《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ

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第32話 騎士団との対峙

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ライナー率いる調査騎士団を村に招き入れたカイは、彼らを案内して村の施設を見て回ることにした。ライナーも、部下の大半を城壁の外で待機させ、自身と副団長を含む数名のみでカイに同行した。それは、彼らが武力ではなく、対話によってこの村を理解しようとしていることの証だった。

騎士団一行が、まず案内されたのは、村の心臓部とも言える広大な畑だった。
一年中、色とりどりの作物が豊かに実るその光景に、ライナーたちは絶句した。
「……信じられん。ここは、不毛の地と聞いていた『忘れられた辺境』のはず。それが、どうしてこれほどまでに……」
副団長が、呆然と呟く。
「カイ殿の力だよ。この土地そのものを、生き返らせたんだ」
案内役を買って出たボルグが、誇らしげに胸を張る。

次に一行が訪れたのは、ボルグの鍛冶工房だった。
中に入った瞬間、ライナーたちは再び驚愕に目を見開いた。工房の内部は、王都の王立工房をも遥かに凌駕する、最新鋭の設備で満ち溢れていた。地底の熱を利用した巨大な炉、水力で動く自動槌、そして、そこで働くドワーフたちの、熱気と熟練の技術。

「ここで作られているのは、農具が主だ。だが、その品質は、そこらの聖剣にも匹敵するぞ」
ボルグが壁に掛かっていた一振りのクワを手に取り、近くにあった鉄の塊を一刀両断してみせる。その恐るべき切れ味に、騎士たちは息を飲んだ。彼らが腰に下げている長剣よりも、遥かに頑丈で、鋭いことは一目瞭然だった。

そして、一行は、白亜の殿堂「アステル総合医療院」へと足を踏み入れた。
その内部の清潔さ、機能的な構造、そして魔法と科学が融合した見たこともない医療設備に、ライナーはもはや驚きを通り越して、畏敬の念すら抱き始めていた。
待合室では、人間、エルフ、ドワーフ、獣人といった、様々な種族が、何の隔てもなく談笑しながら診察を待っている。その光景は、ライナーが理想としながらも、決して実現できなかった社会の姿そのものだった。

「ライナー団長……。ここは、一体……」
副団長が、感動に声を震わせる。
「噂は、真実だったようだ。いや、噂以上だ。ここは……奇跡の村だ」
ライナーもまた、その事実を認めざるを得なかった。
ここは、王国の脅威などではない。むしろ、王国が失いかけている、理想の姿がここにはある。

一通りの視察を終え、一行はカイの住む洞窟、その応接室として使われている部屋へと通された。テーブルには、リリが運んできたお茶と、焼き菓子が並べられている。

「さて、ライナー団長」
カイが、静かに口火を切った。
「俺たちの村を、その目で見てどう思われたかな」
ライナーは、姿勢を正すと、カイに向かって真っ直ぐに答えた。
「率直に申し上げて、驚嘆した。そして、深く感銘を受けた。あなた方が、この辺境で成し遂げていることは、偉業と呼ぶにふさわしい」
その言葉に、お世辞や外交辞令は一切感じられなかった。騎士としての、彼の実直な感想だった。

「だが、だからこそ、我々はあなた方を無視できない」
ライナーは、続けた。
「あなた方がどれだけ高潔な理想を掲げていようとも、王国の法から外れた、治外法権の巨大なコミュニティがここにあるという事実は、看過できん。我々には、王国全体の秩序を守る義務がある」
「……つまり、我々に村を明け渡し、王国の支配下に入れと?」
カイの問いに、ライナーは静かに首を振った。

「いや、そうではない。正直に言えば、私にも、あなた方にどう対処すべきか、答えが出せずにいる。力で支配するには、あなた方の村はあまりに尊く、そして強大すぎる。だが、このまま放置することも、私の立場上、許されない」
ライナーは、苦悩の表情を浮かべた。彼は、法と秩序の番人である騎士としての立場と、一人の人間としてこの村に感じる共感との間で、板挟みになっていた。

その実直な苦悩を見て、カイは、この男なら信頼できるかもしれない、と感じ始めていた。
カイは、エルウィンに目配せをした。エルウィンは頷くと、これまで情報室で集めてきた、いくつかの資料をテーブルの上に広げた。
それは、失脚した代官ブランデルが、いかに私腹を肥やし、民を虐げてきたかを示す、動かぬ証拠の数々だった。

「これは……!?」
資料に目を通したライナーは、顔色を変えた。
「ブランデルの悪行は、我々も把握していた。だが、これほどまでとは……。そして、あなた方は、この事実を知った上で、彼を排除したと?」
エルウィンが、静かに答える。
「我々は、ただ自衛したに過ぎません。彼の強欲が、我々の平穏を脅かした。だから、取り除いただけのことです」

「……」
ライナーは、深く沈黙した。
彼らが、ただの無法者集団ではないことは、もはや明らかだった。彼らには、彼らなりの正義と、自分たちの楽園を守るという、確固たる意志がある。

やがて、ライナーは顔を上げ、一つの決断を下した。
「……カイ殿。私は、国王陛下にありのままを報告する。この村が王国の脅威ではなく、むしろ、共存の道を探るべき、新たな隣人であることを」
「ほう?」
「もちろん、それですぐに問題が解決するわけではないだろう。王都には、あなた方を快く思わない者たちも大勢いる。特に、勇者アレス殿は……」
ライナーは、そこで言葉を濁した。

「だが、私は、私の信じる正義を貫きたい。この村を、理不尽な力で蹂躙させるような真似は、断じてさせん」
ライナーは立ち上がると、カイに向かって、騎士としての敬意を込めて、深く頭を下げた。
「本日は、貴重なものを見せていただいた。感謝する」

その実直な姿に、カイもまた、彼に対する敬意を覚えた。
「こちらこそ。あんたのような騎士が、王国にいると知れて、少しだけ安心したよ」

王国騎士団は、その日のうちにアステル村を後にした。彼らは、村から何一つ奪うことなく、ただ静かに去っていった。
だが、彼らが持ち帰った情報は、王都に大きな波紋を広げることになる。

ライナーとの対話は、カイに新たな気づきをもたらしていた。
これまで、王国という存在を、自分を追放した、ただの敵だと見なしていた。だが、そこにも、ライナーのような、正義を信じ、対話を重んじる人間がいる。
世界は、白か黒かで割り切れるほど、単純ではないのだ。

この出会いは、カイの心に、小さな変化の種を蒔いた。
それは、ただ閉じこもって守るだけでなく、外の世界と積極的に関わり、自分たちの存在を認めさせていくという、新たな道への、小さな一歩だった。
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