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第98話:戦後処理と新体制
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初代皇帝アッシュ一世として即位した俺の最初の仕事。
それは過去との完全なる決着をつけることだった。
戴冠式の数日後、ミネルヴァの中央議事堂においてアヴァロン基本法に基づいた最初の『特別法廷』が開かれた。
裁かれるべき罪人は二人。
旧アルビオン王国の最後の王太子、アルフレッド・フォン・アルビオン。
そして偽りの聖女、リリアーナ。
アルフレッドはこの一年、ミネルヴァの地下牢に幽閉されていた。
彼はもはやかつての傲慢な王子の面影はなく、やつれ果て、その瞳には光もなく、ただ虚ろに床の一点を見つめているだけだった。
一方リリアーナは、大聖堂での失墜の後、エルフの医療部隊によってその身柄を保護されていた。彼女の力の源泉であった呪われたアーティファクト『吸魂の宝珠』は、エリスの手によって厳重に封印されている。力を失った彼女は、ただの怯えた痩せた少女に過ぎなかった。
法廷は厳粛な雰囲気の中で進められた。
裁判長は元王国の最高裁判事であり、バルカスと共にアヴァロンに亡命してきた高潔な老人オルダスが務めた。
検察官役はバルカス自らが買って出た。
彼はかつての主君であったアルフレッドの罪状を、淡々と、しかし容赦なく読み上げていった。
国家財産の私的流用。
無実の者への罪の捏造。
そして国家元首に対する暗殺依頼。
その一つ一つがアヴァロン基本法に照らし合わせれば、死刑に値する大罪だった。
そして何よりも彼の最大の罪。
それは為政者として国と民を見捨て、その責務を放棄したことだった。
アルフレッドはその全ての罪状をただ黙って聞いていた。もはや彼に反論する気力さえ残されていなかった。
次にリリアーナの罪が問われた。
民を欺き、偽りの奇跡で人心を惑わせた罪。
そしてその偽りの神託によって、国を破滅的な戦争へと導いた罪。
彼女はただ泣きじゃくるばかりで、まともな弁明もできなかった。
そのあまりにも哀れな姿に、傍聴席にいた民衆の中から微かな同情の声さえ漏れた。
全ての審理が終わった。
裁判長のオルダスが、判決を言い渡すために立ち上がった。
議場は水を打ったように静まり返る。
誰もが固唾を飲んでその言葉を待っていた。
常識的に考えれば、彼らに下されるべきは極刑、すなわち死刑だった。
だがオルダスが読み上げた判決は、その予想を裏切るものだった。
「――被告アルフレッド・フォン・アルビオン、及びリリアーナ。両名を死刑に処すことはしない」
その一言に議場はどよめいた。
オルダスはそのざわめきを静かに手で制すと続けた。
「……なぜなら、彼らに死という安易な逃げ道を与えることは、彼らが犯した罪の重さに見合わないからだ」
その瞳は氷のように冷たかった。
「彼らに与えられるべきは罰ではない。『贖罪』の機会だ」
「よって判決を言い渡す。両名を終身刑とし、その生涯をかつて自分たちが見捨てたこの国の復興のための強制労働に服させることとする」
それは死よりも重い罰だった。
彼らはこれからその人生の最後の一日まで、かつて自分たちが見下していた民と同じ泥にまみれ、汗を流し、この荒廃した大地を自らの手で再生させていかなければならない。
そしてその労働の中で、自分たちが犯した罪の本当の重さをその骨の髄まで思い知るのだ。
そのあまりにも厳粛で、そして公正な判決に、もはや誰一人異を唱える者はいなかった。
それはアヴァロンという国家が復讐ではなく、法と理性によって動く真の法治国家であることを内外に示す最初の一歩となった。
戦後処理はそれだけでは終わらなかった。
俺は皇帝として最初の勅令を発した。
それは『新政府』の発足宣言だった。
宰相にはバルカス・エンフィールドを任命。
軍務大臣にはガロウを。
科学技術大臣にはガンツを。
そして文部及び厚生大臣にはエリスを。
そして俺の最も信頼する側近として、シルヴィア・グレイロードを初代『帝国騎士団長』兼『皇帝首席秘書官』に任命した。
各種族の最も優れた人材がその能力に応じて要職に就く。
生まれも種族も関係ない。
完全な能力主義に基づいた新しい統治体制が、ここに確立されたのだ。
新政府の最初の仕事は山積みだった。
新しい税制の確立。
帝国と化したギガンテスとの国境問題。
そしてまだ大陸の各地に残る魔物の残党の掃討。
だが俺たちの顔に悲壮感はなかった。
そこにあったのは、新しい国を自分たちの手で創り上げていくという無限の希望と、そして確かな自信だけだった。
アルフレッドとリリアーナは、その日のうちに北の最も復興が遅れている地域へと送られていった。
彼らの新しい人生が始まる場所だ。
俺はその護送の行列を見送ることはしなかった。
俺の興味はもはや過去にはない。
俺が見据えるのはただ未来だけ。
この魔導皇国アヴァロンがこれから紡いでいく壮大な歴史のその一ページ一ページを、どう描いていくか。
その途方もない、しかし心躍る挑戦に、俺の全ての思考は注がれていた。
旧時代の残滓は消えた。
そして新しい時代の歯車が今、本格的にその重々しい音を立てて回り始めたのだ。
それは過去との完全なる決着をつけることだった。
戴冠式の数日後、ミネルヴァの中央議事堂においてアヴァロン基本法に基づいた最初の『特別法廷』が開かれた。
裁かれるべき罪人は二人。
旧アルビオン王国の最後の王太子、アルフレッド・フォン・アルビオン。
そして偽りの聖女、リリアーナ。
アルフレッドはこの一年、ミネルヴァの地下牢に幽閉されていた。
彼はもはやかつての傲慢な王子の面影はなく、やつれ果て、その瞳には光もなく、ただ虚ろに床の一点を見つめているだけだった。
一方リリアーナは、大聖堂での失墜の後、エルフの医療部隊によってその身柄を保護されていた。彼女の力の源泉であった呪われたアーティファクト『吸魂の宝珠』は、エリスの手によって厳重に封印されている。力を失った彼女は、ただの怯えた痩せた少女に過ぎなかった。
法廷は厳粛な雰囲気の中で進められた。
裁判長は元王国の最高裁判事であり、バルカスと共にアヴァロンに亡命してきた高潔な老人オルダスが務めた。
検察官役はバルカス自らが買って出た。
彼はかつての主君であったアルフレッドの罪状を、淡々と、しかし容赦なく読み上げていった。
国家財産の私的流用。
無実の者への罪の捏造。
そして国家元首に対する暗殺依頼。
その一つ一つがアヴァロン基本法に照らし合わせれば、死刑に値する大罪だった。
そして何よりも彼の最大の罪。
それは為政者として国と民を見捨て、その責務を放棄したことだった。
アルフレッドはその全ての罪状をただ黙って聞いていた。もはや彼に反論する気力さえ残されていなかった。
次にリリアーナの罪が問われた。
民を欺き、偽りの奇跡で人心を惑わせた罪。
そしてその偽りの神託によって、国を破滅的な戦争へと導いた罪。
彼女はただ泣きじゃくるばかりで、まともな弁明もできなかった。
そのあまりにも哀れな姿に、傍聴席にいた民衆の中から微かな同情の声さえ漏れた。
全ての審理が終わった。
裁判長のオルダスが、判決を言い渡すために立ち上がった。
議場は水を打ったように静まり返る。
誰もが固唾を飲んでその言葉を待っていた。
常識的に考えれば、彼らに下されるべきは極刑、すなわち死刑だった。
だがオルダスが読み上げた判決は、その予想を裏切るものだった。
「――被告アルフレッド・フォン・アルビオン、及びリリアーナ。両名を死刑に処すことはしない」
その一言に議場はどよめいた。
オルダスはそのざわめきを静かに手で制すと続けた。
「……なぜなら、彼らに死という安易な逃げ道を与えることは、彼らが犯した罪の重さに見合わないからだ」
その瞳は氷のように冷たかった。
「彼らに与えられるべきは罰ではない。『贖罪』の機会だ」
「よって判決を言い渡す。両名を終身刑とし、その生涯をかつて自分たちが見捨てたこの国の復興のための強制労働に服させることとする」
それは死よりも重い罰だった。
彼らはこれからその人生の最後の一日まで、かつて自分たちが見下していた民と同じ泥にまみれ、汗を流し、この荒廃した大地を自らの手で再生させていかなければならない。
そしてその労働の中で、自分たちが犯した罪の本当の重さをその骨の髄まで思い知るのだ。
そのあまりにも厳粛で、そして公正な判決に、もはや誰一人異を唱える者はいなかった。
それはアヴァロンという国家が復讐ではなく、法と理性によって動く真の法治国家であることを内外に示す最初の一歩となった。
戦後処理はそれだけでは終わらなかった。
俺は皇帝として最初の勅令を発した。
それは『新政府』の発足宣言だった。
宰相にはバルカス・エンフィールドを任命。
軍務大臣にはガロウを。
科学技術大臣にはガンツを。
そして文部及び厚生大臣にはエリスを。
そして俺の最も信頼する側近として、シルヴィア・グレイロードを初代『帝国騎士団長』兼『皇帝首席秘書官』に任命した。
各種族の最も優れた人材がその能力に応じて要職に就く。
生まれも種族も関係ない。
完全な能力主義に基づいた新しい統治体制が、ここに確立されたのだ。
新政府の最初の仕事は山積みだった。
新しい税制の確立。
帝国と化したギガンテスとの国境問題。
そしてまだ大陸の各地に残る魔物の残党の掃討。
だが俺たちの顔に悲壮感はなかった。
そこにあったのは、新しい国を自分たちの手で創り上げていくという無限の希望と、そして確かな自信だけだった。
アルフレッドとリリアーナは、その日のうちに北の最も復興が遅れている地域へと送られていった。
彼らの新しい人生が始まる場所だ。
俺はその護送の行列を見送ることはしなかった。
俺の興味はもはや過去にはない。
俺が見据えるのはただ未来だけ。
この魔導皇国アヴァロンがこれから紡いでいく壮大な歴史のその一ページ一ページを、どう描いていくか。
その途方もない、しかし心躍る挑戦に、俺の全ての思考は注がれていた。
旧時代の残滓は消えた。
そして新しい時代の歯車が今、本格的にその重々しい音を立てて回り始めたのだ。
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