の女騎士、魔王の娘までもが彼の「庭」に集まり、いつしかハーレム状態に。 一方、ノエルを追放した勇者たちは、ダンジョンの茨や毒草の処理ができずに進行不能となり、さらにはノエルが密かに「除草」していた強力な魔物たちに囲まれ、絶望の淵に立たされていた。 「ノエル! 戻ってきてくれ!」 「いや、いま家庭菜園が忙しいんで」 これは、ただ庭いじりをしているだけの少年が、無自覚に世界最強に至る物語。

才能に打ち砕かれた日から、僕の最強は始まった

雷覇
ファンタジー
ワノクニ、蒼神流・蒼月道場。 天城蒼真は幼き頃から剣を学び、努力を重ねてきた。 だがある日、異世界から来た「勇者」瀬名隼人との出会いが、すべてを変える。 鍛錬も経験もない隼人は、生まれながらの天才。 一目見ただけで蒼真と幼馴染の朱音の剣筋を見切り、打ち破った。 朱音は琴音の命で、隼人の旅に同行することを決意する。 悔しさを抱えた蒼真は、道場を後にする。 目指すは“修羅の山”――魔族が封印され、誰も生きて戻らぬ死地へと旅立つ。

処理中です...